第20話 本当の母親と私

 熱が引いた私は回復し夜会ももうすぐという所で……またも胃が痛くなる案件がやってきた!


 朝早くから珍しくお母様が声を張り上げているのが聞こえた。何だ何だと使用人達も集まっている。


「何だろうね?」

 とヴァンサンもちょっと待っててと他の人に聞きに行った。そして戻ってきて複雑な顔をしていた。


「どうしたの?」


「うん、何か絶対にオレリーを下に来させるなと奥様の従者の執事長から伝言言われた。とにかく絶対に下に来るな、何ならお嬢さんの部屋に鍵かけてろって」

 と素直に言うヴァンサン。

 これはもはやただ事ではない。


「よし。行くわよヴァンサン。また揉め事なんてごめんよ!もう直ぐ夜会なのに変な噂が立つわ」

 と私は下に降りて後悔することになる。


「お金も仕事先も紹介しますから早く出て行って下さいっ!!」

 とお母様が叫んでいた。

 そこにいたのは…私を少しオバハンにした女の人だ。

 もう言わなくともわかった!

 この人…私の本当のお母さんだ!!

 ヴァンサンも流石にわかったみたいで


「あっ…あのひ…」

 と言おうとしたのに口を塞ぐ。


 すると母親らしき人がこちらに気づいた。


「おや!!もしや…オレリーかい?大きくなったね!私にそっくりじゃないの!」

 と言う。

 エリーヌお母様は青ざめて


「何で下に来たの!オレリーちゃん!!この人と会わせたく無かったのに!!」


「まぁまぁ、奥様いいじゃないのよ、少しくらい。本当の娘に会えたんだから」

 と笑う。


「あの子を捨てたくせによくもそんな口が聞けるものね!!オディルさん!!」

 おお、うちの母親はオディルと言うのか。


「あの時は金が無くてね。仕方無しにだよ。でもうちの娼館も儲かってきたし私も女主人に上り詰めたしそろそろ実の娘を引き取っても良いだろうと思ってわざわざ来てやったんだよ」

 ととんでもないことを言い出した!

 はぁ!!?私を娼館で働かせるつもりかこの女!!


「ひ、酷い!レイトンが生きていたら怒っていたわ!!帰って!あの子はもううちの子です!可愛い私の娘の1人!」

 うっ!お母様!!あんた…あのクソ野郎に入れ込んではいるけど本当に私のことは可愛がってくれたもんなぁ…。そこだけは評価するよ。


「何の騒ぎですの?え!?老けたお姉様がいる!!」

 あんた…失礼よジャネット!!そしてクソ野郎も一緒に起きてきたのか


「ふあっ!本当だ!老けたオレリー様がいる!!どうしよう!!?」

 と混乱している。2人ともぶん殴っていいかな?


「ほらあんたにはとても綺麗な本当のお嬢さんが側にいるんだからこんなブスの娘はいらんだろ?私にさっさと引き渡しな!」

 とオディル母さんが言うがエリーヌお母様は断固として首を振る。


「ダメです!!オレリーちゃんは渡しません!」


「ふん、ならいいんだね?この子が本当の娘でなく私の娘だってことを他の貴族達に言いふらしても!」

 とオディル母さんがニヤニヤして言う。


「うぐっ!!」

 とエリーヌお母様は悔しそうに言う。


「今まで必死に隠してきたんだろう??ふふふ」


「お願い!今日のところは帰って!!カスパー!!」

 とお母様が執事長を呼びつけオディル母さんにお金を渡した。


「ひひっ、毎度ー!!また来るよ!オレリーもまたね!!」

 とオディル母さんは去って行く。


「お母様…」


「オレリーちゃん…」

 お母様は泣いていた。私は手を広げ抱きとめる姿勢をしたらお母様が泣きながら走ってきて


「うわーん!!」

 と言いつつ横のヴァンサンに抱きついた!


「おいっ!!こらっ!こっちでしょうが!!どさくさに紛れて何してんのよ!!」

 と怒るとお母様は


「あら失礼、若い男の人に抱きつきたくなって…」

 とか言っとる!!

 お前したたかやなぁ!!

 ヴァンサンは怯えて直ぐにお母様から離れて私の後ろに回った。


 *

 そんなこんなでようやくまともな話し合いが行われた。

 談話室に皆で集まった。クソ野郎はジャネットとリュシーに挟まれていた。

 お母様は泣きながら話した。


「オディル・エモンさんて言うのよ。公爵領の街にある大きな娼館で働いていたけどレイトンを昔相手して…レイトンは仕事であの街に宰相様と訪れていて宰相が大層な女好きで娼館に付き添えって命令され仕方なく入って仕方なくオディルさん…一番のブスを呼んだの」

 なんか…それもどうなんか?レイトンお父様…仕方なくオディル母さんの相手してたの?そんで私が出来たと!?まぁエリーヌお母様ほど綺麗な奥さんがいるんだから仕方なくもなるよね。私が男に産まれててもそうだ。


 仕事で上司に付き添いどうしても娼館に行かなくてはならなくなったとか。

 何となく経緯知るとやだなぁ。よく可愛がってくれたよ…。


「あの人…今は娼館の女主人になったけど…きっとまだ経営が上手いこといってないんだわ。だからオレリーちゃんを引き取るとか口実を言って私からお金をせびりに来たのよ!!その証拠にお金あげたら喜んでまた来るって言ってた!!ほんとにがめつい女!!」

 とお母様は泣きながら怒る。

 ジャネットも


「何なのその人!最悪な人ね!!きっと男遊びも激しいんだわ!!」


「ええ、そんな顔してました」

 とリュシーと言うがお前らも全員男遊びが激しすぎるだろ!!まぁ相手はこのクソ野郎だが。


 でもこれ以上お母様にお金を出させるのもなぁ。


「私…出て行く…」

 と言うと皆


「「「「それはダメーーー!!!」」」」

 と引き止めるのだった。

 どないせえちゅーんだ!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る