第682話 流れが来ている!
カローラに薬を渡した後、すぐにシャーロットとネイシュ達も部屋に戻ってきて、カローラはネイシュによって診察されて治療される事になった。
「カローラ、イチローからも薬を渡された様だけど、こっちの薬も飲んで… 後、脱水症状を起こしている様だから、水分もとってね」
ネイシュは少しやつれたカローラに薬を飲ませ、コップで水分も取らせる。
「しかし、トイレに籠っている間に随分とやつれたな…」
「えぇ… イチロー様が私の城に来た時は、魔素不足でやつれてましたけど、今度は水分不足でやつれましたよ…」
カローラ城でカローラに会った時は大人状態でしなしなになっていたが、ネイシュが戻って来なかったら幼女状態でしなしなになっていたのか…
「ホノカ、後でカローラをお風呂にいれるから、衣装や下着は石鹸を使って良く洗濯しておいて」
「ちょっとまって! 私漏らしてないわよっ!」
ネイシュのホノカに対する指示に、カローラは横になったまま顔を真っ赤にして目を剥いて声をあげる。
「そういう意味じゃない、こういう食あたりは伝染する時があるから警戒しているだけ…
ミリーズ… 一応、トイレやその近辺も貝毒を浄化する神聖魔法を掛けておいてくれる?」
「えぇ…わかったわ、浄化していけばいいのね」
この異世界でもノロウィルスの対処方法は知られているのか…
とりあえず、カローラの事はネイシュ達に任せて、俺はシャーロットへと向き直る。
「シャーロット、それで国葬の準備の方はどうなんだ?」
「えっ、あっ、はい!」
カローラの事を気の毒そうに眺めていたシャーロットは俺に不意に声を掛けられて、あわててこちらに向き直る。
「そうですわね、とりあえずは取り急ぎ、国民向けの国葬についての段取りはほぼケリがつきましたわね…」
「そうか、では近々、国葬が執り行われると?」
「えぇ、そうです…それでイチロー様にご報告があるのですが…」
シャーロットは困惑した顔で言い難そうに話す。
「どうやら、喪主は私になりそうなのですよ…」
「えっ? シャーロットが? 他に第一王妃とか皇太子とかがなるものじゃないのか?」
俺は目を丸くして答える。
「えぇ、私もそう思っていましたけど、どうやら重鎮の間で私を喪主に推す声が多くて…」
「でも…おかしいな… プリニオはカスパルでは俺たちに対抗しずらいと考えて、カスパルを退場させて、次の操り易く、俺たちに対抗しやすい者を次の皇帝に据えようと考えていたんじゃないのか? だったら、先代皇帝国葬の喪主なんて、絶対にその人物にさせないといけないだろ…」
もしかして、アルフォンソからプリニオに代わったが、まだ重鎮たちを掌握できてないのか? それならば、重鎮たちを味方につけてプリニオに対抗することが出来るな…
「そのはずですよね… でもプリニオは国葬準備の現場に付きっ切りで会議の場にはあらわれず、重鎮の皆さまが、私の事を救国の皇女ということで喪主に推そうとしているのですよ」
「だったら、その流れと重鎮の後推しに乗って、シャーロットが喪主を勤めて、そのまま帝位に就く流れに運べば、シャーロットが帝位に就く目的は果たせるんじゃないか? まぁ…シャーロットにすれば、父親であるカスパルの死を利用する様で、気持ち良い物ではないが…」
一応、シャーロットの気持ちも察して言葉を告げる。
「その事については私も分かっているつもりですわ… 今は私の気持ちのことよりも、このカイラウルや人類の事を思えば、カスパル陛下の国葬を利用することは厭いませんわ」
シャーロットは決意を秘めた瞳で俺を直視する。
「うん…シャーロットが覚悟をしてくれている様で良かった… とりあえず、カイラウルの重鎮たちの支持を集め、喪主を勤める事で次期皇帝の地位を狙う事は出来そうだな… 流れは確実に俺たちの方に来ている! プリニオが誰を推してこようが、最終的な決め手の玉璽もある!」
皆が無言でコクリと頷いて俺の言葉に同意する。なんだか大会に向けた学校の部活で皆の思いが一つになっている様な感じを受ける。
「シャーロット、国葬の時に喪主としての演説があるだろ? その内容を既に作ってあるなら皆に聞かせてくれよ、皆でその内容でいいか話し合いをしよう」
俺はそう言いながら、袖を捲って台所へと足を向ける。
「あれ? あの… イチロー様? これから演説内容を話し合うのにどうして、袖捲りして台所に向かわれるのですか?」
シャーロットが俺の背中を呼び止める。
「ん? ただ話し合うよりも、飯を食いながらの方がいいだろ? ミリーズも牡蠣食いたそうな顔をしているし」
「確かに牡蠣は食べたいけど…私を出汁に使わないでくれる?」
ミリーズがふふっと笑う。
「あぁ、済まないな、でも中毒を起こさずに済む神聖魔法は使ってくれるか? 誰もカローラみたいにはなりたくないからな」
「私だって、こんな状態にはなりたくないですよ! それよりも、ちゃんと私の分も作って下さいよ…」
カローラがやつれた顔で起き上がって文句を言ってくる。
「えっ? カローラも食うのか? 牡蠣に当たった奴って二度と牡蠣を見たくなくなるって聞いてたけど…」
「それって、当たるのが怖いからでしょ? でも、ミリーズの神聖魔法で当たる心配が無いのなら食べますよ… 街で食べた分は全部出ちゃいましたからね…」
「カローラ…食べたいのなら、お風呂に入って着替えて、先程の悪いのを全て洗い流さないとダメ…私が手伝ってあげるから…」
フラフラで起き上がるカローラをネイシュが支える。
「おう、カローラ、一度風呂に入ってさっぱりしてこい! その間に牡蠣料理をつくっておいてやるから」
カローラに風呂に入るように促した後、俺はシュリとカズオに向き直る。
「シュリ、カズオ、料理の手伝いをしてくれるか?」
「あるじ様、別に手を貸すのは構わんが、わらわは牡蠣というものを知らんぞ?」
「あぁ、殻剥きでやすね、シュリの姉さんの力があった方が楽でやすね」
カズオの言う通り、手だけをドラゴン化できるシュリがいれば牡蠣の殻剥きは楽だろう。
「イチロー様、私は料理を頂いてばかりなので、何かお手伝い致しますわ!」
シャーロットが料理の手伝いをかって出る。
「いや、シャーロットは演説の原稿を書いておいてくれ、その方が演説の内容を把握しやすいからな。あとクリスとアルファーは玉ねぎを刻むのとパン粉を作るのをやっといてくれるか?」
「キングイチロー様、分かりました」
「パン粉という事は揚げ物ですね? 頑張ります!」
クリスとアルファーの二人は快く承諾する。
こうして、俺たちは、生牡蠣、焼き牡蠣、牡蠣フライ、牡蠣グラタンなどの牡蠣尽くしの食事をしながら国葬でのシャーロットの演説の原稿を確かめた。
そして、国葬当日を迎えるのであった…
連絡先 ツイッター にわとりぶらま @silky_ukokkei
pixiv http://pixiv.net/users/12917968
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