第231話 俺の巨乳

 ディートに農業に使う為のゴーレムの開発を相談してから数日が経った。それで開発状況はどうなっているかというと、金属加工を行う事が出来る、あのオネエドワーフのビアンを加えて進めている。


 あのビアンとディートを一緒にさせる事に心配していたが、その事を釘をさす為、ビアンに告げた所、『子供に手を出すほど落ちぶれてはいないわ、それに私はこう見えても一途なのよ』と言いながら、俺に舌なめずりしながら流し目をしてきた…


 うん、ディートは大丈夫そうだ…ディートは…


 ところで、高い所から下を見下ろして、股間の玉がヒュンとする事を『タマヒュン』というが、俺の場合はビアンと出会う度に、ケツの穴が締まる感覚の『ケツギュン』現象が良く起きる…一般名詞化はしたくないな…


 

 畑の方は、シュリが俺の計画通りに耕していくのは無理だと言って来たので、自分のペースでやってくれと伝えた所、シュリは根が真面目なのか、別に手を抜く事無く結構なペースで畑づくりをしてくれている。有難い事だ。



 俺の方はというと、農業と並行して、畜産に向けた準備を行っていた。といっても特に難しい事ではなく、現状の設備の確認と、今後の施設の増築に向けた場所の下見である。


 現状、城内にはカローラ一人分の卵や牛乳を賄うための鶏や牛がいるが、本当に小規模である。カローラの分の施設はこのまま残しておいて良いが、全員そろった時に必要な頭数である鶏3000羽、豚146頭、牛25.2頭を収める施設は到底城内には収められない。なので城の外の場所で、近すぎず遠すぎない場所を選んだ。


 最初は大工仕事ぐらい自分の力でやるかと考えたが、なんせ鶏3000羽を飼う施設である。設計する前に速攻で諦めて、素直に大工を大工を雇う事に決めた。


 大工を雇う事を決めると、他にも雇わないといけない人材が思い浮かんでくる。畜産を行う為の畜産や酪農経験者、家畜を解体して肉にする事はカズオや俺でも出来るが、それだけに手を取られることになるのでと殺解体の出来る者、牛乳をバターやチーズに加工する職人など、ざっと今思いつくのはそれだけである。また思いついたらその都度人を雇うか…


 そんな事を考えながら、朝食を摂る為に食堂に向かい、ゴーレム開発に携わっているディートやビアンに声を掛けて、ついでの買出しに必要な物がないか尋ねてみた。


「口で言っても分からないと思うし、実際に自分の目で確かめないと分からないから、私もついていくわ」


 と、ビアンが答える。


「それなら、僕も色々と見て回りたいので、ついていきます」


 ディートもそう答えた。するとその話を聞いていたカズオが自分も用事があるのか、俺に近づいて来て声をかけてくる。


「旦那、あっしもお願いがございやして…」


「なんだ? 何が欲しいんだ?」


「ちょっと、小麦粉とバターが無くなりそうなので、大量に仕入れて来てもらえないかと…」


 カズオが困り顔をして頼んでくる。


「あれ? 小麦粉って前に大量に買い込んでいただろ? もうそんなに消費したのか? もしかして鼠にやられたとか?」


「いえいえ、ここにはミケさんやハバナさんがおられやすので、鼠なんてわきやしやせん、ちょっとここ最近、シュリの姉さんが毎日、一人で小麦粉一袋分のパンを召し上がるので…」


「えっ!? シュリがそんなに食ってのか?」


「へい…よく夜の仕込みをしている時に、腹が減ったから何か食わせてくれと仰るので…」


 俺は驚いて目を丸くしながら声をあげたものの、よくよく考えればドラゴン状態で毎日トラクター代わりに畑を耕していたら、小麦一袋ぐらい食ってもおかしくはないか… しかし、愛玩動物だと思っていたミケとハバナがちゃんと鼠捕りという仕事をしていたのも驚きだ…


