第494話 幼女の家

※注意! 2023/12/25 昨日間違えて、こちらを先に投稿してしまいました。今日の分の投稿は493話 幼女の正体をご覧ください。


 尚、後から読まれている方は何も問題なので、そのままお読みください。






 俺は現在、助手席に金髪幼女、後部座席にカローラを乗せて、幼女のナビで幼女の家に向かっている。


 幼女が最初に逃げ出したのは、俺の行動を変態と間違えただけではなく、追手だと勘違いしたようだ。だが、俺とカローラの会話に聞き耳を立て、追手では無い事が分かったから、一応誤解が解けたという事で和解し、詳しい話をする為に幼女の家に向かっている所なのである。幼女の家に向かいその親か保護者と話し合えば、元の世界への帰還方法や、ここでの活動拠点も用立てやすくなるであろう。



「そこを右の山道に入って、暫くすれば私の家が見えるはずよ」



 幼女の指示通り右の山道に入る。すると、その曲がる山道の入口に人払いの結界が築かれている事を感じる。このマナが希薄な現代日本で、良くそこらに結界が張れるよな… どんだけ魔力に余裕があるんだよ…


 そう思いながら車を走らせると、暗い山の中、ぽっと明りが灯る山荘が見えてくる。



「あそこよ」



 幼女が指差す。



「なんだか、別荘みたいな家だな…」


「まぁ、そんなものよ」



 俺は山荘の前に車を止め、外に出て山荘を見上げる。こんな山の中にこれ程の別荘を構えているなんで、金持ってんなぁ~



 そんな感じに山荘を見上げていると、幼女がよいしょこらしょと車を降りて、山荘の玄関へと進み、ポケットから家の鍵を取り出す。



「あれ? 今は親は外に出ているのか?」



 すると、幼女はカチャリと玄関を開け放って答える。



「私は一人暮らしよ」


「は? え? お前、一人でくらしているの? 幼女一人で?」


「幼女幼女って言ってるけど、私、今年で18歳よ…とりあえず、中に入りなさいよ」


 そう言って家の中に入っていく。


「18歳って… どう見ても小学生どころか幼稚園児に見えるのだが… しかし、リアルで合法ロリっていうものを見る事が出来るとはな…」


「聞こえているわよっ!」


 俺が呟いた小言を聞きつけたのか、家の名から幼女の声が響く。


「まぁ…シュリみたいな乳牛ロリBBAがいるんですから、合法ロリがいても不思議じゃないでしょ、さぁ、中に入りましょ」

 

 カローラは逆にこの場にシュリが居ない事をいいことに、シュリの事を言いたい放題いいながら、家の中に入っていく。シュリに聞かれていたらディアナとソエルを喰われていただろうな…


「まぁ… 大人が居なくてもあの幼女が18歳の大人と言うなら、アイツから話が聞けるか…」


 俺は玄関に入り靴を脱ぎ始める。


「イチロー兄さま! イチロー兄さま! 早く来てください!」


 すると先に家の中に入ったカローラの声が響く。興奮した声であるが、危機的状況を知らせるような言い方ではない。


「どうしたんだ? カローラ… って、おい…何だよ…この部屋…」


「凄いでしょ!? イチロー兄さまっ! この部屋、私の理想の部屋ですよ!!」


 入った居間の中を見渡してみると、55型ぐらいはあろうか大型テレビが3台も設置されており、そのテレビの前に、ステッキ、PL5,ツイッターBOXなどの最新ゲーム機や昔のゲーム機まで用意されている。また今の壁は本棚で敷き詰められており、その本棚には様々なゲーム機のゲームや、コミック、ラノベ、DVDやBD…


 正にオタクにおける理想郷がここに再現されていた。



「イチロー兄さま、もう、この家を乗っ取っちゃってしまいませんか?」

 


 カローラはゲスな笑みを浮かべて俺に囁いてくる。



「いや… 部屋の持ち主がいる所でそんな話は冗談でもやめてもらえるかしら?」


 

