第331話 真の敵の姿
駐屯地の上から姿を現した存在は、普通の魔族の姿ではなく、まるでSF映画に出てくるエイリアンの様な、どす黒く脈打つ表皮をして長く伸びた手足と大きく開いた口の異形の姿をしており、魔族自身も普通に地面に着地しようとして、偶然にも天幕を突き破ってこの駐屯地の真ん中に降りたのか、少し困惑した感じで、辺りをキョロキョロと見回す。
「シャッ!!! 行くぜぇぇぇ!!!!」
突然、駐屯地の中央に魔族が降り立ったことや、その異形の姿に、一瞬唖然とするものが多い中、流石はラッシュレクレスリーのリーダー狂犬ハワードは、両手の双剣を構えて瞬時に魔族に反応して襲い掛かる。
また、ラッシュレクレスリーのメンバーも即座に反応し、ハワードにはバフを、魔族にはデバフを掛ける。
「くらえぇぇぇ!!!! ラッシュ!! ラッシュ!! ラッシュゥゥゥゥ!!!!」
体当たりするような勢いで魔族に突進したハワードは、両手に握り締める双剣で、まるでタコ殴りにするように、猛烈な斬撃の嵐を魔族に食らわせる。
ガッ!ガッ!ガッ!ガッ!ガッ!ガッ!ガッ!ガッ!ガッ!
俺がカーバルで悪魔に食らわせた、SSRよりかは、一撃一撃の威力は小さいが、その回転速度は俺のSSRよりも高いであろう。流石は名うての勇者チームである。
「ラッシャイィィィィ!!!!」
「インエクスプロージョン!!!!」
ハワードが猛烈な斬撃を食らわせた後、ぴょんと後ろに飛びのくと、すかさずラッシュレクレスリーのメンバーが畳みかけるように爆縮の魔法を掛ける。
無数の光球が魔族の周りに浮かび、吸い込まれるように魔族に集まり、轟音と共に眩しい閃光を放つ!
「やったか!?」
「いや! 手ごだえがねぇ!!! 障壁みたいなので、俺の斬撃が届いてねぇ!!! 武器にアンチマジックコーティングを頼む!!!」
メンバーの言葉に狂犬ハワードが即座に答える。どうやら強力なシールド魔法のようなもので、斬撃の全てが魔族に届かなかったようだ。なので、ハワードはシールド魔法を貫通するアンチマジックコーティングを武器に掛けるように仲間に指示を飛ばす。
「ならば、魔獣事叩きのめすのみ!!!」
ハワードが下がった所に、すかさず復讐同盟の熊の様な大男、山脈のルドルフォヴナが、巨大な戦槌を振り上げて、魔族に襲い掛かる。
ゴォォォォォォォォンッ!!!!
山脈のルドルフォヴナと魔族を中心に球形の衝撃波が舞い、まるで除夜の鐘の音のような轟音が鳴り響く。
先程の、ラッシュレクレスリーの流れるような一連の動作も流石であるが、チームメンバーが異なっても魔族に隙を与えない、復讐同盟の連携も見事である。
「なっ!?」
通常、普通の敵であれば、先程の一撃で、木槌でトマトを叩き潰す様に、地面に赤い華を咲かすはずであったが、そうはならずに、山脈のルドルフォヴナが驚愕の声を漏らす。
地面には赤い華は咲かずに、衝撃のよるクレーターがあるのみ… 魔族は山脈のルドルフォヴナの一撃を片手で受け止めていたのである。
「ウッシャァァァァァァァ!!!!!」
ルドルフォヴナが反撃される危機であったが、そこへすかさず、双剣にアンチマジックコーティングを掛けた狂犬ハワードが再び突進ラッシュを仕掛ける。
「オラオラオラオラオラオラオラオラァァァァァァ!!!!!!!」
ギンッ!ギンッ!ギンッ!ギンッ!ギンッ!ギンッ!
先程のラッシュの鉄板を金づちで叩きつけるような音とは違い、今度は、鉄板に鉈を叩きつけるような鈍い金属音がけたたましく響く。
「オラオラオラオラオラオラオラオラァァァァァァ!!!!!!!」
ギンッ!ギンッ!ギンッ!ギンッ!ギンッ!ギンッ!
狂犬ハワードは先程よりも長く、双剣による斬撃の嵐を魔族に加えるが、敵は一向に細切れのような肉塊にはならない!
「っちくしょ!!!! めっちゃ硬てぇぇ!!!」
通常の倍の斬撃時間と、一向に敵を切り裂く事の出来ない状態に、狂犬ハワードは、驚愕に顔をゆがませ、疲労で脂汗をにじませる。
そんなハワードに、ハワードの斬撃が自分には効果が無いと分かった魔族は、ハワードに反撃を喰らわせる為に、大きく手を振り被る。
「させんっ!!」
シュッ! シュッ!
そこへ、復讐同盟の魔族キラーのデュドネが自慢の長弓で魔族の売り上げた腕の関節部分を撃ち抜く!!
売り上げた腕の関節部分を的確に討ち抜く腕も凄いが、ハワードの斬撃があまり効果が無いと知ると、即座に矢じりを貫通力の高い物に変えて撃つのは流石、復讐同盟のリーダーである。
魔族も矢で撃ち抜かれた腕をそのままハワードに振り下ろす訳には行かず、また自分の身体を傷つける事が出来た魔族キラーのデュドネに、頭部に幾つもある目を向ける。
「くるかっ!!」
「任せろ!!!」
デュドネに目を向ける魔族の前に、先程は遅れを取った山脈のルドルフォヴナ前に進む!! 自分の巨体をデュドネの盾として、後方からデュドネの射撃により敵を仕留める三段なのであろう。
そんなルドルフォヴナに魔族は大きく口を開き、何かを吐き出す。
「毒液如き! この山脈のルドルフォッ! うぉあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
魔族に何かを浴びせられたルドルフォヴナは、悲鳴を上げて地面に倒れ込む。何事かと思い、よく目を凝らしてルドルフォヴナを見てみると、毒液を浴びせられた身体の部分が、まるで雪や綿菓子に水でも掛けたように、解け落ちているのだ!!
「強酸!? しかも一瞬で身体を溶かすだと!?」
事態を把握した狂犬ハワードは即座に魔族から距離を取り、魔族キラーのデュドネもルドルフォヴナが再び毒液を浴びせさせられないように、軸線を逸らす様に、素早く、そして、魔族の回りを一定距離で回る様に走り出す。
ヤバイ!! マジでヤバい!! 俺が想定していた以上のヤバさの敵だ!! ただ単に強いってもんじゃねぇ!! 次元が違う!!
俺と同様に自体のヤバさを認識した、他の勇者メンバーは魔族のあの毒液を喰らわないように、すぐさま適切な間合いを取る。
その俺達の様子に、ようやく反撃の時間が来たと言わんばかりに、魔族は取り囲む俺達を見回していく。
そして、誰が魔族の最初の獲物になるのか、固唾を呑んでいた瞬間、特別勇者のトマリさんの声が響く。
「皆、動かないで!!!」
その声と同時に、魔獣からパス!パス!パス!と小さな音が響き、頭部と心臓のある胸部から小さな破片が舞い上がる。
魔獣は自分の身に何が起きたのか、確認しようと胸の痕跡に手を伸ばした瞬間、まるで糸の切れた人形の様に、そのままパタリと前のめりに倒れ込む。
一瞬で何がどうなったのか分からなかった俺達は、呆然と倒れ込んだ魔族を見つめる。
「どうやら、間に合ったようね…」
そこへ、ライフルを携えたトマリさんが駐屯地の端から姿を現した。
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