 とりあえず、シュリの件については協力してもらっているので、感謝することはあっても飯の食い過ぎで怒るつもりは無い。この件については何も言わない事にしよう…


「分かった、今日ついでに小麦粉とバターを買ってくる、他のも欲しい物があったら何かに書き止めといてくれ」


 カズオにそう返していると、当の本人であるシュリが食堂に姿を現す。


「おはよう、シュリ、今日は街に買出しに行くんだが、お前も欲しい物は…ん?」


 俺は姿を見せたシュリに違和感を感じて、言葉が詰まる。


「おはよう、あるじ様、どうしたのじゃ?ハトが豆鉄砲でも喰らった顔をして」


 シュリはそんな俺に首を傾げる。


 シュリの姿は、最近温かくなったので、俺がカーバルで買ってやった魔熱式ベストを脱いでいるので、以前と比べて少し薄着姿になっている。それだけなら、特に違和感も問題もないのだが… 


 問題は無いのだ… というか、ぺたんとしているというか、つるんとしているというか… シュリは着やせするタイプではない。カーバルにいた時は爺さんの骨付きあばら肉攻めで、下着姿というか全裸でもむっちりした感じだった… 


 なのに…ないのだ… あの巨乳が消えてなくなっているのだ… シュリはタッパは低いが、爺さんのお陰で、乳首は無くても漸く俺好みの乳の大きさになっていたというのに… 出会った時のほんのりふくらみがある程度に戻ってしまっていた!


「おい!! どうしたんだよっ! シュリ!!」


 俺は思わず大声をあげる。


「なっ! なんじゃ! あるじ様っ! 急にどうしたのじゃ!?」


 俺の突然の大声にシュリがたじろぐ。


「シュリ! お前、あの俺の巨乳をどこへやっちまったんだよ!! 男のロマンと夢がいっぱい詰まったあの俺の巨乳をどうしちまったんだよっ!!」


 詰め物ではないのだから、どこかに落としたという事はありえない。乳首は無かったが生乳を見た俺が言うのだから間違いない!


「えっ!? いや… な、なんでわらわの胸をあるじ様が『俺の』というのか分らんが、連日の過酷な作業のせいで、胸に貯めておいた分の栄養はつこうてしもたわ」


「くっそ! なんてそんな馬鹿な事を!!」


 俺は咽び泣きながらテーブルを叩きつける。


 歩くだけでたゆんたゆんと揺れる俺の巨乳… 脇から横乳が見えた時には思わず揉みしだきたくなるような俺の巨乳… そんな俺の巨乳をたかが農作業ごときで、ラクダのコブのように使ってしまうとは… なんてことをしてくれたんだ…


「えっと、何があったの?」


 騒ぎを聞きつけたミリーズが食堂に姿を現す。


「ミリーズ殿、それがじゃのぅ…あるじ様がわらわの胸を見て…」


 シュリがミリーズに事情を説明する。


「そう…そういうことだったの…」


「そうじゃ…わらわも意味が分らん…」


 シュリから事情を聞いたミリーズは憂いた顔をして、俺に近づいてくる。


「イチロー…」


「ミ、ミリーズっ!!」


 慈悲の女神のような顔をするミリーズの胸元に俺は飛び込む。


 巨乳を失った悲しみは、巨乳でしか癒すことが出来ないからだ。


「シュリちゃんから、事情は聞いたわ…」


「俺の巨乳が…俺の巨乳が消えてしまったんだっ!」


 俺はそう声を上げながら、ミリーズの巨乳の感触を味わうように顔を動かす。


「イチローは大きな胸が好きですからね…でも…」


 ミリーズが突然強化魔法を使って、逃れられないように俺をガッチリと抱き締める。


「えっ!?」


 俺は驚いて顔を上げようとするが、ミリーズの巨乳と強化魔法で締め上げられた腕から動く事が出来ない!


「あんな小さな女の子のおっぱいで欲情しちゃだめでしょ? それにイチローは三ツ星勇者であり、城主であり、貴族になるのでしょ? それなのに公衆の前であんな恥ずかしい事いっちゃダメでしょ?」


 あ…これアカン奴だ… ミリーズは普段はおっとりとしていて頼みごとの断れない性格であるが、一定の常識を破るとお説教モードになる。


「いや、たまたま口が滑っただけで…」


 俺はミリーズの巨乳に挟まれながら必死に言い訳する。


「これからはたまたまでもダメなの…久しぶりにお説教と懺悔の時間にしましょうか…」


「いや…お、俺はこれから街に買出しに行かないとダメで…」


「大丈夫、街は逃げたりしないから…」


 そうして、俺はミリーズの部屋へと引きずられて言って、みっちりと絞られる事となった…


 くっそ…いつもなら乳を搾るのは俺の方なのに……



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