 カローラの言葉に幼女が声を上げるが、そんな幼女にカローラはニヤリと笑ってくるりと向き直る。



「えっ!? ちょっとその顔… マジで考えているの!?」


「こら! カローラ、幼女をビビらすな」


 俺はカローラの頭をコツリと叩く。


「あ、貴方の方はちゃんと大人としての良心がある様ね…」


「もしもの為にちゃんと本来の住民も残さないとマズいだろ、俺の猪ソーセージで篭絡するから」


「二人そろって…ゲスな人間ね…」


 俺の言葉に幼女は顔を引きつらせる。


「まぁいいわ、とりあえず座って、それで先ずは自己紹介をしていきましょう」


 そう言ってソファーに座る事を勧められる。ソファーはなかなかの高級品の三人掛けのソファーで奥行きも長く、このままごろりと寝転がっても気持ちよく眠れそうな代物だ。


「先ず、私から自己紹介するわね」


 幼女はL字型に設置されている別のソファーに腰を降ろしながら話し出す。


「私はベルクード公爵家の末子、ミュリエール・コール・ベルクードよ、こう見えても18歳よ」


 部屋の様相から金持ちなのは分かっていたけど、やはり公爵家のお貴族様か… しかし、ベルクード王家の公爵は王家と同じベルクード姓を名乗っているのか。


「で、貴方は?」


 幼女から俺の自己紹介を促される。


「俺か? 俺はアシヤ・イチローだ。一応三ツ星勇者だ」


 俺も爵位を告げようかと思ったが、なんせ男爵位だ… 公爵令嬢に男爵位を告げても舐められるだけなので伏せておく。しかし、俺が自己紹介をすると、幼女ミュリエールは露骨に片眉を上げて怪訝な顔をする。


「貴方… それ、真面目に言ってんの?」


「何だよ… 名乗るのに真面目も不真面目もねぇだろ? 何か? 俺が三ツ星勇者に見えないのか?」


「いや…そういう事じゃないんだけど… その顔、冗談でも不真面目でも無いようね… という事は…」


 幼女ミュリエールは困惑しながらカローラの方を見る。


「もしかして…貴方… ヴァンパイアのカローラ・コーラス・プライマ?」


「えっ!? なんであなたが私のフルネームを知っているのよっ!」


 この日本で初めて出会ったはずの幼女がカローラのフルネームを言い当てたので、カローラは目を丸くする。


「そりゃ… 色々有名だから…」


 有名と言っても色々あるが、ミュリエールの反応を見る限りあまり良い物の様に思えない。カローラとミュリエールがそんなやり取りをしていると、今まで黙っていた聖剣がポンと外へ出てくる。


「よいしょっと… イチロー、私のパソコン出してくれるかしら?」


 出て早々、俺にそんな事を言ってくる。


「えっ!? 聖剣!? 聖剣までいるの!? って事は… 貴方はアシヤ・イチローで間違いないようね…」


 ミュリエールは驚いた眼で聖剣を見た後、不本意ながら納得したような目で俺を見る。そんなミュリエールに俺は収納魔法から聖剣のパソコンを取り出して手渡しながら、逆に俺の事を尋ねる。


「…何だよ… 俺の存在がそんなに珍しいのか? もしかして後の世に何か語り継がれているのか?」


 するとミュリエールは両手の人差し指で口の前にバツ印を作る。


「禁則事項よ」


「何だよ… 涼風ハルヒの躁鬱のくるみちゃんみたいな事を言い出して…」


「貴方もあの作品を読んでいるなら、未来の話を過去の人物に話せないのは分かるでしょ?」


 例えで言った作品をミュリエールも知っている様だ。しかし、これでミュリエールが俺から見て未来の人間である事が確定したのか…


「イチローの未来の話なんてどうでもいいから、ルーターのパスワードを教えなさいよ、それなら話せるでしょ? 私は兎に角、一早くネットをしたいのよっ!」


 聖剣が早速ノートパソコンを開いて、ミュリエールにネットを繋ぐためのパスワードを要求する。


「えぇぇ~ なんで聖剣がネット廃人になっているのよ… ちょっと待ってね…確かスマホのメモ帳に記録しておいたはずだから…」


 ミュリエールは聖剣にメモ帳を開いたスマホを差し出すと、俺に向き直る。


「それで、肝心な貴方が知りたがっている世界を渡る方法の事なのだけど…」


「教えてくれるのか?」


 俺は前のめりで尋ねる。するとミュリエールは静かに首を横に振る。


「私もこの日本に飛ばされてやってきたのよ… だから、戻り方は分からないわ…」


 静かに告げてきたのであった。




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