第627話 本編を読むにはワッフルワッフルと…
シュリが作業部屋を去った後、俺は一人で泥団子を収納魔法の中へしまい込んでいく。
「くっそっ! こんな事なら最初から土嚢なり桶なりに入れておくべきだよな… めっちゃ面倒くさいっ!」
シュリと二人で作った泥団子は500個近くある。その一つ一つを掴んでは収納魔法の中に放り込んでいく。まぁ…俺がシュリの乳を掴んだせいで一人でやらなければならなくなったのだが…
俺は握りが甘い泥団子を握り直ししながら全ての泥団子を収納魔法の中へとしまい込む。
「よいしょっと、これで全部か… 後はディートの所へ行って魔法処理をしてもらうだけだな」
俺は膝に付いた土をパンパンと手で払い、再び手を洗った後、温室から城へと移動してディートの部屋へと向かう。
コンコン
「ディート、いるかぁ~」
俺はディートの部屋の扉をノックして声を掛ける。しかし、返事が返ってこない。俺は再びノックして声を掛ける。
「デーィーートー君っ! 一緒にお仕事、いたしましょ~♪」
俺は子供が友達の家に遊びに行った時とフレーズで呼びかける。しかし、あのフレーズのメロディーライン、ほぼ全国同じというのが凄いよな… 一体、誰が広めたんだろ?
そんな事を考えていても、中から返事がない。確認の為にもう一度ノックしようと手を挙げた時、横から声が掛かる。
「イチロー様、今、ディート様はお留守ですが」
その声の方向に顔を向けると通りがかりの肉メイドの姿があった。名前はなんだったかなぁ~ カローラからメイドの名前を聞いて、それに合わせたプリティーキュアーの容姿を作っていったはずなんだが… 昔の話だし、そもそもプリティーキュアーのメンバーの数が多すぎて覚えきれない…
「えっと、すまんが名前はなんだっけ?」
「イロハです」
「あぁ!そうそうイロハだ思い出した! で、ディートは留守なのか…それでどこにいるのか知ってるか?」
「確か…今の時間なら城下町の教室へ領民たちの子供たちへ授業しに行っておられるはずですが…」
イロハはサイドヘアを弄りながら答える。
「あぁ…そう言えば、子供たちが城の中を探検とかし始めたから、授業の場所を城の中の教室から城下街に変えたんだったな」
「はい、それでアインもディート様の護衛として同行しておりますので、ディート様の部屋には誰もいないのですよ」
「そうか…ディートは部屋におらずに城下町の方にいるのか…」
昨日の今日で城下町の方には行きづらいが、城内で待っているとアナベルに遭遇するかも知れん…となると行きたくなくても城下町に行かないとダメだな…
「分かった、城下町の方に探しに行ってくるよ、ありがとな」
「どういたしまして」
イロハはぺこりと頭を下げると自分の仕事に戻っていく。普通の対応をしてくれた…どうやらイロハは昨日の噂を知らないようだな…
そんな事で、俺はディートを探しに領民の為の授業教室のある城下町へと向かう。
領民たちの目が少々奇異なものを見るような目をしているが、それは侮蔑を含んだものではなく、なんというかおねしょをした布団を干されて近所の人におねしょがバレた時に子供に向けられるような目だ… つまり憐憫のようなものの…はず?
まぁ、俺は一度、街中の衆目の中、ハバナと致した男だ。それぐらいの事、気にしては…やっぱ気になるなぁ~ 今更、どうにもならんけど…
気を取り直して街の様子を確認すると、昨日俺が資材を運んだ場所で、釘や石灰などの資材が届いたのか、作業員たちが建物を再建している姿が見える。
昨日の体力勝負の運搬作業とは異なり、今日の作業は職人の技術のいる作業なので、俺が手伝いにいっても邪魔になるだけだし、体力を使ってムラムラを解消する事も出来ないだろう。
それならば、やはりシュリとディートの仕事を手伝って、ディートの魔法の処理で魔力を使ったり、その後、国境の森へ飛んで行って苗木を蒔く方が体力やら魔力やらを使ってムラムラを解消できるはずだ。
「えっと…確か領民の子供たちの授業に使っている教室は向こうだったけな?」
確か報告書の中では、ヴァンパイアの襲撃の時に、初めに逃げてきた領民たちの為に、何十人も収容できる大き目の仮説住宅を建てたのだが、プライバシーやなんたらかんたらで、不人気で、襲撃が終わった後はいの一番で空き家になった仮説住宅を学校代わりに使っているという事だったんだよな…
そんな事を思い出しながら、その場所へと向かう。そして民家の角を曲がった瞬間…
「いたっ!!」
女の子が駆けてきて盛大に俺にぶつかる。
そしたらパンを咥えた女子学生らしき女の子が倒れていてさ、スカートの中見えちゃったんだよ。
そんでその女子学生にいきなり見つめられて
「せ、責任とってお嫁に貰ってください・・・」
って言われちゃったんだ。
俺は慌てちゃってさ
「・・え?は、はぁ・・・」
みたいに返してそのまま通り過ぎようとしたら
俺のシャツをチョコンと指で掴んでずっとついてくるのね。
そんでとうとう学校までついて来ちゃってさ
「はじめてですけど覚悟は出来てます・・・」
とか言うわけよ。
俺もう理性が吹っ飛んじゃって・・・
学校に付属した用具室に入った途端、いきなりスカートを・・・
いや…俺はワッフルワッフルって言っていないのにどうしてこんな状況になってんだ?
しかも相手の女の子はここの領民では見かけない学生服…これってカーバルの学生服だよな?
そして、今俺の目の前では、その女の子が恥じらいながら目をぎゅっと閉じて自分でスカートを捲り上げて下着を見せつけている… 据え膳…いや、どう考えてもおかしい状況だろっ!
そんな俺の鼻の前にふっと甘い香りが漂う… 昨日嗅いだのと同じ香りだ!
「どっ…どうしたのですか…? やはり…下着も…自分で脱いだ方が良いのですか?」
女学生がプルプルと震えながらぎゅっと閉じていた目をチラリと開くと、すぐ目の前にあった俺の顔にビクリと肩を震わせひぃ!っと驚く。
「…お前…サキュバスだろ…」
俺の言葉に女学生はカッと目を見開いて驚き、仰け反って距離を取ろうとするが、狭い用具室の壁に阻まれて距離を取ることが出来ない。
「どうしてその事が分かったの!?」
女学生は態度を一変させて俺を睨みつけてくる。
「いや、昨日の今日だぞ? それぐらい分かって当然だろ!」
「くっ! 私としたことが功を焦り過ぎたか…私はサキュバス最終兵器三姉妹が一人! 次女のナビキよ! アシヤ・イチロー 貴方をこのサキュバスの力で虜にしてやるわ!」
女学生の姿をしたサキュバスは距離を取ろうと、壁に背中を付けてカサカサとハムスターのように動きながら名乗りを上げる。
それに対して俺は…
「クックック……」
まず初めに呟くような微かな笑い声を…
「フハハハハ」
次に堪えきれずに笑い出した声を…
「ハーッハッハッハ!!」
最後に狂ったように高笑いをあげる。
「何がおかしいっ!」
サキュバスが俺の笑い声にキッと睨みつけてくる。
「俺を罠に嵌めるつもりだと? 片腹痛いわ! お前の方こそ飛んで火にいる夏の虫! 逆にお前を嵌め倒してくれるわ!!!」
相手が四天王みたいなセリフ回しでくるなら俺はラスボスの様なセリフ回しでサキュバスに襲い掛かった…
そして…時が過ぎ… 全てが終わってすっきりした俺は戦いの場であった用具室から外に出て日の光を浴びようとする。すると、用具室の外にはしかめっ面をしたディートが用具室を取り囲むように防音魔法を張り巡らせていた。
やはり持つべきものは、良い弟だな…カローラの言う事が良く分かったよ…
連絡先 ツイッター にわとりぶらま @silky_ukokkei
pixiv http://pixiv.net/users/12917968
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