第439話 異世界でも現代日本でも強盗です
俺はズボンのベルトをキュッと締める。やはり現代日本製の方が品質は良いな。これで兎に角、マイSONをブラブラさせる事無く絵面的にも大丈夫になった。
「カローラ、そっちはどうだ?」
隅で着替えをするカローラに声を掛ける。
「うーん… 普段からズボンを履いてないので、違和感ありありですね… それに裾が余りまくりですし…」
ズボンを履いたようなので、視線をカローラに向けてみると、上にはDQNから奪ったブカブカのパーカーを来て、下には同じくDQNから奪ったズボンを江戸時代の殿中の様な感じで、ズボンの裾をかなり引きずった状態のカローラがいた。
袖が余りまくった萌え袖という着こなしはあるが、裾が余りまくった萌え裾というのは、有りか無しかで考えると… うん、これは無しだな…
「うーん、カローラ、ちょっとこっちにこい、裾を捲ってやる。普段でもよく転んでいるのにその裾じゃ歩けんだろ」
「ちょっと、ズボンの事は分からないのでお願いできますか? それと私がたまにコケるのは、時々元の姿だった時の感覚で動いてしまう時があるんですよ」
俺の所に来たカローラは俺の肩に掴まり片足を上げた所で、俺がその余りまくったズボンの裾を巻き上げてやる。まんま、子供の着付けをしているみたいだな… しかし、その時、俺はある事に気が付く。
「カローラ、お前、ちょっと背が伸びたか?」
「えぇ、カーバルでの悪魔戦の時や、私の城に魔獣が攻め込んできたときに、かなり魔素を補充しましたからね、それと… いつまでも幼女状態だとメイド達に幼児用椅子に座らされて、おまけに食事の時には涎掛けまでつけさせられますからね…」
「こっちは終わった、もう片方の足を上げろ… でも、最初の頃はさも当然の様に受け入れていたじゃないか」
カローラは裾上げの終わった足を降ろし、もう片方の足を上げる。
「いや…それは、イチロー様の子供たちも幼児用椅子に座って涎掛けを付けている所をみたら、私も冷静さを取り戻してこのままではいけないって思うようになったんですよ…」
仲間になった当初は幼女状態を満喫していたが、流石に俺の子供たちと同じとなると、カローラの自尊心やプライドが反応したのであろう… 俺としてはもっと早くに反応して、元のエロむっちむち状態に戻って欲しい所ではあるが…
「よし、これで大丈夫だろう、歩けるかどうか試してみろ」
俺が裾上げを終わらせて声を掛けると、カローラは確かめるようにちょこちょこ歩いたり、地面を踏み鳴らしたりする。
「一応はちゃんと歩けますね、まぁ、サイズが合わないので靴はありませんが…」
そう言って裸足の足をプラプラとさせる。
「移動する時は俺が抱き上げてやるから心配するな」
「それより、イチロー様」
カローラが何か言いたげに俺を見上げてくる。
「なんだよ、カローラ」
「私もズボンの事は良く分からないんですが… ズボンって…肌に直履きするものなのですか? 何だかパンツなしでズボンを履く事に違和感を感じて… イチロー様もズボンの直履きに違和感を感じないんですか?」
そう言ってカテーシーをするようにだぶだぶに余ったズボンの腿の所を摘まみ上げてみせる。
「いや…そういってもな…」
俺はそう言いながら服を脱がせて取り上げたDQN達を見る。DQN達は今、俺に服を取り上げられて、三人並んでパンツ一枚の姿で正座させている。
「最後の一枚は武士の情けってのもあるが…正直なところは他人の履いていたパンツだからな… なんかこう汚いじゃないか… お尻の所にうんこ付いているかも知れないじゃないか」
「つ、ついてねぇよ…そんなの…」
俺の言葉にDQNの一人が反応して、ぼそりと呟く。
「他にも変な病気とか持っているかも知れんしな… そう言う訳で、気持ち悪くて嫌だ」
こちらの方は身に覚えがあるのかDQN達は押し黙る。
