第5話 犬の生まれ変わりと言われる私
田舎の空気の綺麗な別荘の朝。窓を開けると小鳥が驚いてバサバサ飛び立つ。ついでにシャッと白い糞を引っ掛けられた。
「………」
クソ鳥が!!焼き鳥にしてやろうか!!
まぁしかし…あの侯爵家の朝よりははるかにマシだわ。
あの婚約者のジョゼフは朝っぱらからいつもやって来て私とお茶をし、午後からは美人お母様と一発ヤリまくり、夜には美少女妹とヤリまくり、暇さえあったら侍女のクールお姉さんリュシーともヤリまくっていた。
穢れてる。
今思えばなんであの穢れた空間にいたのかしら私!!別荘来て良かったわ!ほんと良かった!しばらく戻んねーからな!!
ていうか戻るのやだわ!!
いくら私の前で皆何事も無かったかのような顔をしていてももうバレとんじゃい!胃が痛くて死にそうなんじゃい!!こっちは!!
と言うかんじであるが、先日子供の頃にハンカチを救ってくれた(私のハンカチ)ワイルド系天然イケメンと再会した。
彼はヴァンサンと言う、銀髪の青年である。
田舎でも村娘にはモテるようだが、こいつは自分の顔面をロクに見てないのかモテてることに気付いてなかったようだ。
両親が幼い頃死に一人で靴屋をやってる。
私が村で歩いてたらクソガキどもに糞を投げられるのでいつでも家に来て読書していいと言われたので私もウキウキと支度を始めた。
ランチを持ってにこにこしてるとナタリーさんが
「あらお嬢様?随分とご機嫌ですね!村でいい事が?」
「ほほほ!昔のちょっとした人と再会して友達になったのよぉ!」
と照れると
「あら?もしや男の方ですか?いけませんよ?お嬢様にはあんな素敵な婚約者がいるというのに!」
とナタリーさんに言われた。そういやナタリーさんは知らないのか。一気に暗くなる。
「あ、あのね、ナタリーさん…私とジョゼフさんは…たぶん婚約解消すると思うんだけどな…」
「は?どういうことですか?奥様も良い婿が入ったと言って喜んでおりましたしジャネット様もお姉様に素敵なお兄様ができたと言って喜んでおりましたよ?お二人とも嬉しそうでしたのに?お二人を悲しませてはなりません!」
と注意された!!
ち、違うんだ!それは!ナタリーさん!!
しかしあいつらの本性知ったらナタリーさんショックで心臓止まったらやばいな…。
仕方ないから黙っておく。
浮気はダメだと言われたが浮気してんのはクソジョゼフだっつうの!
うう!絶対破棄してやる!!
*
ヴァンサンの家になんか貴族の馬車が止まっていたのでもしかしたらお客様かもしれない。
そっと見ていると家の中からヴァンサンと貴婦人らしきドレスの若いレディが現れて手に靴の箱を持ち嬉しそうに頰を染め
「ありがとう!ヴァンサン!この靴とても気に入ったわ!今度の夜会に履いて行くわ!!」
「はぁ、とてもお似合いで良かったです。お気を付けて」
「ヴァンサン!また注文しにくるわね!…貴方の作る靴大好きなの!!」
んちゅっ!
と頰にキスするレディを見た。
ひー!やっぱりヴァンサンモテモテやんか!!
べっとり頰に赤い紅残ってる!!
馬車がようやく去りヴァンサンは布を腰から取り出してゴシゴシと頰についた紅を拭いた。そして布を見て
「洗濯が大変だ…落ちるかな?でも貴族の挨拶に断ったら殺されるかもしれないし…」
とため息をついていた。
「ヴァンサン!」
「わっ!!」
驚いてヴァンサンが私を見るとほっとしたように
「何だ、お嬢様か!びっくりした!!ベスかと思ったよ!!」
ベス…あの絵の私に似た犬か。可愛がっていたのだろうね。
ベスは両親が死んでしばらく共に生きていたけど寿命で死んだらしい。ベスの墓も庭にあり私は私に似ている犬の墓に手を合わせるという珍妙なことをしている。
すると涙ぐんだヴァンサンが
「ううっ!ベスがいるみたいー!まるでお嬢様はベスの生まれ代わりだ!」
と言われなんかちょっとショックだ。…わ、私犬と同類である。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます