第76話 どういう意味で食べるのか?
「わう!」
ポチは俺の前にダークエルフの女をおいて、褒めて!と言わんばかりに尻尾を振っている。
「これ、一体どうしたんだよ?」
俺は思った事を口に漏らす。
「林の中で警戒していたから、捕まえてきた…」
「うぉっ ポチが喋ったと思ったら、ミケかよ」
ポチの背にはお腹を空かせてぐったりとしたミケがいる。
「一応、何かの役に立つと思って、ポチさんに頼んで捕まてもらったの」
「おぅ… そうか… 一応、貰っておくが、ポチ、今度は獲物を捕ってきてくれ」
「わう!」
ポチは答えるように吠えると、再び林の奥目掛けて走り出す。
「私、お腹すいているんですけど~」
愚痴を声を漏らすミケをそのままにポチは林の中へと消えて行った。
さて、敵の偵察を捕まえてもらうのは嬉しいが、実際の所、今渡されてもなぁ~ってのが俺の感想である。
とりあえず、俺はうつ伏せのダークエルフの女を仰向けにひっくり返して、そのご尊顔を拝謁する。
「おぉ、いい女!」
整った顔立ちに切れ長の瞳、長い睫毛。黒髪のサラサラストレートに、肌はダークエルフだから黒と言う訳でなく、日に焼けて褐色と言った方がいいだろう。と言っても、服装はよくあるビキニアーマーや太もも丸出しの短いスカートではなく、なんか色気のない、緑色の作業着みたいなものを来ている。
まぁ、実際、林の中や森の中であんな恰好をしていたら、体中擦り傷だらけになるからな… これが当然普通の姿であろう。
「さて、この女をお持ち帰りぃ~しなくちゃいかんから、縛っておくか…」
薪を束ねるために持ってきたロープがこんな所で役に立つとは… その代わり、薪はあまり持って帰れなくなったが…
俺はロープで両手を後ろでに縛り、その両手と身体を胸を強調するように縛る。そして、あまった部分で足を縛り、ダークエルフの女を背中向けに肩掛けバックの様に担げるように縛り上げる。
「今は服の上から縛っているけど、これ、裸でやったら楽しそうだな… ちょっとSMで縛りする奴の気持ちが分かってきた…」
という感じに良からぬ事を考えながら、片脇にダークエルフ、もう片脇に薪を抱えて、馬車に戻る。
俺が馬車に帰り着くと同時にシュリも柴刈りから帰ってきた様子であった。
「おぉ、主様も帰って来たのか、わらわも帰って来たところじゃ、よっこいしょっと、ふぅ~疲れたわい」
シュリはよっこいしょっと言いながら、背中の背負子を降ろし、首にかけていたタオルで汗を拭う。
「おい、シュリ、お前は元々、ババ臭い喋り方なんだから、よっこいしょっととか止めろ、本当にババアに見えてくるぞ」
「注文が多いのぅ~ それより、主様よ、小脇に抱えておるのはなんじゃ?」
シュリが俺が小脇に抱えるダークエルフに目を留める。
「あぁ、ダークエルフだ」
俺はゆっくりとダークエルフを降ろす。
「旦那ぁ~ お帰りごぜいやす」
カズオが俺の声を聞きつけて、馬車の中から出てくる。
「おぉ、帰ったぞカズオ」
俺はそう言って、薪もダークエルフの隣に降ろす。
「えっ? 旦那、それはなんでやすか?」
「いや、ダークエルフだが…」
俺はカズオにも答えるが、カズオは強張った顔をする。
「どうした? カズオ」
「いや、ちょっと…人型の者を捌くのは勘弁させて頂きたいと…」
カズオはドン引きで答える。
「別に食うために捕まえてきたんじゃねぇよ!」
「となると…あっあれか! 主様の夜食というわけじゃな?」
シュリがそう声を上げる。
「あぁ、なるほど、そういう事でやすね… 旦那が性欲を満たすために捕ってくるのはいいんでやすが、その前に、あっしらの食欲を満たすものを…」
「そんなつもりで持ち帰ったんじゃねぇよ!! たまたま、林の中で出会ったポチが持ってきただけだ!!」
くっそ! どいつもこいつも俺が性欲だけで生きているように思いやがって…
「では、情報を聞き出した後、そのままリリースしてもいいのじゃな?」
「…いや、それはちょっと待て…」
えぇ、性欲で生きてますよ…そう言えばいいんだろ…畜生!
シュリはニヤニヤとしながら、ババ臭い野良仕事装備を外していく。
「まぁ、ちゃんと食う肉に関してはポチに捕ってくるように言っているから、そのうちもってくるだろう」
「そうでやすか… 助かりました、エルフをおろせと言われた日にはどうしようかと… あっしは中でパンを焼いてきますので…」
そう言ってカズオは再び馬車の中に戻っていき、外には俺とシュリが残される。
「よし、シュリ、俺はポチが捕って来た獲物を解体するための吊り下げる骨組み作るから、お前は、俺が持ち帰った薪を削って燻製用のチップにしろ」
「チップにしろと言われてもどうするのじゃ? 鉈で削るのか?」
シュリが首を傾げて聞いてくる。
「俺のナイフを貸してやるから、それで削っていけ。手を切るなよ? ちゃんと刃を外側に向けて削っていけよ」
俺はそうシュリに言いきたせてナイフを渡す。
「わらわを子供扱いするでない! もう、まったく、わらわをババア扱いしたり子供扱いしたり… 主様はわらわを何だと思っておるのじゃ…」
シュリは唇を尖らせながら、腰を降ろし、薪を削って燻製用のウッドチップを作っていく。
俺は何だと思っていると言われて、ロリババアと考えながら、馬車の外壁に掛けてある棒を三本取り出し、その頭の辺りを縛って、三脚のように立てる。後は、その足の部分に金属のペグを打ち込んで紐で結んで固定する。
「帰って来たよー」
そこにミケの腑抜けた声が響く。その声の方向を見てみると、雌鹿を咥えたポチがこちらに向かってくる。ミケは口に獲物を咥えて吠える事の出来ないポチの代わりに喋っているのか?
「おぉ、ポチ! ちゃんと獲物を捕まえてきたな? えらいぞ!」
俺がそう声をかけるとポチは俺の前までやってきて、獲物の鹿をぺっと置き、お座りして尻尾を振る。褒めてくれの合図だ。
「よーしよしよし! えらいぞ! ポチ! いい子だ! いい子だ!」
俺はポチの望み通りにポチをワシワシして褒めてやる。その時に背中のミケと目が合う。
「えぇっと、ミケ、お前もしてやろうか?」
「いえ、私は結構です…」
うむ、ちょっと残念。ミケも性的な意味でなく、触り心地がいいのに…今度は聞く前に触ってやろう。
「あっ、ポチ、帰ってきやしたね、今日の獲物は鹿でやすか」
再びカズオが馬車の中から出てくる。
「旦那、血抜きするなら血を取っといてもらえやすか? 後でプディングにするんで。後、今日使う分に、背中からロースを取っといてもらえやすか?」
カズオが血を受ける器を持ってやってくる。
「おう、分かった。後、足一本はそのままポチに渡しといていいんだな?」
「へい、ちょっと、焼いている暇はねぇんで、今日は生で」
器を受け取った後、鹿の後ろ足を縛って、三脚に吊り下げていく。
「主様ぁ~ どうもエルフが起きたようじゃぞ」
気を失っているダークエルフの横でウッドチップを作っていたシュリの声が響いた。
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