第353話 無制限

「ワタクシ…ゴミヲ…ショブンスル…」



 敵はニヤけた様な顔でそう言うと、両手を俺達に向けて伸ばし、先程と同じように両手でそれぞれ散弾と砲弾を撃ち出す!



「オメガシールドッ!!!」



 ロアンが即座に反応して、再び散弾を防ぐ事の出来るシールドを張り巡らす。そして散弾の着弾により、前方の視界全体が、シールドと散弾との衝撃により閃光と轟音に包まれる。



 ギョォォン!!!



 そこへ、電信柱の様な砲弾もシールドに接触し、シールドが衝撃により、アクリル板に徐々に力を掛けていくように歪み、たわみ始める。



「流石に… 散弾の後でコイツまでは凌げないかっ!!」



 ロアンが額に汗を滲ませながら叫ぶ。



 パリンッ!!!



 砲弾の衝撃に限界を超えたシールド魔法が、ガラスの様に砕け散る。



「わしの出番じゃ!!!」



 シールド魔法が砕け散ると同時にノブツナ爺さんが前に進み出て、砲弾に刀の閃光を光らせる。



 ギュインッ!!!



 するとノブツナ爺さんは一刀のもとに砲弾を両断する。



「コシャク!! デモ!!」



 敵はそう言うと、顎を外したように口を大きく開き、その奥がまるで溶接する時の閃光の様に目がくらむ程眩しく輝き始める。



「くっ!!! オメガシールド!!!」



 敵の攻撃を前に、ロアンが再びシールドを張り巡らせる。だが、俺のうなじにぞわざわと鳥肌が立つような悪寒が走り、警告を発する。



「ダメだ!!! ロアン!!!」



 俺は咄嗟にロアンの体を抱えると、すぐさまその場を離れる。



「イチロー!! なんだ急にっ!!!」



 シールドを張ったままのロアンが俺に抗議の声をあげるが、次の瞬間、辺りを真っ白に染め上げるような閃光が広がり、敵の口から光線が放たれる。



 スンッ



 その光線はロアンの張ったあの強力なシールド魔法を、何もないかのように貫通し、先程までロアンの立っていた地面に命中する。


 すると、その地面は、一気に赤熱し始めてまるで巨大な風船の様に膨らみ始める。



 ドゴォォォォォォォン!!!!



 そして、轟音と共に、マグマのように溶解した地面をまき散らせながら爆発する。



「ロアンッ!!! シールドを上に向けろ!!! マグマの土砂降りが降って来るぞ!!! ノブツナ爺さんもシールドの下に入れ!!」



「ひぃっ!!」



 ロアンの俺の指示通り、即座にシールド魔法を傘にする為上に向け、その下にノブツナ爺さんも滑り込む。



「流石にあの光線も、この溶けた溶岩の雨も切る事はできぬな…」


「なんで、あの攻撃は僕のシールドを貫通するんだっ!?」


「あれはレーザー…って言っても分からないか… アレは恐ろしい程に光を集めた攻撃だっ! だから、魔法を防ぐシールドでも、物理的威力を防ぐシールドでも、光を透過する以上、防げないんだっ!!!」


 俺は自慢のシールドを安々と撃ち抜かれて困惑するロアンに、敵の放った攻撃を説明する。


「ふむ…イチローよ、その『れいざあ』というものは、当たった所があのように爆発するものなのか?」


「いや、本来は爆発するような物ではないが、きっと地面の中の水分が一気に熱せられて爆発的に蒸発した為だと思う… 俺の憶測だけど…」


 マグマだまりの様になった命中地点を眺めるノブツナ爺さんにその様に説明する。


「しかし、厄介じゃな…砲弾やばらまきの様な攻撃はわしとロアンで防ぐ事が出来るが、あの光線はどうにもならん…」


「いや、ノブツナ様、僕のシールドも何度も張れる様な物ではないので、そんなに受け止め続ける事は出来ません…」


 ノブツナ爺さんとロアンは、先程の水蒸気の様な物を出しながら、光線の排気熱を排出する敵を眺めながら眉を顰める。


「光線はあんな感じに、冷却時間が必要な様だな… あの砲弾にしても、魔法で作り出したものではなく、ただの質量弾だ。マサムネたち相手にどれ程撃ったか分からないが、その内弾切れになるはずだ…」


 特にあの電信柱のような砲弾は、腕の構造上、二本ぐらいしか収納出来ないはずだ…散弾の方も、砲弾の二分の一から三分の一の質量と考えれば、後精々2~4発も撃てば弾切れになるはず…


「ちょっと、イチロー!! アレを見てくれ!!」


 そんな事を考えていた俺を、ロアンが肩を掴み騒ぎ始める。俺はすぐに物思いから顔を上げ、ロアンが指差す敵の方法に視線を向ける。


 最初は敵が何をやっているのか意味が分からず、首を傾げそうになったが、意味が分かると衝撃が走った。


 敵の体の構造は、上半身は砲身のような腕を持ったエイリアンみたいな物であるが、その上半身がついている下半身というか本体は、まるで短い足の付いた鯨のようであり、その額部分に上半身がついている形になる。


 それだけなら何ら問題ないのだが、衝撃を受けた問題は、その鯨のような本体に大きな口がついており、今、その大きな口を使って、地面を貪り食っていることである。そして、上半身に繋がるむき出しの血管のような管が脈打ち、腕に何かを送り続けていたのだ。


「もしかして…あれって、地面を食って、それで弾を補充しているのか!?」


「…やはり、イチローにもそう見えたんだね…」


 目を見開いて驚く俺に、弾切れを期待していたロアンは眉を顰めてそう語る。


「という事は… 奴は弾切れなく、無制限に撃ってくるという事じゃな…」


 ノブツナ爺さんも険しい顔でそう述べる。


「畜生! あんな奴相手にどうしろって言うんだっ!!」


 俺は湧き上がる苛立ちを言葉にして吐き出す。


 よくよく考えれば、そんなすぐに弾切れになる様な奴に、俺達よりも戦い慣れているはずのマサムネたち特別勇者が束になって負けるはずがない。

 

いや、弾切れだと思って迂闊に近づいたところをやられたのかもしれんな…



「ワタクシ… ホジュウカンリョウ…」



 敵はそう語るとニヤついたように見える顔をこちらに向けたのであった。

 



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