第23話 抗議する私
一月後。金を求めてオディル母さんがやってきた。
私は応接間にエリーヌお母様と座る。
ヴァンサンも側に居たし大丈夫!
「おや今日は静かだねぇ?オレリーや。私と娼館に行く気になったかい?」
とニヤニヤしながらオディル母さんが言う。
「そのことですが…貴方一度私を捨てましたよね?ああ…売ったともいいますか?その時に私はラヴァル侯爵家の正式な養女となる契約書をレイトンお父様と交わしたのですよね?
つまり…貴方にとって私はもう要らないから他人に売ったということです。それを今度は返せというのはおかしくないですか?」
するとオディル母さんは汗をかき
「は、はぁ?そんなの…実の母親がいるんだよ?私はオレリーの本当の母親なんだよ!?この容姿が証明の全てさ!」
「だから何ですか?契約が破棄出来るとでも?私はここにいる以上は侯爵家令嬢です!馴れ馴れしいのはそちらです!今更やって来て母親面?
……私のお母様はここにいるエリーヌお母様ですわ!平民!口を謹みなさい!!」
「親に向かってなんだい!その口は!!あんたは間違いなく私の子なんだからね!」
「ふん!言っておきますけど私は貴方を母親とは認めないわ!捨てておいて都合が良いのよ!目的はお金でしょ?悪いけど貴方にはあげないわよ!?いい鴨だと思っているんでしょうけど…契約書がある限り私はこの家の侯爵家の長女!さっさと帰って!」
と言うとオディル母さんは泣き出した。
「ううっ!酷い子だよ!私を憎んでるのかい!?あの時は仕方なかったって言ってるじゃないか!」
「仕方なく子供を売った?愛する我が子なら貧しくとも側に置くはずです!何故今更お母様からお金を取るの?」
「それはあんたが平民の子だってことを黙っててやる駄賃だよ」
と太々しく言う。
「ならいいですよ?平民の子だと言いふらしたって!真実ですもの!その代わり二度と侯爵家の敷居は跨がせない!いいですね!?」
とオディル母さんにはっきり言う。
「うぐ!なんなんだい!!その態度は!誰が痛い思いしてお前を産んでやったと思ってんだ!こんなことならお前なんか産むんじゃなかったよ!このブスが!!役立たずめ!」
するとエリーヌお母様が立ち上がりパンとオディルさんの頰を叩く。
「うちの娘への無礼な物言い!許しません!」
「ふん!負け惜しみかい?たった一夜でレイトンさんと子供ができた私への!ブスに寝取られていい様だよ!…金が貰えないんならもうこんな家に用はないね!」
やっぱり金が目的で私は生かされてただけか。
「はっ、あんな冴えない男の相手してやっただけでも有り難く思うんだね!最初は子供なんか出来て迷惑だったよ!悪阻は酷いし何度も下ろそうとしたけど侯爵様の子だから無理して産んだ私に感謝しな!」
と今度は威張ってきた。なんつーメンタルだ!
本性表してきたわ。このクソババア!こんなのが実の母親なんてこっちからごめんだ!
しかしヴァンサンは
「オレリーの母さん…。オレリーを産んでくれてありがとう。あんたが産まなかったら俺とオレリーは出逢って無かった。そこは礼を言う。
でも親としては最低のことをした自覚ないの?子供を捨てたり売ったりした挙句金に困ったら侯爵家にたかりに来るなんて情けなくて惨めだね。それに素直でもねえ。
オレリーに会いたいなら普通に頭下げて来いよ」
とヴァンサンが言いオディルさんはジッとして下を向いた。
「……顔のいい男だね…。あんたオレリーなんかのどこがいいのさ?うちの娘にしちゃよくやった方だけど…いくら顔がよくても平民じゃあねぇ…」
とあくまでも金持ちと結婚しないと不幸になるとか散々馬鹿にしてオディル母さんはようやく席を立った。
「じゃあ、失礼しますよ。侯爵家の皆さん!お幸せに!」
と最後は半目になりオディルさんは帰って行く。
エリーヌお母様は
「ごめんね、オレリーちゃん。私がしっかりしていれば…」
「お母様気にしないでよ。私にとっての母親はお母様だけだよ。それより早く決着つけなよ?最近あのクソ野郎に冷たくする作戦してるんでしょ?」
「まぁ!知ってたのね?リュシーから聞いた?うふふ?少しくらい痛い目に会えば反省するかと思って!結構楽しいわよ!!」
とお母様はようやく笑ったので私も安心した。
「そうね、決着が着くまでオレリーちゃんは離れでヴァンサンさんと暮らしてていいわよ?うふふ。ヴァンサンさん、オレリーちゃんのことよろしくね!私は二人が結婚するに賛成よ?もう身分なんて気にしなくてもいいわ。オレリーちゃん…あのクソ野郎に何か脅されていたんでしょ?」
とお母様に言われた。気付いていたのか。
私はこれまでの事を話すとエリーヌお母様は激昂した。
「あんのクソ野郎!!ほんとどういうことなのよ!オレリーちゃん達を牢に入れようとしてたなんて!!許せないわ!!逃げた奴隷上がりも恩知らずにも程があるわ!…オレリーちゃん!世の中には本当にクズ達が多いの。そこだけは間違えないでね?ヴァンサンさんも天然だけどそこはちゃんとわかってると思うわ」
「はい…気をつけます」
オディルさんと言い、パンと言い、クソ野郎と言いろくなやつがいなかったけどいつでもヴァンサンは正しいことを言っていた。不用意な優しさで損をしてしまった。
私は離れの鍵をもらうとヴァンサンと一緒にしばらくそこにいることにした。お母様達はクソ野郎をどうするか真剣に考えると言っていた。パンの件を知ったお母様も何かしらクソ野郎を懲らしめると言っていた。
大丈夫だろうか??
数ヶ月後に経営の上手くいってなかったオディル母さんの娼館は潰れたとジャネットの調査でわかった。オディル母さんは金を持ち逃げしどこへ行ったかは不明らしかった。
今思えば最期に娘の顔を見にきただけだったのかも。ヴァンサンの言う通り…。
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