第556話 第二次カローラ一家交友会

※近況に新しいタイトル絵をあげました。今回はアソシエです。


 よし! 俺の新しい魔法は成功だ!!


 俺は心の中でガッツポーズを取る。先程カローラを救ったガトリングの様な魔法は、ミュリから教えてもらった魔法の真髄で収納魔法を解析し、自分の身体で円環を作らず、自分の血を使って空中に血の円環を作りだし、そこに先程ブラックホークから受け取った、聖水の氷の礫を高速連射したわけである。


 この方法なら手で輪を作らずに両手が自由に使えると、血の円環を目の前や額付近に設定できるので照準を合わせやすいのがメリットである。同様な事を口で行う事も出来るが、口からガトリングを連射するのは人外じみているし、息苦しいので却下したのだ。



「ねぇねぇ、イチロー…」



 新魔法がカッコよく決まった事に悦に浸っていると、手元の聖剣が語り掛けてくる。



「なんだよ?」


「あのヴァンパイアの少年、ちょっと捕まえて致しちゃおうとは思わない?」



 聖剣が切っ先をくいくいと曲げてヴァンパイアのデミオを指し示す。



「ぶっ! 思わねえよっ!! 唐突に何言いだすんだよっ!!」


「あんな子をイチローが手籠めにするところをちょっと見てみたいだけなのよ~」


「イチロー様とフィーラちゃんの二人で何を話しているんですか?」



 俺と聖剣が言い合っている所に、あの三人から逃げてきたカローラが俺の背中に隠れるように這い上がってくる。



「貴方の弟をイチローに勧めていた所なのよ、別にカローラも弟がイチローに致されるぐらい構わないでしょ?」


「えぇぇ~ それってイチロー様が弟の夫になって、私の義弟?になるって事でしょ? そんなのちょっといやかなぁ~」


「お前ら…まじで止めてくれ… 鳥肌が立ってきた…」



 俺の身体に鳥肌が立ち始める。そんな俺たちがそんな会話を繰り広げている時、ヴァンパイア側三人にも変化が訪れる。



「くっ!!」


「どうしたの!? デミオ!!」

「身体にもあの攻撃をうけたの!?」


「いや…突然、身体中を舐め廻すような悪寒を感じて…」



 デミオは自分の肩を抱きしめる。



「聖剣を持ってるぐらいであの下等種が怖いの?」

「仕方ないわね、私たちがアイツらを懲らしめてやるからデミオは後ろで見てなさい!」



 レヴィンとトレノの二人は、そうイキると二人でコンビネーションを使いながら俺に挑んでくる。



「イチロー様っ! あの二人ならいくらでもやっちゃっていいですよっ!!」



 カローラが俺の背中で叫ぶ。



「お前…俺の背中に隠れながらだとめっちゃカッコ悪いぞ… それにだな…アイツらは可愛げのあるメスガキと違って…単なるクソガキだ… 興味が湧かん…」



 そう答えていると、二人が二手に別れて迫ってくる。



「先程の攻撃の威力は凄かったけど、これならどうっ!?」

「どれが私たち本体か分からないから狙いを定められないでしょ!!」



 レヴィンとトレノの二人はその言葉と同時に、互いに数々の分身を作りだし、俺を左右に挟みこむように襲ってくる。



「別に使えるのはガトリングだけじゃないんだよな~ とりあえず、ショットガン!!!」



 俺は一方を向き、血の円環から聖氷の散弾を打ち込む。



「キャアァァァァァァァ!!!!」



 レヴィンかトレノかどっちか分からないが、分身全てを射程に納める俺のショットガンを受け、分身が消えて本体が吹き飛ばされる。



「トレノ!!! でも、後ろがガラ空きよっ!! 前しか撃てないお前はもう終わりよ!!」


「んなわけねーだろ、発射口が一つだけだと思ったのか?」



 俺は後ろの気配に合わせて血の円環を作りだし、もう一方の双子にショットガンを撃ち出す。



「キャアァァァァァァァ!!」



 一応確認のため、後ろから襲ってきた奴を見るが、頭を護った腕や露出している足が、ショットガンを受けて蓮コラのようになっていたので少し後悔する。



「レヴィン・トレノ姉さんっ!!」


 

 二人の姉妹がやられた事に、弟のデミオが二人に止めを刺されまいと突撃してくる。



「お前、他人の身を案じるよりも自分の身を案じろよ」



 俺はすぐにデミオに反応し、聖氷ガトリングをぶちかます。



「くっ!! お前なんかにやられるものかっ!!!」



 デミオは魔法でエアシールド、バリアシールドを二重展開し俺のガトリングを防ごうとするが、単発の聖氷弾ならそれで防げるであるが、本物のM134ミニガンの毎分2000~4000発には遠く及ばない毎分200発ほどであるが、普通のエアシールドやバリアシールドを撃ち破るには十分な弾量だ。



 ドゥルルルルルルルルルンッ!!!!!!



 一枚目のエアシールドで防ぎきれない聖氷弾が二枚目のバリアシールドに着弾し、あっという間にシールドを崩壊させ、デミオの身体に突き刺さる。



「グアァッ!!!」



 聖氷弾が身体に突き刺さると魔法を維持しつづける集中力を損ない、エアシールドが消滅し、デミオの身体がハチの巣になっていく。



「イチローっ!! 今よっ!! 触手ちゃんであの少年を捕えるのよっ!!!」


「ぶっ! 聖剣! おまっなにいってんだよっ!!!」



 俺は聖剣の突然の悍ましい言葉に噴き出してしまう。


 しかし、俺が噴き出した隙に、ある一つの影が凄まじい速度で飛来する。



「デミオォォ!!! レヴィン!! トレノ!!!!」


「お…お父様っ!!」

「パパっ!!」

「助けに来てくれたの!?」



 俺のガトリングでボロボロになった三人が父親の声に反応する。



「本命がきやがったか!!! これでも喰らいやがれっ!!」



 俺は飛来するハイ…カローラパパに向けてガトリングをぶちかます。



 ドゥルルルルルルルルルンッ!!!!!!


「そんなもの!!!」


 カローラパパはデミオと同じくエアシールドとバリアシールドを先程のデミオとは比べ物にならない強度で展開する。

 


「くっ! 流石、父親…固いな…しかし、どこまで耐えられるかなっ!!」



 息子のデミオより強力なシールドが張れるといっても、この時代ではあり得ない程の弾量と照射時間に聖氷弾が次第に身体に着弾し始める。だが、カローラパパの突進は収まる事を知らない。



「負けんぞぉぉ!!! 私は負けんぞぉぉぉ!!!」



 そして、カローラパパは聖氷弾を受けつつも三人の子供たちを回収し、闇の触手を翼に変えて、三人の子供たちを包み込むように保護をする。



「下等種!!! 今日の所は引き下がってやろう… しかし…我が子供たちを傷つけた事… 必ずや後悔させてやるからなっ!!!!」



 カローラパパは俺を鬼のような形相で睨みつけると、身を翻し逃げ去ったのであった。


 そして、カローラがポツリと呟く。



「…なんだか、今日は私たちの方が、悪人みたいな感じでしたよね…」


「…言うなカローラ… 俺もちょっとそう思っていた所なんだ…」


「勿体ないわ~ あの少年…もう少しでイチローの魔の手に落とせるかも知れなかったのに…」


「お前がそんな事言うから、俺たちの方が悪人っぽく見たんだろうがっ!!!」



 俺の叫びが夜空に響いた。


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