第300話 飽和攻撃
※近況に肝心なイラストをつけるのを忘れてました。ごめんなさい。
つけ直しましたので、できればご覧ください。
「喰らうがよい!!!」
シュリが収束ドラゴンブレスで魔獣を薙ぎ払う。しかし、魔獣もシュリのドラゴンブレスに慣れてきたのか、ドラゴンブレスの動きを呼んで、シュリの一度に対応しきれない方角から連携を組んで近寄り、ドラゴン状態のシュリに群がっていく。
「あぁ!!! 鬱陶しいのじゃ!!!」
魔獣に張り付かれたシュリは、魔獣を振り落とす為に、ドラゴンブレスを止めて、身体に張り付いた魔獣を振り払っていく。
しかし、ドラゴンブレスと止めた事により、更にそちらの方角から魔獣がシュリに近づき、また既に張り付いていた魔獣は、シュリの首元に噛みつくために、シュリの身体を駆け上っていく。
「こいつら! いつぞやの蟻の様じゃな!!!」
シュリは一度飛び跳ねると、ドラゴン化を止めて人化して、体積と表面積を減らして張り付いた魔獣を一気に払い落す。
しかし、人化したシュリに気が付いた魔獣の一匹が大きな口を開けてシュリに襲い掛かる!!
「シュリ!!!!」
俺は思わず声を上げる。
「ドラゴンを舐めるなよ!!!」
シュリはそう叫ぶと、まるでモーフィングの様に大きな口を広げて、逆に魔獣の後ろ足付近まで加え込む。
ブッチュ!!!
噛み千切られる音が響くと、外に出ていた後ろ足部分だけが、落下していく。
そんなシュリを俺は飛行魔法で、獲物を掴み上げる鷹のように空中で拾い上げて、組体操の様に、積み上がってシュリを狙ってくる魔獣に振り返り、掌から弾丸を魔獣目掛けて、バルカンの様に撃ち込んでいく。
以前、蟻の群れに使っていた時は、一々、腰の収納袋から弾を取り出していたが、今では指で輪を作って収納魔法からいくらでも撃ちたい放題の無制限状態である。
「大丈夫か? シュリ!」
駆け上ってくる魔獣を一掃したので、脇に抱えるシュリに声を掛ける。
「ぺっ… ひさびさに生の獣を食うたが、カズオやあるじ様の料理になれるとマズくて食えたものではないのぅ…」
「この戦いが終わったら、カズオに口直しの料理でも作ってもらえ」
大丈夫だと分かった俺は、シュリを魔獣の群れに爆弾の様に投下していく、シュリもそれに答えるように、ドラゴン化して、魔獣の群れを踏みつぶしていく。
俺は弾丸で魔獣をハチの巣にしながら、次にカローラの様子を確認する。
カローラも魔眼を使えない状態で、あの闇の腕を使って検討しているが、こちらも魔獣が慣れてきたようで、腕の本数と引き戻すライムラグを覚えた魔獣は、その隙をついて、カローラ本体に襲い掛かろうとしている。
だが、カローラが乗っているポチの俊敏で巧みな移動によって、上手く魔獣を捌いている様だ。こうしてみるとあの二人は相性がいい様だ。
しかし、最初に想定していた以上に今は悪い状況だ。
最初はある程度の数を殺せば、獣の魔獣は戦意を失い逃げ帰ると思っていたが、カローラの魔眼の件で、既に魔獣たちが誰かに魅了されて操られている状態である事が分かった。そうなると、奴らは戦意喪失して撤退することなく、最後の一匹まで戦ってくるはずだ。
後、俺達の陽動が上手く効いていて、城に向かった魔獣はアソシエ達や蟻メイド達で対処できる数しかいないが、四方八方から対処しきれない飽和攻撃をされたら、一気に城の中の住民に被害が出て城が陥落する。
「このまま最後まで、城の存在を忘れていてくれたらいいが…」
しかし、俺のそんな楽観的な願いは空しく、魔獣の群れに変化が訪れる。俺やシュリ・カローラに敵わないと持った魔獣たちは幾つもの別動隊を構成して、大回りしながら城に向かいつつあるのだ。
「ヤベッ! 奴ら、城の存在を思い出しやがった!!!」
すぐさま防衛の為に城に駆けつけたいが、こちらこちらで手一杯である。もし、ここを放棄して城に駆けつけても、こちらの群れが城に向かい始める!
そんな時、城から魔法が放たれて、魔獣たちの動きがピタリと止まる。魔獣たちが駆け寄る大地が氷原となり、足の裏の皮が氷に張り付いて動けなくなっているのだ。そして、その動けなくなった、魔獣の腹部を突き破る様に次々と氷の柱が伸びていく。
アソシエの得意技であるアイシクルフィールドである。
流石は元勇者パーティーの一員だなと感心していたのも束の間、魔獣たちは、その仲間の死体を踏み台に進攻を続ける。これでは足の裏を氷に張りつかせて足止めする事はできない!!
アソシエは必死に氷柱を撃ち込み対処しているが、単体対象魔法のアイシクルランスでは、飽和攻撃を仕掛ける魔獣に対処しきれない!!
「くっそ!!! 効率は悪いが仕方がねぇ!!! サンダーストォォォーム!!!」
俺は単体でサンダーストームを使い、今対処している群れを薙ぎ払い、城の救援に駆けつけようとする。
「間に合えぇぇ!!!!」
俺は猛烈な速度で城に向かって飛翔するが、そんな俺の目に映ったのは、アソシエとは別方向から城の城壁を駆け上る魔獣の集団の姿である!!!
いくら城の防衛にアソシエ達や蟻メイド達がついているといっても、遠距離全体魔法を使えるのはアソシエぐらいで、ミリーズもネイシュも大した遠距離攻撃は持っていない、蟻メイドに至っては近接戦特化のようなものなので、数にものを言わせる飽和攻撃には対処しきれない!
「くっそぉぉぉぉ!!!!」
俺は焼け石に水のようなものだが、城に向かいながら、弾丸を撃ち続ける。しかし、そんな俺や蟻メイドの抵抗空しく、何匹かの魔獣が蟻メイドの脇をすり抜け城内へと侵入してしまう!!!
「きゃぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
魔獣が侵入した事により、城内から住民の悲鳴が響き渡る!!!
だが、次の瞬間、城内から魔力の波動が、まるで水の波紋の様に広がる。
「キャイン!!!」
すると、城壁に張り付いていた魔獣たちが、一斉に脅えた犬の様な泣き声をあげて、城壁から剥がれ落ちていく。
「なんだ!? 一体何が起きたんだ!?」
原因不明の状況に俺は少し困惑するが、とりあえず城が無事なようで納得する。
「とりあえず、城に合流しないと!!!」
俺は急ぎ城に向かって飛翔し続けるが、その城に向かう途中の地面に異変を感じて、立ち止まる。
「なっなんだ!?」
止まって空中から地面を確認すると、至る所で地面がもこもこと盛り上がり、無数の何者かが、地下で蠢いていることが分かる。
「ちょっと待て!!! ただでさえ魔獣の群れに対処しきれていないのに、まだ地中からも敵が出てくるのかよ!!!!」
俺は背中に冷や汗が流れるのを感じる。
しかも、地下にもぞもぞと蠢いているのは俺の増しただけは無く、見渡す限りの地面が地下で何者かが蠢いているのが見えた。
「ヤバい!!! ヤバすぎる!!! もうこんなの絶対に対処しきれないぞ!!!」
そんな時、地面の下で蠢くモノの一つが地上へと頭を出した。
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