第369話 俺の巨乳2
俺の体の傷は完治したので、足の痛みを気にすることなく、城内をずんずんと勢いよく歩いていく。
いやぁ~普通に歩くだけでこんなに気分がいいなんて思わなかった。それだけ前回の戦闘でのダメージがデカかったんだな。ミリーズが言うように死にかけていたから仕方のない事だ。
そんな城内を練り歩く俺に、すれ違うハニバルから合流して増えた蟻達がメイド姿で頭を下げていく。そんな光景に俺も偉くなったもんだと思いつつも、なんだか指名されることを待つ女たちがいっぱいのハーレムを歩いているような気分もするので、中々いい感じだ。
惜しむべきは、俺のマイSONが只今絶賛封印中なのと、見た目の変わりがない蟻メイドが多い所だ。くっそ、マイSONが特級呪物のように封印されていなければ、昏睡している間に給った精力を発散させる為に、蟻メイドや肉メイド達を使って女の子ビッフェで部屋にお持ち帰りをしている所なんだが…
そんな感じで、体力全快した暁の事を想定しながら、封印が解かれた時にどのメイドから頂こうかと、チラチラとメイドを見ながら歩いていると、ある蟻メイドに違和感を感じて、立ち止まる。
「どうされました? キング・イチロー様?」
俺に注目された蟻メイドは頭を上げて声を掛けてくる。
「あれ?…もしかして、アルファーか?」
他の蟻メイドとは異なり、微妙な表情をする所から俺が違和感を感じた蟻メイドは、アルファーではないかと思ったのだ。
「はい、そうです。アルファーで御座います。先程、厩に馬を預けて来て城内に来たところでございますが、なにか?」
目をぱちぱちとさせて驚いている俺に、アルファーは少し首を傾げて尋ねてくる。
「なにかって… アルファー… お前、その胸はどうしたんだよっ!!」
俺はそう言ってアルファーの胸を指差す。ハニバルで篭絡させた後、その後の会議で椅子の背もたれ代わりのヘッドレストとして頭を預けていた、あのたゆんたゆんの胸が… 俺のロマンと希望が命一杯詰まっていた胸が… ぺたんになっていたのである!!
「あぁ、この胸でございますか、乳房が縮んでしまったので、今の服装では、サイズが合わなくてだらしなく見えてしまいますね、すぐさま改めます」
「いやいやいや! だらしないとかそう言う事をいっているんじゃなくて! いや、それはそれで頭を下げた時に乳首がチラリと見えそうだからいいんだけど、そもそものあれだけあった大きな胸はどこに行ってしまったんだよっ!」
巨乳派の俺にとっては巨乳の女の子が貧乳になる事はあり得ない事態だ。一瞬、頭の中で、よくある天使の自分と悪魔の自分が言い合うように、巨乳派の俺と貧乳派の俺が論議を始める。
先ず、貧乳派の俺が『巨乳も貧乳も等しく愛でるのです…それがオッパイ好きというものですよ…』と講釈を垂れる。しかし、そこに巨乳派の俺が、どういうわけか特別勇者のぼっさんを連れて来て発言させる。
『大きな乳だから価値があるんだろうが! 無い乳で良ければ自分の乳を見てるわっ!』
ぼっさんのその一言で一瞬でケリがつき、貧乳派の俺は姿を消す。
うん、俺の中では巨乳が正義、巨乳はステータスだ!至上の価値だ! そう結論する。
「あぁ、乳房の体積の事ですね… これはキング・イチロー様が昏睡中、体力を消耗しておられたので、イチロー様に与え続けた結果でございます。もっと普段よりロイヤルミルクを貯めておけばこの様な無様な胸にならなかったのですが…申し訳ございません」
そう言ってアルファーが俺の理不尽な物言いに頭を下げる。
このアルファーの言動に、体の痛みは全て無くなった俺ではあるが、俺の良心に今までの痛みとは比べられない痛みがズキリと走る。
そう言えばそうだった… 先程の治療の際に、ミリーズが昏睡中に失血死や体力が尽きて死んでいてもおかしくなかったと言っていたが、それを繋ぎ止めていたのは、カローラの血と、そして目の前にいるアルファーのロイヤルミルクのお陰だったのだ…
アルファーはあのたゆんたゆんだった胸がぺたんこになるほど俺にロイヤルミルクを与え続けてくれたのだ… そんな命の恩人とも言えるアルファーに俺はなんて酷い事を…
俺は自分の愚かさに頭を抱え、恥ずかしくて消えてしまいたくなるが、すぐに考えを改める。今は悔いている場合ではなく、命の恩人であるアルファーに報いる事を最優先すべきだ!
