第290話 エヘ顔ダブルピース

※昨日は誕生日のいいね・ブクマしてくださった方、ありがとうございます~


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「おっ! おっ! おぉぉぉぉ!!!!」


 俺はとあるメイドの周りをくるくると回って、舐めるようにその姿を眺めながら、感嘆の声をあげる。


「どうですか? イチロー兄さん… 会心の出来だと思います」


 ディートは自慢気にドヤ顔しながらニヤリと微笑む。


「マジで、会心の出来だな!! 生きている人間と変わりないぞ! すげー!! ちょっと触ってもいいか?」


 俺がそう尋ねると、メイドははにかんでオドオドしながら俺に手を差し伸ばす。俺はその差し伸ばされた手の指先に触れると、メイドはピクリと肩を震わせるが、俺の接触を受け入れる。


 白魚の様に白くて細く、か弱い指を撫でるように触れていき、その小さな手を包み込むように握り締める。冷たく体温を感じない所はあるが、少女特有のきめ細かく張りのある肌に、男の様にゴツゴツしていない、柔らかな肉の感触…


 もっと感触を確かめたい…


 そう思った俺は、手をメイドの手から前腕へと這わしていく。少女メイドは俺の愛撫似た接触に顔を赤面させて、目をぎゅっと閉じで、他人に障られる感触をぐっと堪えている。


 おぉ~ 可愛いし、なんだかエロいな…


そんな少女の姿を眺めながら、少女の前腕を握って見る。すると、直接伝わるしっとり張りのある肌の感触の下に、適度な皮下脂肪の柔らかい感触、そしてその奥に少女特有のか細い筋繊維の程よい硬さを感じる。

 

「ワンダホォォォォォォ!! 素晴らしい!!! 前回のこんにゃくみたいなのとは大違いだ!! 人間の腕とかわりねぇ!!」


「フフフ…そうでしょ、自分の腕を何回掴んだことか…まぁ、最後には女の方の感触にしなくてはいけないので、マリスティーヌさんやフィッツさんに頼んで、変な目で見られながら前腕を触らせてもらいましたけどね…」


 ディートは、ドヤ顔半分、自嘲半分の表情で語る。


 さて、今何をしているのかというと、ディート工業に開発を頼んでいた、骨メイド受肉化計画(俺にとってはスケルトン式ラブドール開発計画だが)が完成したとの知らせを受け、ディートの部屋までその完成品を見に来たわけである。


 開発の試験体となっていた骨メイドのヤヨイは、以前はただの少女サイズのメイド服を来たスケルトンでしかなかったが、今の姿は明るい金髪で大きなポニーテールを作り、前髪は左右真ん中とまるでバナナの様な房になっていて、クリクリとした大きな髪と同じの黄色い瞳は、どこから見ても完全無欠の美少女メイドである。


 しかも、凄いのは、ただスケルトンに肉を付けただけではなく、ちゃんとその肉が筋肉として稼働している様なのである。なので俺はある事を指示してみる。


「ヤヨイ、ちょっと、スマイルしてみてくれ」


 それがそう指示すると、ヤヨイははにかみながら、ダブルピースをしながらエへっとスマイルを作る。


「すんばらすぃぃぃぃぃぃ! エクセレェェェェェントッ!!!!」


 俺はただスマイルしてみてくれと継げたはずなのに、エへ顔ダブルピースをかましてくるとは… ヤヨイ…恐ろしくあざとい可愛さの子… 思わず拍手してしまった…


「じゃあ、次は何か喋って見てくれ」


 俺はヤヨイに目線を合わせてその顔を覗き込むようにお願いする。


「………」


 ヤヨイは恥ずかしさでプルプルと震えながらゆっくりと口を開くが、声の出し方が分からないような感じでまだ声は出ない。


 一度目で声を出せなかったヤヨイは息を飲んで再び口を開き、力を込める。


「あ」


「おぉ! 結構かわいい声じゃなイカ! もっと喋れないのか?」


「今はちょっと難しいですね」


 ヤヨイではなく、後ろで俺達の様子を見ていたディートが声を掛けてくる。


「そうなのか? でも、まぁ、スゲーな!! ディート!! よくここまで出来たな!!」


「えぇ… 以前、イチロー兄さんから、人体を再現するには皮膚、皮下脂肪、筋肉が必要だと聞いて、どうせならちゃんと筋肉も動かせるようにしようと考えたんですよ。ただ骨につけるだけなら、人間にとっては被り物をするのと代わりありませんからね」


「スゲーな、どうやってやったんだ?」


「まず、ヤヨイさんに純粋培養した魔素の結晶を暫く身に着けてもらい、魔素をヤヨイさんの波長に染めてもらったんですよ。その後、その魔素の結晶を魔力を流せば収縮する特殊な素材に練り込んで、疑似筋肉のような物を作り上げたんですよ」


 そう言ってディートは見本で作っていた自分の魔素を流し込んだ疑似筋肉の魔力を流すと、その疑似筋肉がピクリと動く。


「おぉ! 筋肉だけだとちょっと気持ち悪いけどスゲー!!」


「この様に魔力を流せば動かせるようになりますが、普通の人間と同じ日常生活を送るには、相当な訓練が必要ですね」


「でも、今のヤヨイは、ちゃんと立っているしダブルピースもしてくれたぞ?」


 そういって、再びヤヨイに視線を向ける。するとはにかみながら、手の感触を確かめるように手を開いたり閉じたりしている。


「それは元々のスケルトンの身体なので、骨で稼働していたためですね、だから今は身体の動きを骨が補助してくれている形です。そんな訳で、骨に関わるところはある程度の日常生活レベルの動作はできますが、骨の関わらない、先程の発声などはまだまだ訓練が必要です」


「なるほど、今は元々の骨の力で動いているって訳か、でも表情はよく出ているな」


「えぇ、顔から最初に作りましたからね、その間、ずっと鏡を見て表情の練習をされていたんですよ」


「それで、エへ顔スマイルをしてくれた訳か」


 俺はヤヨイの姿にニヤニヤしながらうんうんと頷く。


「これで、後はヤヨイさんの努力次第で生前と同じような生活を送ることが出来ますね… まぁ、まだ食べ物を味わったり、消化したりする事は出来ませんが、それ以外の感覚器官は出来るだけ再現していますから」


 まぁ、生前は兎も角、スケルトンの時は飯は食わんから、まだ再現は難しいのかな?


「じゃあ、ヤヨイ、早速、城内を散歩でもして身体を思い通り動かせるように訓練するか?」


 ヤヨイに笑顔で尋ねる。


「…は…い…」


 するとヤヨイはたどたどしい口調で尋ねて、歩き出そうと一歩踏み出すと、まだ慣れていない為か前のめりでよろめいてしまう。


「おっと、あぶない!!」


 地面に転んでしまいそうなヤヨイを咄嗟に受け止めて支えてやる。


「うぅ…」


「うーん、仕方ないか…俺が支えてやるから一緒に歩こうか?」


 そういって、ヤヨイが掴まりやすいように腕を差し出す。すると最初はキョトンとした瞳で俺を見上げていたが、えへへと笑みを浮かべて、俺の腕にカップル組をしてくる。


「じゃあ、一緒に城内を一回りだ!」


 そして、俺とヤヨイはカップルの様に腕を組みながら、城内を一周して、俺の部屋へと向かったのであった。




 

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