第448話 活動拠点確保!

 十分すぎるほどの活動資金を得た俺は、次なる目的の品、印鑑を手に入れるために文具店へと向かう。もし、装飾品を換金することが出来なければ、100均のハンコで何とかしようと考えたが、金ならあるので、ちょっと良さげな印鑑を手に入れようと考えた。


 文房具屋についた俺は、自分の本名である『芦屋』の印鑑を買いかけたが、途中で思い出して、偽造で使っているDQNの『中原』の印鑑を購入する。


 次に銀行に向かい口座を作りに行く。銀行の入口に入り受付番号を取り、暫く順番待ちをしなくてはならないので、その間にスマホを弄る。


 この後に向かうマンスリーマンションを扱う不動産の物件には幾つか目星は付けているが、その後で必要になるだろう日用品や家具などの買い足す為のホームセンターを調べる。


 実際に部屋の中を見てみないと分からないが、布団やらテーブル、鍋やフライパンの調理道具、家電も備え付けがあると記載されていたが、あまり良い物でなければ家電を買い足さないといけないな。特に備え付けではない掃除機か、ネット回線は準備されているがパソコンも必要である。


 俺はちまちま検索しては、店舗のホームページをブクマしてく。しかし、このスマホのDQNはエロい所しかブクマしてないな… でも、久々に現代日本のエロも良い物だ… あとで暇な時にじっくりと見るか…


「待ち受け番号69番の方~」


 しかし、エロを見るにしてもカローラと一緒じゃ見ずらいな…ここは据え置きではなくノートパソコンを買って、こっそりと見れるようにした方が良いな…


「待ち受け番号69番の方~ いらっしゃいませんか~」


「はっ! 俺の番号だ!」


 スマホに熱中しすぎて聞き逃すところであった。俺はスマホを仕舞ってすぐに呼びかけられた窓口へと進む。


「本日はどういった御用件でしょうか?」


 銀行員のお姉さんが要件を聞いてくる。


「すみません、新規で口座を作りたいのですが…」


「ではこちらの用紙に必要事項を記入してください。後、本日はご本人様確認出来るものと印鑑はお持ちでしょうか?」


 銀行員のお姉さんは手慣れた手つきで用紙を差し出し、それと共に、印鑑と身分証を受け取る小皿トレイを出してくる。


「印鑑はこちらです、身分証は運転免許証でお願いします」


 小皿トレイに印鑑と運転免許証を載せる。


「あと、本日口座には御幾らご入金なされますか?」


 とりあえず家賃が6万、その他の光熱費を合わせてひと月10万もあれば足りるであろう。ならば二か月分ほど入金しておけばいいか?


「では20万で」


「ではそちらも先にお渡し願いますか?」


 俺は財布を取り出し、小皿トレイの上に20万円を載せる。


「それでは紙幣の勘定と身分証のコピーをとってまいりますので、申込用紙を記入してお待ちください」


 俺は文房具店の様に本名で勝ち間違えないように、気を付けて擬装で使っているDQNの氏名や住所などを記載していく。住むところが決まったら後で住所変更にも来ないといけないな、DQNにバレてしまう。


 そして俺が申込用紙を書き終わるころには紙幣の勘定と免許証のコピーを終えたお姉さんが戻ってくる。


「こちら、記入し終えました」


「では、確認いたします。こちらがお預かりしていた印鑑と免許証です。では、そちらの席で暫くお待ちください」


 俺は受付から離れて椅子に腰を降ろし、再び手続きが済むまでの間、スマホを弄りながら待つ。


「ナカハラ様~ ナカハラ、ユウセイ様~」


「あっはい!」


 今度は聞き逃さないように気を張っていたのですぐに立ち上がる。


「はい、こちらが通帳とキャッシュカードでございます」


 よし! 銀行の口座も開設で来たぞ! これで不動産屋にいっても困ることは無いだろう。


 口座を開設することができた俺は、今度は不動産のジャガーパレス22に向かう。


 店舗に到着すると、すぐに若い社員が対応してくれる。


「いらっしゃいませ! お部屋探しですよね?」


「あぁ、ネットで見たマンスリーを借りたいんですが」


「それではこちらで詳しいお話を致します」


 そう言って受付席に案内する。


「それでネットで探されてきたと仰っていましたがどちらの物件ですか?」


「こちらです」


 俺はスマホを取り出して、予め目を付けてブクマしていたページを見せる。


「こちらですか、暫くお待ちください」


 若い社員はパソコンで俺の提示した物件を調べ始める。


 俺の選んだ物件は、インターネット使いたい放題、家具家電付き、バス・トイレ別で温水洗浄機付き、そしてロフトありで即日入居可能な物件である。


「はい、大丈夫ですね空いてますよ」


「じゃあ、すぐに契約して即日入居したいけど、大丈夫か?」


「えぇ、大丈夫ですが、下見なさらなくても大丈夫ですか?」


「お宅の所はどこも同じような部屋だろ? それに周りの状況はゲーゲルビューで確認しているから大丈夫だよ」


 既に決め打ちしているので下見の様に時間の掛かる事は不要である。それよりもさっさとカローラが心配なのである。


「分かりました。それではこちらの書類に目を通してから、契約書に必要事項を記入してもらえますか? 後は身分証明証の提示もお願いします」


「分かった、身分証は免許証だ。後はついでに電気とガス、水道の開設の書類ももらえるか?」


 会社のホームページにインフラの必要書類も準備していると書いてあったので、そちらも要求する。


「わかりました。こちらです」


 若い社員はご機嫌な様子で書類を渡してくる。社員にとってはウダウダごねずに速攻で物件を決めて下見も不要な客なので、俺が面倒臭さのない楽な客に見えたのであろう。


 俺は出された書類に目を通して、書類にカリカリと記入していく。


「それでは、契約金として今日から月末までと来月分、それと各種保険金やその他の費用を合わせて、先に15万円納めてもらえますか?」


「えっ?」


 俺は銀行引き落としだとばかり思っていて、契約時に金が必要だと調べてなかった。


「こちらが明細になります」


 そう言って明細を手渡してくる。なるほど…家賃の他に初期費用がこんなに掛かるのか… 先に金を作りにいってて本当に良かったよ…最初の9万だけじゃとてもじゃないが部屋を借りる事は出来なかったな…


 俺は財布を取り出すと、中から15万円を取り出した。


「銀行引き落としだと思っていたから吃驚したよ」


「はい、確かに15万お預かりいたしました。こちらが部屋のカードキーです。電気、水道に関してはこちらの書類に記載されている手順を行えばすぐに使う事が出来ますよ。ただガスに関してはガス会社の立ち合いのもと、開栓してもらわないといけないので、お客様からガス会社へご連絡願います」


「電気も水道も今日中に使えるのか、便利な時代になったものだ」


 そう言いながら、カードキーと書類を受け取る。


「ご契約有難うございました!!」


 俺は深々と頭を下げる若い社員を背に店を後にする。そして、店の外に出た後で再びガッツポーズをとる。


 よしっ!! これで活動拠点も確保できた!! 路頭に迷わずに済むぞ!!


 俺は鼻歌交じりに不動産屋を後にしたのであった。



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