第4話 少年と再会した私

「どうも…私オレリー・クローデット・ルネ・ラヴァル侯爵令嬢です…よっよろしくお願いしますわ」

 と言うと銀髪青年は


「わ、侯爵家のお嬢様だ!!ひえっ!身分たかー!」

 と頭を下げた。


「いやいや…いいんですよ。見られないし!!ほほほ!」


「村のガキがすまんかったな。服を汚して。あ、俺はヴァンサン・ギュイだ。よろしく」


「よろしくヴァンサン」

 ヴァンサンあんたええ男になったな。きっと彼女くらいできてるだろう。


「お嬢様一人?」


「ああ、この村出身の使用人が今実家に帰ってるから夕方までどこかで読書して過ごすわ」

 と言う。


「ふーん、本か。高そうだな。流石貴族!でもこの辺にいたらまたクソガキに糞を投げられるぞ?」


「えっ…それは勘弁してほしいわ」

 と言うと


「じゃあ俺んちで読めば?大丈夫、俺一人暮らしだよ!邪魔しないし。俺も仕事があるからね」

 と言う彼は靴職人らしかった。

 発注の靴を作ってるらしく、家はちょっとした靴工房だった。いろいろな靴があった。


「俺の両親は小さい頃死んだのさ。王都に靴を売りに行った帰りに盗賊に殺されて売上金奪われちまった。工房は残ったから俺が継いでやってるんだ…。毎週、村に定期的に来る行商人に頼んで靴を王都まで届けてもらう。危ない橋は渡りたくないから俺はじっとして靴を作ることに専念した」

 と革靴を見つめちょっと悲しそうに言った。


「ヴァンサンは偉いね。こんな靴作れるのもだけど、今まで一人でやってきたのね。あ、流石にもういい人がいて結婚しててもおかしくないわね!!」

 と言うとヴァンサンは


「はー…結婚か。考えたこともねぇな。ずっと熱中して靴を作ってたまに散歩するくらいで俺、人嫌いだからあんまり村人とも仲良くないしな」


「え?そうなの?モテそうなのに勿体無いね」


「はー?」

 とキョトンとする。

 こいつ…自分の顔面なんだと思ってるのか。私は手鏡を見せた。


「ほら、貴方結構ハンサムよ?村の娘さんに告白とかされないの?」


「ほー…俺ってハンサム?なんか俺見てもじもじしてる女とかよくいたけど靴の納期とかあったからどうでも良くて通り過ぎてたな!!」

 と言う。こいつど天然男なのかな?


「勿体無い男ね。ヴァンサン…」


「そうか?お嬢様はなんでこの村に?」

 と聞かれてギクリとする。浮気現場のあの家から遠ざかりたかったからなんて!!


「いや…その…ちょっと療養に…まぁ…心の問題よ」

 とボソボソ言うとヴァンサンは


「そっか、お嬢様もストレスとかあって大変なんだな?貴族だもんな!息抜きしたいんだな!うちで良かったらゆっくり本読んでけ!」

 と笑う。


 ヴァンサン良い人だわ!

 お茶を沸かしに台所へ行ったヴァンサン。

 その隙に当たりを見渡す。

 そういや、平民の家なんて早々見れないというか…。

 なんか質素だけど落ち着く。

 やはり私は本当の母親のように平民の血が流れているからか…。


 ふと暖炉の上にヴァンサンの両親らしき人や幼いヴァンサンに後、犬?が一緒に描かれている絵が飾ってあった。旅の絵師に描いて貰ったのかな?


 …あれ?よく見ると…なんか…この犬…眉毛太くて不細工…私に少し似てね??


 ええ?!

 なんかちょっと…ショック…。

 まさかヴァンサン…私のこと犬と比較して優しいとか?いやまさか!


 いやまさか!

 いやまさか!!


 とヴァンサンがカップにお茶を入れてきた。


「すまねー!あんまりいい茶葉じゃないんだ。平民のだし!ごめんなせえ!お嬢様!」


「えっ!?あ、ああいえ…そ、そうだ!ランチボックスにお昼があるから一緒に食べませんこと?ほほほ!」

 と差し出す。

 おおお!とヴァンサンは嬉しそうにランチボックスを開けていいのか?と聞き一緒に食べ出した。


 犬のことを聞いてみたら


「あっ!そういえば似てる!!」

 と絵と見比べ始めたので余計なこと言うんじゃなかったと思った。

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