第366話 なにわろてんねん

 応接室での話し合いが終わった後、部屋の外に出た時に小蟻メイド達がやってくる。


「ノブツナ爺さん、とりあえず部屋に案内させるから夕食の時まで部屋で休んでいてくれ」


「分かった、イチローよ、お主はどうするのじゃ?」


「俺はロアンの様子を確認した後、俺自身の治療も受けるつもりだよ」


 そう言って包帯巻きになった体をアピールする。


「なるほど、其方がいっておった聖女の力で再生させるのじゃな?」


「あぁ、そうだ。でも、あまり聖女の力を頼りにすると腕が鈍ってしまいそうだがな」


 そう答えると、小蟻メイド達がノブツナ爺さんを取り囲む。


「おじ様、お部屋にご案内いたしますっ!」


「ささっ、こちらへどうぞっ!」


「あぁ…分かった…しかし、このような幼子の蟻族もおったのじゃのぅ…」 


 流石のノブツナ爺さんも子供の蟻メイド達に囲まれ、手を引かれて戸惑いを見せる。


「その子たちは、ボスの女王蟻の胎内にいた成長途中の子供たちなんだよ、可愛いだろ?」


 ノブツナ爺さんは孫娘たちでも見るように、目を細めて好々爺のような顔をしながら小蟻メイド達に案内されていき、俺はその背中を見守った。


「さて、俺の方はロアンの様子を見に行くか…」


 そう呟くと、俺はロアンが治療を受けている医務室へと足を向ける。とはいっても俺の体も完全な状態ではないので、スタスタと歩く事は出来ない。壁に手をつきながらとなる。


 そこで、これからミリーズの聖女の力で再生治療を受けるのだから、無理して歩いて傷口が開いても大丈夫かな?と思っていると、応札室から出てきたシュリが壁に手をついている側の脇腹に体を入れて俺を支え始め、カローラは空いている方の手を握って俺の姿勢を戻し始める。


「あるじ様、無茶をするでないぞ」


「イチロー様、聖女の力で再生できるからといって、そんな体で歩いてたらこけますよ」


 二人が以外にも俺の事を気遣ってくれるので少々驚いたが、ここは好意を素直に受け取っておくことにする。


「すまねぇな、二人とも」


「おとっつあん、それは言わない約束でしょ…」


 カローラがニヤニヤしながらそう言ってくる。


「カローラ…お前、それが言いたかっただけだろ…」


「流石、イチロー様、私の期待通りですよっ」


 そんな言葉を交わしながら医務室へと到着する。


「扉を開けますね」


 カローラが俺の代わりに医務室の扉を開けて、中に入る。すると、聖女の力による治療は終わったようで、ロアンが眠るベッドの側でミリーズが椅子に腰を降ろしていた。


「ミリーズ、ロアンの様子はどうだ?」


「あら! イチロー!」


 ミリーズは俺の声に気が付きこちらに向き直る。俺は二人に体を引かれながらミリーズの側まで進み、ベッドの上に横たわるロアンの姿を見る。


「先程、聖女の力で治療を終えたところよ、今は眠ったままだけどその内目を覚ますと思うわ」


「そうか、目覚めるんだな…廃人にならなくて良かった…」


 ロアンは馬車で俺の横で眠っていた時とは異なり、力が抜けた死人のような寝顔から、ベッドの心地よさで疲れをいやしている様な心地よい寝顔へと変わっていた。


 これならロアンも大丈夫そうだな。ぶっちゃけな所をいうと、馬車で死人の様な顔をして眠るロアンが隣にいる状態は、知り合いの死体と並んでいる様で気持ち悪い状態であった。俺もそのうちロアンの様に死体みたいになるのではないかと気味が悪かった。


「じゃあ、次はイチローの番ね」


 そう言ってミリーズが立ち上がる。


「ロアンの後で疲れてないか? ミリーズ」


「ロアンの場合は神経の再生だから、半身を失った人の治療に比べれば大したことはないわ、ささっ、隣のベッドに裸になって横になって」


 俺の気遣いの言葉にミリーズは元気そうに立ち上がって、側にある別のベッドに俺を追い立てる。しかし、半身を再生させるより神経の方が楽って…聖女の力は質量ベースなのか? ってか、あの時ミリーズがいたらマサムネの命も救う事が出来たんだろうな…


 俺はそう思いながら、ベルトを緩めてズボンを降ろす。


 ぷる~ん♪ ぽろ~ん♪


「ぷっ! ちょっとっ! えっ!? 何それっ! ぷぷぷっ!」


 ミリーズは俺がズボンを降ろすや否や、肩を震わせて笑い始める。


「…なにわろてんねん…」


「いや…だってそれ… いきなり、そんなものを見せられたら…誰でも… ぷぷぷっ」


 ミリーズは俺の股間にぶら下る、包帯だらけのマイSONを指差しながら、肩を震わせ涙目になりながら、必死に笑いを上げる事を堪えている。後ろでロアンが眠っているので声をあげるのを我慢しているのであろう… だが、必死で笑いを堪える為、ミリーズの顔は今まで見た事無いような変顔になっていた。


 くっそ…これがミリーズで無ければ、今頃、体を左右に高速に捻って、マイSONでビンタを食らわせている所なんだが…


 そんなミリーズの耳元にシュリとカローラが顔を寄せ、耳打ちを始める。恐らく、俺のマイSONがこんな哀れな姿になった経緯と状況を説明しているのであろう。


「…………… ………………………………………… ……………」


「えっ、そうだったの?」


「…… …………… …………………… ……………………?」


「…そうね…それもアリかもね…」


 二人からどんな説明を受けているのか分からないが、ミリーズが変顔と笑いを止めて、少し考え始める。


「どうした? ミリーズ」


 そんな悩んでいる様子のミリーズに声を掛ける。


「いや、何でもないわっ」


 ミリーズは顔を上げ、わたわたと何でもないと言わんばかりに手を振る。


「そうか、なら治療を頼めるか? 俺も早くマイSONをこんな状態から解放してやりたい」


 そう言って俺は自らベッドの上に横になる。


「ほれ…………?」


「や…た…って…………よ」


 シュリとカローラのひそひそ話が所々聞こえてくる。一体何話してんだよ…


「そうね…わかったわ!」


 ミリーズが決意したような声を上げる。そして、真顔で俺の顔を見る。


「イチロー…それでは治療を始めるわよ」


「あぁ…始めてくれ…」


 俺はミリーズにそう答えたのであった。



現在、pixivに上げている登場人物の人気の具合を見てみたのですが…

女性ではミケが第一位、男性ではカズオが第一位、全体でもカズオが第一位と言う状態でした…

もしかして、性ヒロイン…じゃなくて正ヒロインはカズオだと皆さん考えているのでしょうかw


まだ、見ていない方はご覧ください。

https://www.pixiv.net/users/12917968

 

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