「イチロー様って、冒険者としていた割には、変に綺麗好きというか…潔癖症ですよね… 城にいる時は毎日お風呂に入ってますし、ポチまで毎日洗っているじゃないですか」
「俺は身体動かすから汗かく事も多いし、ほら…その夜のお勤めもあるだろ? それにポチの事にしてもクリスみたく獣臭くなるのはいやじゃないか」
カローラにそう答えながら、俺はDQN達から捲き上げた財布の中を確認する。先程、遭遇する前の会話から察するにカツアゲをした後の様で、三人とも結構な金額が財布の中に入っている。
「うん、中々入っているじゃないか、コイツは俺が貰っておこう」
「そ、それっ! 俺の財布じゃないか! 返せよ!」
最後にナイフを持ってベネットの様に掛かってきたDQNが抗議の声を上げる。
「あ?」
しかし、俺が凄味を聞かせて睨みつけると、すごすごと押し黙る。何が俺の財布だよ、お前も他人をカツアゲして奪った金じゃないか…
「カツアゲしていいのは、カツアゲされる覚悟のある奴だけだ。お前も他人をカツアゲしてきたんだろ? だったら文句言うな」
俺がそういうと三人揃って俯き始める。そんなDQN達の姿を眺めながら、今度はDQN達から捲き上げたスマホを取り出す。
「LーPHONEか… 以前は7PLUSを使っていたけど… これは何番になるんだろ?」
そう言いながら、俺はスマホを操作しようとするが、指紋認証の画面が出て来て操作できない。
「おい」
俺はDQNに向き直って声を掛ける。
「は、はひぃ!」
「パスコード教えろ」
「………」
俺がそう尋ねると、DQNはビクリを肩を震わして押し黙る。
「聞こえなかったのか? もう一度言うぞ、パスコードを教えろ」
俺は凄味を聞かせてもう一度尋ねる。しかし、だらだらと冷や汗を流しながらDQN達は青い顔をして俯いたままである。スマホの中に相当マズイデータがあるのだろう。だが、そんなこと、俺には関係ない。
「パスコードを教えないつもりなら、さっきのナイフを使ってお前たちの指を切り落として指紋認証するしかないけどいいのか?」
俺はさらにDQN達に脅しをかける。すると、DQNたちはガタガタと震えながらひそひそ話を始める。
「ヤベーよ…ヤベーよっ!」
「アイツ… 指を切り落とすなんて言ってんぞ…」
「もしかしたら、マジもんのヤクザじゃねぇのか?…」
どうやら、俺をヤクザだと勘違いし始めたようだ。まぁ、その方が都合がいいだろ。更に脅して見よう。
「10…9…8…7…」
俺はカウントダウンをしながら先程巻き上げた折り畳みナイフを広げていく。
「ゼ、ゼ、0114! 0114!」
「5140! 5140ですっ!」
「1919…です…」
三人のDQNは素直に答える。
「そうか、素直なのは良い事だ」
そう言って、俺がスマホのパスコードを入力しようとした時、再び離れた場所から騒ぎ声が聞こえ始める。
「こっちです! こちらの方で変な騒ぎ声が!」
どうやら、俺達の騒ぎ声を聞きつけて誰かが警察に通報した様である。
「警察は流石にマズいな…」
俺は呟くように口にするとDQN達に向き直る。
「お前ら」
「はひぃ!」
「俺の事は警察に言うなよ… ここではお前たちだけがいた事にしろ… さもないと…」
俺はそう言ってDQN達のスマホを掲げる。
「このスマホの中身を公表するからな」
DQN達は無言で頷いて肯定する。
「カローラ!」
「はい! イチロー様」
だぶだぶの着こなし状態のカローラがすぐに俺の側に駆け寄ってくる。
「飛んで逃げるぞ」
俺はそう言うとカローラを抱きかかえて飛翔魔法を使う。そして、真上に飛び上がってビルの屋上に着地して、そのままビルの屋上に飛び移りながらその場を後にしたのであった。
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