第507話 具体的にどれぐらい?
ミュリの転移地点にあった転移門の調査から数日が経った。調査から帰っていた時に、聖剣がノートPCをまた55型テレビにつないでオブシダンのBLプレイの真っ最中だった事を覗いて、留守中には特に問題は無かったようだ。
また、ミュリの転移の事情やあの女の子このみの事以外に、俺にソナーを打ってきたり、また望遠魔法で俺を覗いていたのもミュリであることが判明した。
それと言うのも、俺がソナーを打たれたり望遠魔法を使った人物がいるから、その人物にも協力して貰ったらどうかと尋ねたら、あっさりとそれは自分であるとミュリは告白したのだ。
「いや、この日本でいきなり魔法を使う人物が現れたら警戒するでしょ… まぁ、それがイチロー、貴方で、さらにカローラと聖剣までいるとは驚いたけど…」
そう語っていた。
そして、転移門の調査から数日経ち、その起動には膨大な魔力が必要であることがミュリの報告で分かっていたが、具体的にどれぐらいの魔力量が必要なのか分かっていなかったので、その点についてミュリに尋ねてみた。
「で、ミュリ、転移門の起動には具体的にどれぐらいの魔力量が必要なんだ? 前に発電所が必要とか言っていたけど、もっと分かり易い指標で教えてくれないか?」
俺は朝食の鹿生ハムの試作品をレタスとトマト、チーズでサンドイッチにしたものを出しながら尋ねる。
「そうね…ここ日本では自然での魔力回復はほぼ期待できないから、電気から魔力変換するので電気換算すると… そうね…イチローあの時の調査でどれぐらいの魔力を転移門に注ぎ込んだか覚えてる?」
そう言って、サンドイッチを掴んでモリモリと食べ始める。
「そうだな…帰りの飛行魔法の魔力を残しておかないとダメだから…それでも全魔力量の九割ぐらいは注ぎ込んだと思うぞ」
俺は自分のコーヒーを注ぎながら答える。
「そう、それで今はどれぐらい回復しているの?」
ミュリは口元を拭いながら再度尋ねてくる。
「そうだな…全体の20%ぐらい…って感じかな?」
そう言ってコーヒーをずずずと啜る。
「なるほど、4日程で10%回復した計算ね」
「そう言えば、なんでここは魔力が自然と回復しているんだ? お前は前に電力から魔力変換しているって言ってたけど、俺はそんな処置をしてないし、ここはどういう訳かある程度のマナが満ちているな…ここは特別な場所なのか?」
ここ数日でふと気が付いたのだが、ミュリの住んで居るこの家は、元の世界と比べれば少ないが、どういう訳だがマナが存在している。だから、この家でゴロゴロしているだけでも魔力が回復しているのだ。もしかして、この場所が、俗にいうパワースポットとか龍脈と呼ばれる場所なのであろうか…
「いえ、違うわよ、一々、魔法陣の上やカプセルベッドとかに魔力を回復させる為に入らなくて済むように、この家全体を床暖房の様にいるだけで魔力が回復するように設備を整えているのよ、調査から戻った時にスイッチをオンにしておいたけど気が付かなかった?」
「あっそれで、急にマナが湧いてきたんだ! 寝ている時にマナが湧いてきたからビックリした」
そう言って話を聞いていたカローラが口をもぐもぐしながら声を上げる。
「いや、俺もすぐには気が付かなかったが、ふと気がつけばマナが満ちていたから驚いていたんだよ」
しかし、家全体を床暖房の様に魔力を回復する設備を埋め込むって…面白い事を考えるな…
「フフフ…便利でしょ… で話は戻るけどイチローの場合だと4日で10%という事は40日で0から100%回復することになるでしょ?」
「あぁ、そういう事になるな…」
俺もそう答えてガブリとサンドイッチに食らいつく。生ハムはまだまだ熟成が足りないな…やはりもっと熟成させないと旨味が出てこない…
「で、ざっと私が簡単に計算したところ、私やカローラがイチローと同じ量の魔力量を持っているとして、3人がかりで1時間で同じ量を注ぎ込んでそれを丸一日やってようやく転移門に1%ぐらい魔力を充填できると思うのよ…」
「えっ!? 40日回復に掛かる量を1時間で注ぎ込んでそれを三人で24時間やってようやく1%!?」
俺は思わず手に持っていたサンドイッチを落としそうになる。
えっと…よく考えろ…俺…40日で100%回復するとしてそれが3人で24時間で1%… つまりここで魔力を回復しながら生活して40かける24で960日で1%!?
では100%充填させようと思ったら960日かける100で9万6千日!?一体何年かかるんだよ…
「ざっと考えて…カローラ以外は寿命を迎えているわね… 普通にやっていたらそれだけ時間が掛かるって事よ…」
ミュリも頭の中で暗算したのか、ふっと不敵に笑う。
「なんとか一年ぐらいでなんとかならんか?」
「なる訳ないでしょっ!! 今の設備でさえ、魔力が枯渇しかかっている貴方が優先的に魔力を吸収して回復しているはずだから、96000日掛かる計算ですら本来は3倍にしないといけないのよ? それを一年に収めるなんてとても無理よっ!」
「本当にそうなのか? えっと…96000かける3倍してそれを一年の365で割れば…」
俺はコーヒーに指をいれてその水滴でテーブルの上で計算していく。
「ざっと、今の設備の約790倍ほどにすれば…ワンチャン…」
「それ…自分で何を言っているのか分かっているの? 一般家庭の790世帯分の電気設備を作れといっているのよ? 設備をつくるお金は? 維持費はどうするのよ?」
ミュリが顔を顰めて声を上げてくる。
仮に電気代が2万だとして790世帯分となると一か月1600万… 一年だと2億近くになるのか… これは大谷翔平なら楽勝で出来そうだが、一般人では無理な金額だな… 設備の事も考えるともっと掛かりそうだし…
でも、大谷ならいけるのか…ピカキンでもいけそうだな…
「金さえ稼げれば…行けるのか…」
俺はそう呟きながらサンドイッチを飲み下した…
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