「アルファー!!」
俺は頭を下げるアルファーの肩を両手で掴み、ガッチリと抱き締める。
「イ、イチロー様!?」
突然の抱擁にアルファーがうわっずった声を上げて動揺する。
「済まなかった…アルファー! 俺が…俺が…ちゃんとアルファーを元の姿に戻してやるかな!」
俺の言葉にアルファーが少し赤らめた顔を上げて俺を見る。
「イチロー様…」
アルファーが微笑を浮かべる。
「待ってろ! アルファー! すぐに俺が元に戻してやるかな!!」
俺はアルファーにそう告げると、アルファーを抱擁から解放して、城内の廊下をナルト走りで駆け出す!!
いきなり駆け出した俺にアルファーは呆然と俺を見送り、すれ違うメイド達は、上半身裸でナルト走りの俺に奇異な目を向ける。
そんなものに構ってはいられない! 今、目指すべきは厨房だっ!!
バタンッ!!
「あっ! 旦那!」
けたたましく開かれる扉の音に、カズオが俺の姿を見て声を上げる。
「旦那、傷は完治なされたんですね? じゃあ早速腹が減って何か召し上がりたいんでやすか?」
「いいからドーピングだ!!!」
骨付きあばら肉の仕込みをしていたカズオにそう告げる。
「はっ? ドーピング?」
カズオは訳が分からず首を傾げる。
「カズオも知っているとは思うが、アルファーが俺の体力を回復させる為に、あのたゆんたゆんだった胸がぺたんこになってしまった…」
俺は上半身裸でスタスタと厨房の奥のカズオの元へ歩いていく。
「そのアルファーの胸を戻す為には、高カロリー、高たんぱく、高脂質、高炭水化物、高糖分、高塩分…はいらないな… 以上それらが必要なんだ!!」
「へっ? 高カロリー? なんのことでやす?」
栄養学が一般化していないこの世界では、カズオには意味が分からない言葉があるだろう…
「つまりだ!!」
俺は上半身裸で決めポーズを取りながらカズオを指差す。
「アルファーの為に… 巨乳の為に… 栄養価の高い食べ物を作ってやってくれ!!!」
俺の声が厨房に響き、皆がしばし静まり返る。
「えっと…つまり、アルファーさんに御馳走を作れってことでいいでやすかね?」
「まぁ…平たく言えばそういうことだ。しかも大盛…いや特盛?…それでは足りない…そうだ! 日本昔ばなし盛だ!」
「日本昔ばなし盛?」
「そうだ! こんな感じで、たーんとくってけろぉ~って感じな盛り方だ!」
俺は口で言いながら(たーんとくってけろぉ~は声優さんの物真似をしながら)、そこらに置いてあった器をつかってどれぐらいの盛り方かを説明する。
「へ…へい…分かりやした… 準備しておきやす… 他に準備しておくものはないでやすか?」
カズオにそう尋ねられて、俺の命を救ってくれたのは、アルファーだけでなく、カローラの血の事も思い出す。
「そう言えば、カローラも血を出して俺の為に尽くしてくれたんだったよな… というわけで、カローラには血の気の多い料理を作って日本昔ばなし盛にしてやってくれ、シュリの骨付きあばら肉も同じ日本昔ばなし盛でな」
「わ、わかりやした、旦那… では、あっしは早速調理にとりかかりやす」
「おう! すまねぇな、カズオ! お前も、自分の食べたいものがあったら、日本昔ばなし盛で作っていいぞ」
俺がそう声を掛けるとカズオは苦笑いで応えた。
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