第19話 熱出した私

 やべえ。着々と屋敷の者が夜会に向け準備を始めた。私は胃も痛いがついに頭痛までしだした。

 やべえ。


 ヴァンサンが朝食を持って部屋に入ってきた時には食欲がなくふらついて私はついに倒れた。


「オレリー!!た、大変だ!!」

 とヴァンサンはバタバタと走り行ってしまった。


 待って。行かないで。寂しいよう。

 うへえ、頭痛い…ガンガンする。死ぬ。助けて。気持ち悪い。


 しばらくしてヴァンサンが医者を連れて帰ってきた。ちょっとハンサムかもしれない。医者の先生はエヴラール・プールナールと言う25歳くらいの人だった。一応薬は貰った。安静にしていたら直ぐに治るそうだ。

 するとそこへお母様がやってくる。


「オレリーちゃん!熱が出たの!?可哀想に!!大丈夫かしら?ああ、心配だわ!まさかお母様を置いて死んじゃったりしないでしょうか!?先生?」

 とウルウルしながら聞くとプールナール先生は


「死にはしませんよ。ストレスと疲れが溜まったのでしょう。薬が効けば眠くなる筈です」

 と言うとお母様は先生の手を握り目を見つめ


「ああっ!先生!ありがとうございますっ!」

 とこんな所で色目を使っていた。


「は、はあ…。では私はこれで失礼しますね」

 と帰ろうとする先生にお母様がついて行く。


「玄関までお送り致しますわ!」

 と先生の腕を組んだ。娘の前で何しとるんだ!

 うう、辞めよう。余計気分悪くなる。


「オレリー大丈夫?お水飲む?」


「うん、ヴァンサン…私少し眠るね」

 と言うと水を飲み、ヴァンサンは手を握ってくれた。


「眠るまで側にいる」

 と微笑んだから熱が上がりそう!

 ありがとうございます!!こんなブスの手なんか握ってくれて!!


 薬が少し効いて眠りに落ちようとした時にジャネットが入ってきた。


「お姉様!!お母様から聞いたわ!!謎の病原体に支配されたって!嫌よ!死なないでお姉様!!」

 と言う。おい、お母様…話を盛るな!ただの疲れだろうが!!


「ごめんなさい、お姉様。リュシーは今ジョゼフさんと一緒なの。本来なら侍女のリュシーが来るべきなのにごめんなさい!」

 いや、来んな。来なくていいから。


「ジャネット…別に普通の風邪みたいなものだから大丈夫よ」

 と言うとジャネットがゴロリと私の横に来て


「お姉様お風邪移してくださらない?そうしたら私、ジョゼフさんに看病してもらえるかも!!ねっ!その風邪ちょうだい!!」

 と言う。こいつ…なんなんだよ?

 うぜえ!!


「ジャネットお嬢さん…あんまりオレリーさ…まを困らせないでくだせえ」

 とヴァンサンが言うとジャネットは可愛く膨れて


「…わかりましたわ…。ヴァンサンさんが言うなら…。では自力で風邪を引いてジョゼフさんにどS看病してもらいますわ!!」

 と言ったのでキョトンとするヴァンサン。


「ドS看病とは??」


「ヴァンサン…知らなくていい…ジャネット…はよ出てけ!」


「はーい、お姉様!!」

 とルンルンしジャネットは出て行った。熱が上がりそうだ。


 するとしばらくしてクソ野郎とリュシーがやって来た。リュシーの首には首輪がついており紐が結ばれそれを引っ張りクソ野郎が


「ほらさっさと歩きな?」

 と変態プレイをしている。人の部屋で辞めろ!!


 リュシーは


「お嬢様!…はぁはぁ!大丈夫ですか?」

 と顔を赤らめ聞いてくる。

 お前こそ大丈夫なのか!?と聞きたくなる。

 リュシーは四つん這いになり椅子となりその背中にクソ野郎が座り私を心配した。


「オレリー様、熱が出たらしいですね?大丈夫でしょうか?夜会までに引くといいですね?僕…ブスは風邪引かないと思ってました!」

 余計なお世話だクソ野郎が!!消えてくれ!ほんと!!


「では僕はこれで!…ほらリュシー行くよ!!いい子にしていたから第二開戦だ」

 と紐を引っ張りリュシーは恍惚で涎垂らしながら出て行った。

 全身が重くなりまた更に無駄に疲れた!!熱も上がり苦しい。あいつらの顔見てほんと気持ち悪くなったわ。


 ヴァンサンは冷たい水に布を浸し、絞って額のと取り替えてくれた。ううっ、ありがとういい男のヴァンサン!!


 *

 私はそれから少し眠り夢を見た。

 ヴァンサンが見知らぬ美女とダンスを踊っているのを私はちょこんと壁の隅で眺めていた。ヴァンサン…楽しそう。私とも踊って欲しい。私のドレスも最悪なもので周りから


「所詮あの娘はブスの平民よ…クスクス」

 と笑われる。私は夢の中でも胃がキリキリする思いだ。


 *

 はっ!

 目が覚めた時には夕方でヴァンサンがまだ手を繋いでいた。


「オレリー大丈夫?汗凄いよ?それにうなされていた…。まだ寝てなきゃダメだね。でも着替える?女のメイドの人を呼んでこようか?」


「ヴァンサン…ずっといたんだね…」

 ブスの寝顔とか見ても嬉しくないだろうに。

 でもそれでも夢とは違うからと自分に言い聞かせる。


「オレリー…。俺居なくならないよ。何度もうなされて俺の名を呼んでいた。大丈夫だからな!早く元気になるんだぞ?」

 ヴァンサンは頰にチュッとキスをして着替えを頼むため女の人を呼びに行った。

 ヴァンサン…熱がぶり返すわ…。

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