第520話 何でもするって言ったよな…(ニヤリ)

※ゴジラ-1.0を見に行っていて投稿が遅くなってしまいました。

 ごめんなさい


「はい…私に出来る事ならなんでも致します… 私は早々に事態を収束させて教皇の座を降りて元の一般教会職員の座に戻って、日長一日読書が出来る、なんでもない平凡な日々に戻りたいのです…」


 アイリスはそう言いながら小さく身体を前後に揺らして頭を床に擦り付ける。


 なんだよ…教会の混乱を収拾したいのが本来の目的ではなく、はやく教皇の座を退いて気ままな生活に戻るのが目的かよ… 


 だが、まぁいい…言質は取った…


俺は舐め廻すような目つきで土下座するアイリスを見下ろす。



「じゃあ…アイリス…謝罪を受ける条件だが…」


「はい…聖剣の勇者…イチロー様… 何でも仰ってください…」



 アイリスは床に頭を擦り付けたまま答える。



「アイリス、お前を自由にさせろ…いや…俺のセフレになれ」


「はぁ!?」


 床に頭を擦り付けていたアイリスも、俺の言葉に流石に驚いて、皿の様に目を見開きながら顔をあげる。


 ちなみに本当は肉奴隷や性奴隷になれと言いたかったが、そこは俺の良心が働いてセフレで落ち着いた。ホント、俺って良心的~



「いやいやいや!! ちょっと待って下さいっ!」


「なんだよ、何でもするって言っただろ? 今更、無理だって言わせないぞ」



 俺はニヤリと笑いながら答える。



「ここには歴史的な美術品や工芸品、物凄い魔道具や、勇者の鎧や盾なんかもあるんですよっ!? 私なんかよりそっちの方が価値がありますよっ!!」


 アイリスは自分可愛さからか、なんとか俺の魔の手から逃れようと必死に教会の所蔵品の凄さを説明してくる。


 美術品や工芸品には興味がないが、流石に勇者の鎧・盾には興味が惹かれる。



「聖剣以外にも、勇者の鎧や盾なんかもあるのか… そんなに凄いものなのか? ミリーズ」


 俺は同席しているミリーズに尋ねる。



「えぇ、確かに勇者の鎧や盾、聖鎧とかもあるけど、聖剣様の様に歴史に名を遺す伝説の武具ではなく、大陸全土鍛冶師や武具職人から教会に対して奉納される鎧や盾があって、三年に一度品評会が開かれて、その中の最優秀作品に勇者の鎧や聖鎧などの名称が与えられるのよ」


「なんだよそれ…ただの鎧じゃないか」


「まぁ、大陸全土から送られた品から選び抜かれたものだから最高級品である事には変わりないわ」



 聖剣の凄さから比べれば、現代日本でよくある何々金賞受賞ぐらいの価値しかないように思えて来て、更に興味を失う。



「いやいやいや!! 待って下さい! 待って下さいって! 大陸全土から選ばれた最高級品ですよっ! それに見て下さいよ! この輝きを! まるで美術品の様に美しいでしょ?」


 アイリスはノルマが全く達成出来ていない営業のように運び込まれた鎧の良さを宣伝し始める。


「そんなキラキラと目立つ鎧を着る冒険者がどこにいるんだよ… 敵に居場所知られて狙撃とかされるかもしれんし、奇襲もかけられんだろ」


「じゃあ、この絵画はどうです?『モロのビーナス』ですよ!? イチロー様ならこんなの好きでしょ?」


「いや…性に見ざめ始めた思春期のガキじゃあるまいし… そんな露骨に見せられてもな…」


 エロを突き詰めるとマッパでモロ見せよりかはチラリズムやコスプレに価値を見出してくるよな… アニメやゲームに出てくる美少女キャラが増えすぎて、ウ=ス異本とかでマッパで出てきたら誰なのか分からん時がある… やはり衣装は必要だ…



「じゃあ…私は…私は…どうしたらいいんですか…」



 アイリスはこの部屋に来た時よりも青ざめた顔をしてガタガタと震える。



「だから、最初から言ってるだろ? 俺のセフレになれって」


「いやいやいや! 私、聖職者ですよ!? しかも仮にとは言え教皇なんですよっ!!」


「だから余計にそそるんじゃないか…」



 俺はぺロリと舌なめずりをする。



「ダメだ…この人…本気で言ってる…」


 

