第443話 先の場所より今夜の寝床
久々のワグドナルドを堪能した俺は、改めて今後の事を考える。
まっぱでここ現代日本に転移してきた俺達であるが、親切な現地人(DQN)の強力もあって、服といくらかの活動資金(残り9万)を手にする事が出来た。
後は、元の世界…俺にとってはこの現代日本が元の世界であるが、今となってはあの異世界が元の世界だ… その元の世界に戻る方法を探さなくてはならない。かと言って二三日で探して戻れる様なものとも思えない。
特にカローラはヴァンパイアだから日中は行動できない。俺一人で昼間に調査・探索をしなければならない。カローラを何処か一人置いておくわけにもいかないし、念の為に買っておいたアレが効果があるか分からないし、日傘を使わせる方法もあるが、買ってくるのを忘れたし目立ちすぎるな…
そうなると、ちゃんとした活動拠点を手に入れないといけないだろう。
しかし、活動拠点といってもホテルに泊まるのは、金が掛かり過ぎるし児ポ法うんぬんがある。となると、マンスリーなりウィークリーマンションを借りて住むのがベストか?
俺はマンスリーマンションを借りる要件を調べるためにスマホを取り出す。するとカローラが待ってましたと言わんばかりに身を乗り出してくる。
「イチロー兄さま! イチロー兄さま!」
「なんだよ、カローラ?」
「その魔法の板、確か三つありますよね? 私にも一つ使わせてくださいよっ!」
使い方の良く分かっていない子供にスマホを渡すのは本来危険であるが、どうせ俺のスマホではないので、構わないか… 付け加えて言うと、俺はこれから調べ物に集中したいので、カローラにはスマホに熱中してもらえるとありがたい。
「ほれ、一台渡してやるよ」
そう考えた俺はスマホの一台をカローラに渡してやる。
「わーい♪ イチロー兄さま、ありがとぅ~♪」
カローラはおもちゃを受け取った子供の様に喜んでスマホを弄り出す。
「あれ? 画面が止まったままで動かないんですけど、どうすればいいんですか?」
「あぁ、パスコードを入力しないと操作できないからな… 俺の使っているスマホは1919だったから、そのスマホは0114か5140を入力すれば動かせるぞ」
俺がそう答えると、カローラは画面に向き直るが、すぐに困った顔をして俺に向き直る。
「その数字が分からないんですけど…」
「えっ? 入力画面でてないのか?」
俺は首を突き出してカローラの持つスマホの画面を見てみる。するとちゃんとパスコードの入力画面が出ていた。
「ちゃんと入力画面が出ているじゃないか…ん? もしかして、カローラ…お前、字が読めないのか?」
「当り前じゃないですか~ イチロー兄さまは元々ここの人間だから読めて当然ですけど、私は違うんですよ?」
「そうだったな… 俺も向こうの世界に行った時は字が読めなくて苦労したからな…」
こいつは困ったな…これから長丁場になるんだからカローラに字を教えないといけないな… しかし、文字は読めないのに言葉は通じるってのはおかしな状況だよな… もし、俺よりももっと昔に日本人が転生して今の言葉を広めたというのなら、どうして文字まで同じものを広めてくれなかったんだろう… それとも別の原理で言葉が通じるようになっているのか?… 分からん…
「…今はとりあえず俺が入力しておくけど、その内カローラにも文字を教えてやらんといかんな…」
そんな感じに俺がパスコートをぽちぽちと押していると店内に蛍の光が流れ始め、先程の店員が二階に上がってくる。
「お客様、そろそろ閉店時間になりますので、御退席願えないでしょうか?」
「えっ? もうそんな時間?」
俺はパスコードを入力し終えたスマホを見る。すると時刻は10時59分を示していた。
「マジだ…もうこんな時間になっていたなんて…」
そんな訳で、俺達は店内から外に出て佇む。
「イチロー兄さま、これからどうするんですか? もしかして、そこらで野宿でもするんですか?」
俺と手を繋いだカローラが、不安げな顔で俺を見上げてくる。
「そうだな… 活動拠点の前に今日の寝床の事を先に考えるべきだったよな…」
「夜の間なら最悪一泊ぐらいなら野宿でも構わないですけど… 私は日が昇るとアレですので…」
「だよな… この際、ビジネスホテルにでも泊まるか? いや…もしかするとアレがいけるかもしれんな…」
俺はある事を思いつくと、再びスマホを取り出してポチポチと弄り始める。
「先程から何か行動する前にその魔法の板をポチポチとやってますけど、何をなさっているんですか? さっきも言ってましたけど私にも触らせてくださいよっ!」
カローラがおねだりをしてくる。
「調べ物をしてんだよ、ちょっと待ってろ… あったあった…えぇっと…」
俺はカローラのおねだりを無視してマジマジとスマホの検索内容を見る。
「あぁ…やっぱ最近は身分証明書が必要になるのか… どうすっぺ… たしかDQNから取り上げた財布の中に運転免許証があったけど…」
俺は財布を取り出して、DQN達の運転免許証を取り出す。
「うーん…一人は未成年だから使えないな…後二人は成人しているようだから使えそうだけど… 俺と似ているどころか全く顔が違うしな… 変装魔法でこの顔を作るか? でも使い続けるのは魔力を消費し続けるしな… 免許証の写真を書き換えるなんて技術は無いし… そうだ! 幻惑魔法で店員が確認するときだけ俺の顔にする事は出来ないか?」
俺は試しに免許証の一つに幻惑魔法をかけてDQNの写真を一時的に俺の写真に置き換えてみる。これなら魔力の消費も少ない。
「よしっ! なんとか出来た! これなら誤魔化せるし、魔力の消費も少ない! カローラ! どうだ? 俺の顔に見えるだろ?」
一応、念のために免許証の写真をカローラにも見せてみる。
「えっ!? イチロー兄さまは自分の顔をこんな感じに思っているんですか?」
自分自身では会心の出来だと思っていたのに、カローラの反応はそうではない。
「えっ!? 似てないのか?」
「いや、似てることは似てますし、イチロー兄さま本人だと分かりますが… イチロー兄さまはこんなキラキラの爽やかな青年って感じではなく、悪戯ばかりしてそうな悪ガキって感じの顔ですよ」
「…マジか… じゃあ…これならどうだ?」
そう言って俺はカローラに女を落とす時のキラキライケメン爽やかフェイスを装う。
「あぁ、なるほど! いつぞやの賢者時間の顔をイメージして作っていたんですね」
カローラは納得したようにポンと手を叩く。
「おまっ… 賢者時間って… 俺の黒歴史を掘り起こしてくれるなよ…」
俺はそう言いながら、免許証を財布の中に入れるとカローラに向き直る。
「さて、カローラ、今夜の寝床にこれから行くんだが、お前に更なる設定を与える」
「設定? 兄妹ってだけじゃだめなんですか?」
「あぁ、誰かに突っ込まれた時に詳しい設定が必要なんだ… だから、これから俺が説明する設定をよく聞いて、その通りに振舞うんだぞ」
「わ、分かりました…」
カローラは怪訝な顔をして答えた。
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