第18話 靴磨きを手伝う私
「ありがとうございます!ヴァンサンさん!!」
と一人の新人メイドの可愛い子アイリスがポッと顔を染めてヴァンサンの部屋から出てきた!!
思わず険しい顔になった私だ!
まさか…ヴァンサンがう、浮気を!?
そもそも浮気されるほど?私達の仲進展してないんじゃね!?しかも私ブスだもんな!ヴァンサンは可愛い言うてくれてるけど犬の名残かもという気持ちがないわけでもない。
しかし真相を聞くと単純に屋敷の者の靴磨きをしてあげてるだけだった!そう言えばなんか袋受け取ってたな、さっきのメイド。
元々靴屋だったヴァンサンの評判で靴を磨いてくれという依頼が殺到していたそうだ。
ヴァンサンは資金稼ぎにもなるからとジャンジャン引き受けていた。
女の子の依頼が多いが仕方ない。顔がいいし人もいいヴァンサンに群がらないわけない。
村にいた女の子達と違い、屋敷のメイド達はほとんどが貴族上がりだ。中には恋人や婚約者がいる者も多い。
「ヴァンサン大変だね。手伝うよ」
と私は沢山ある女の靴を手に二人で磨いていく。
ていうか大して汚れていやしないわ。
村にいた時は村人は働き者だから沢山土がついてるものも多かった。
でも流石に侯爵邸ではそんなに靴が汚れることもない。
ということはやはりヴァンサン目当てで何とか汚れを付けて持ってくるのだろう。あほらし。
しかしメイド達の前で
「ヴァンサンは私のものよ!!」
と言う度胸はブスの私にはない!
メイド達よりもブスだもの!!それにやはり恋人らしいことあんまりしてない。
「ごめん。オレリーに紅茶を入れてやるのが仕事なのに」
と申し訳なさそうに言うヴァンサン。
「いいよ。そんなの形式だけの執事なんだから。やっぱりヴァンサンは靴を直したりする仕事の方が合っているわ」
「へへ、ありがとう!オレリー!大好きだ!」
といきなり言うから心臓に悪い。
ヴァンサンほんといきなりだもんな。心構えできてないよ。ブスは慣れない言葉に弱い。
照れながら靴を手に取ると…これお母様のだ。あっちは妹の。その向こうはリュシーでついでにクソ野郎のもあった。
しかもどこが汚れとんだ?というくらいピカピカだ。
「ヴァンサン…この靴は?」
「ああ…なんか虫が靴にくっ付いてたとか踏んだとか言って寄越された。それ捨てる靴だって。虫くらいで捨てるなんて勿体ないよなぁ」
と言う。私はもう額を抑えた。
いい加減にしろよ!あいつら!!虫如きで勿体ないことしやがって!
まだヴァンサン目当てでわざと汚してきたメイドの女達のがマシに見えてきたわ。
まだ新品そうな靴なのに!
仕方ない、あいつらの靴は売ろう!!
とりあえず奴等の靴は放置して他の靴を磨き綺麗に揃えておいた。革靴用のクリームを塗り豚毛ブラシで整えていく。
「やっぱりオレリーは手先が器用だな!」
「そうかな?磨くだけなら私でも出来そうなもんだけど」
「いや、ちゃんと綺麗な艶が出てるよ。上手いよ。仕上がりも綺麗だ!靴屋の俺が言うんだからさ!才能ある!」
と褒められた!
「へへ!そう言われると嬉しいよ!ありがとうヴァンサン!」
「うん!こっから逃げてどっかに落ち着いたらまた靴屋を開こうかな!オレリーと一緒に」
とにこにこ言うからまた心の準備してなかった私は照れた。ヴァンサンと二人で靴屋は楽しそうだな。
ニヤけて次の靴を手に取ると靴底の化粧釘と呼ばれる部分が一本なくて私は新しい釘を手に取ろうとして誤って指を引っ掛けてプツンと血が出てしまった。
「いたっ!!」
と叫んだのでヴァンサンが
「どうしたの?オレリー!?あっ!血!」
と気付いた。
うわぁ!恥ずかしい!普段ならこんなヘマしないのに…ニヤけていたからだ!
ブスが調子に乗るとろくなことないですわ!
「ごめんごめん、ちょっとチクっとしただけだし大丈夫だよ。新しい布取ってくるよ…」
と言う私の手を取りヴァンサンはパクリと私の指を口に含み傷口を舐めた!!
その様子に鼻血吹きそうになった!!
「ふごっ!?」
という変な声出るしヤバ!
ヴァンサンは
「大丈夫?オレリー?ちゃんと手当てしよう…」
と少しだけ赤くなり照れていたのでまた私は悶えそうになった!美形が私みたいなブスに無駄遣いしてる!!ごめんなさいほんと!!
誰に謝ってるのかわからん。
「そう言えばもうすぐ夜会があるらしいな。俺は使用人だから余り物しか食べれないけど貴族は良いもん食うんだろ?」
と言う。
え?夜会?
さあっと顔から血の気が引く。
あのクソ野郎もお母様達も夜会がある事黙ってたわね!?
「オレリーが戻ってきたの祝って夜会を開くらしいよ」
夜会…。それは無駄に金を消費する貴族のお遊びに過ぎない。沢山作る料理の山も殆ど手をつけず商談ばかりする社交場。
嫁や婿を探すお見合い会場。
招待客全員との挨拶、ダンス・音楽団…。
ドレス代などなど…。
とにかく金がかかるんじゃい!!
しかも私が戻ってきたからってなんだよ!!?
はっ!?まさか…あのクソ野郎との婚約者だと私を紹介するとか!?
ひーっ!!嫌だー!!
そうなるとファーストダンスまであのクソ野郎と踊らないといけないわけかっ!!
最悪である。
私が暗い顔をしたのでヴァンサンが心配した。
ううっ、胃が痛い…。
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