 アイリスはダラダラと冷や汗を流しながら狼狽し、動揺でギョロギョロと泳ぐ目で何か助かる手段は無いかと辺りを見回し、聖剣に目を止める。



「聖剣様!!!」


「なに? アイリス」


 アイリスの必死の叫びに聖剣は興味なさげに答える。


「助けて下さい! 聖剣様っ!! このままじゃ私っ!」


「でも、アイリスが何でもするって言い出したからじゃない」


 聖剣の目がどこにあるのか分からないが、聖剣はアイリスに見向きもせず本をペラペラと捲っている。


「聖剣様はいつも真実の愛について仰っていたじゃないですかっ! 私がセフレにされそうになっているんですよっ!」


「それがなにか?」


「そこに愛はあるんですかっ!」



 アイリスの悲痛な叫びが部屋に響く。



「イチロー、どうなの?」


 聖剣が俺に向き直って尋ねてくる。


「おぅ、アイリス…俺はお前を愛してるぞぉ~」


「ほら、こう言ってるじゃない」


 そう言って聖剣はアイリスに向き直る。


「いやいやいや、聖剣様っ!いつからその目が節穴になったんですかっ! こんなの性欲100%に塗れた目じゃないですかっ!!」


「おいコラ、人に指差してこんなのとはなんだよ」


「そうですよアイリス、人に指差してこんなのとは失礼ですよ」


「だって! 聖剣様っ!」


「いいですかアイリス…」


 口ごたえし始めたアイリスを聖剣は静かな口調の威圧で黙らせる。



「人には…肉欲から始まる愛もあるのです…」


「えっ? ちょっと… 何を仰っているんですか…聖剣様…」



 聖剣の言葉にアイリスは激しく困惑し始める。



「最初は魅惑的なお尻から始まり… 胸板… 唇…瞳… 交わるたびに対象を深く知り…特別な存在だと気付き始め、やがて愛が芽生える…そしてオメガバースに至り、愛の結晶が産まれるです!」



 聖剣はBL本片手に高らかに語り始める。



「いや…聖剣様が何を仰っているのか分かりません…」



 アイリスはガタガタと震えながら、更に助けを求める様に今度はミリーズに視線を移す。



「ミ、ミリーズ…様」


「えっ? 何?」



 聖剣の持つ本に興味をそそられていたミリーズはふいにアイリスに声をかけられて慌ててアイリスに向き直る。



「良いんですか…? 聖女ミリーズ様はイチロー様のご婦人ですよね… それなのにご自身の前でこの様な事を仰っておられるんですよっ!」


「うーん…そう言われてもイチローには既に片手じゃ済まない数のお嫁さんがいるからね… 今更一人増えたぐらいでは…」


「はぁ?」



 アイリスはまさしくAAの(゚Д゚)ハァ?って顔をする。



「それにね…」



 ミリーズにしては闇のある悪戯っぽい笑みを浮かべる。



「アイリス、貴方、散々イチローを苔にしたそうね… ちょっとぐらいお仕置きされた方がいいんじゃないかしら?フフフ」


「ひぃっ!」



 アイリスは更に血の気が引き震えあがる。



「アシュトレト…様」


「はい? カローラさん、どうされました?」


「私たちは別の部屋でカードゲームでもしましょうか」


「そうですね! 私、ここの女の子たちと一杯練習したんです!」



 そういってカローラは自分の所にアイリスの火の粉が飛んでくる前に部屋を退出していく。


「聖剣様…その御本は…」


「あぁ、ミリーズ、あなたも興味あるの? この本は一人の神父が勤める教会に身寄りのない少年が保護されて禁じられた愛が始まる異世界の絵物語よ、興味があるなら私が文字を翻訳しながら見せてあげるわ」


「えぇ! 是非ともお願いしますっ!」



 聖剣とミリーズは二人して部屋の扉へと向かう。



「では、キング・イチロー様! 私は部屋の前で警護をいたしますね!」



 キリっと敬礼したベータもミリーズ達の後に続き部屋の扉へと向かう。部屋を退出しようする人々を見捨てられて追いすがる様に手を伸ばし視線で追うアイリス。



「聖剣様…」



 すると、部屋を出る瞬間、チラリと聖剣がアイリスに振り返る。



「アイリス…最後に言っておくけど…」


「なんでしょう! 聖剣様っ!」



 最後に助けてもらえるのではないかと思い、アイリスは期待に満ちた瞳で聖剣を見る。



「愛は大切な事だわ…でも、それ以上に契約も大切な事なの、ことさら教会ではね… 神と人とは聖典に記されている契約に基づいてその関係が明記されている… 私だってアルド様に愛を貫くために神と契約し聖剣になったの…」



 期待に満ちていたアイリスの瞳が曇っていく。



「あなたは謝罪を受け入れて貰う為なら何でもするって言って、イチローはそれに答えて貴方の身体一つで許すと言った… これで契約がなされたのよ… 仮であっても教会の頂点である教皇ならその契約を履行しなさい…」



 そう言い残すと部屋の扉は閉ざされた。


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