第55話 たまたま偶然成り行きで

「はぁぁぁ~」


俺は食堂のテーブルに肘を付きながら、溜息を漏らす。


「なんじゃ、主様。溜息をしておると運が逃げるぞ」


シュリが割ったパンの中に、ハムやレタスを挟みながら言う。


「いや、溜息もつきたくなるだろ…」


 俺はシュリの言葉に返す。シュリの前の席ではカローラが同じようにパンを割って、中に一生懸命、スクランブルエッグを詰めている。


「あれ? プリンクリンが孕んだ事か? 主様は既に分かっているだけで三人の赤子がおって、更に今四人も孕んでおるのだろう? 今更一人増えた所で何を悩む」


シュリが、パンの中にマスタードとマヨネーズをかける。


「しかし、改めて聞きやすと、結構な人数でやすね… 今はプリンクリン嬢はつわりが酷くて寝込んでいらっしゃいますが、お生みになったらまた、仕込むんでしょ?」


カズオがソーセージを挟んだパンを頬張る。


「問題はそこだよ」


俺はポツリと言う。カローラはスクランブルエッグの上にケチャップをかける。


「なにが問題なんじゃ?」


シュリがレタスを噛むシャクシャクという音を立てながら聞いてくる。


「プリンクリンが寝込んでいる間… 俺の性欲はどうすればいいんだ…」


俺の言葉にシュリは喉を詰まらせる。


「旦那ぁ~ もう、子供を増やすつもりなんですかい?」


カズオは喉を詰まらせたシュリに水を渡しながら、呆れた様に言う。


「いや、子供が増えるのは副産物であって、主目的は…そう…愛を育む事だ…」


「なにが愛を育むじゃ! 先程、性欲といっておったであろうが、主様…まだ、凝りておらぬ様じゃな…」


シュリはナプキンで口を拭いながら言う。


「だって、溜まっていくものは仕方ないだろうが」


 カローラがスクランブルエッグの挟まったパンを頬張ろうとして、口の反対側の隙間から、中身の具がぼたぼたと落ちる。


「溜まったものをほっといたら、あんな風に溢れて中身が出てくるかもしれんのだぞ」


俺はカローラを指差しながら言う。


「ちょっと…イチロー様… 私を指差して例えるのは…やめてもらえますか…本当に…」


カローラはパンを皿の上に置いて、食欲を失ったように言う。


「…所で…ミケはどこにいるんだ…」


俺はカローラの言葉を聞き流して、シュリに問いかける。


「ミ、ミケはダメじゃぞ! 主様! あれはわらわが拾って来たのじゃ! そんなにやりたいのであれば、主様が拾って来たクリスとすればいいじゃろうが!」


シュリが珍しく俺に抵抗してくる。


「クリスかぁ…」


俺は皿の上のソーセージをフォークで弄ぶ。


「前から思っていやしたが、旦那はクリスさんには食指を動かしやせんね」


そう言ってカズオはポタージュを一口飲む。


「いやな、流石の俺でもあんな哀れな女だと、萎えてしまうからなぁ…」


「その哀れにした張本人がよく言いやすね…」


「あ?」


「いえ、なんでもないでやす…」


カズオはそう言って、俺から目を反らせて、ポタージュをどんどん飲んでいく。


「しかし、最近、本当にミケの姿を見ないな…」


俺はコヒーに手を伸ばし、一口啜る。


「わらわもそれで困っておるのじゃ、前まではポチと一緒にゴロゴロしている事が多かったのじゃが…」


「くぅ~ん…」


 シュリはそう言って、食堂の端のポチの姿を見る。現在、ポチは先日のケツこすりつけ事件を反省させる為に、首輪を付けて紐で括りつけている。ポチは耳を伏せ申し訳なさそうに縮こまって、俺達の様子を見ている。


「もうそろそろ、許してやってもいいんじゃないですか?旦那ぁ」


カズオがポタージュを飲んだ後の口の周りをナプキンで拭いながら言う。


「そう言って、ポチを放して、俺にケツこすりさせた奴がいたなぁ~ シュリ」


「は、はい…もうしません…主様…」


 シュリは青い顔になって項垂れる。昨日、シュリが勝手にポチを解き放ったせいで、俺はポチにケツこすりされたので、シュリにはお仕置きで、ポチと一緒に首輪をつけて、半日放置したのだ。


「まぁいいや、俺は気分転換に風呂でも入って来るか… カローラ、俺の分の飯やるよ。殆ど手を付けてないから」


 俺は、パンの中身を零していたカローラが、その後の飯に手を付けず、骨メイドに下げさせていたのを見ていたので、俺の分をカローラの前に置く。


「い、いや、私はお腹いっぱいだから…」


「もっと、食わねえと大きくなれねぇぞ」


「わ、分かりました…」


前に一度、飯の事で脅していたので、カローラは素直に諦める。


 こうして、俺は眉を顰めて朝食を見つめるカローラの姿を後に、食堂から立ち去って風呂場へと向かう。




 ここの風呂は、山が近いのと、元々王族がいた事があって、温泉を使っており清掃中を除き24時間好きな時に入る事が出来る。やはり王族はやる事が贅沢だな。


俺は風呂場の扉をバン!と開ける。すると中には服を脱ぎかけていたミケの姿があった。


「あっ」


「いたぞっ…」


 俺は『いたぞぉ!!いたぞおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!』と叫びたくなったが、慌てて口を塞ぐ。折角のチャンスなのにシュリに気付かれたら、ミケと致す事が出来ない。


 致して後からバレても、日本の特殊入浴場では、たまたま男と女が一緒の風呂に入って、たまたま、そんな雰囲気になって、たまたま致すだけだ。法的には問題ない。この世界でも恐らく同じであろう…めいびぃー


「ははは、なんだ、ミケもこれから風呂にはいるのかー 俺もそうなんだー」


俺は白々しく言いながらミケに近づく。


「そうなのかー」


ミケは慌てるでもなく、普通に答える… これはいけそうだな…


「では、俺が服を脱がすのを手伝ってやろう」


俺の手がミケに触れるが、ミケは逃げようとはしない… これはおっけーと言う意味だな…


「おっと、手が滑った」


俺はそう言いながら、ミケのケツに手を伸ばす。


カチン


ん? んん!? 硬いぞ!?


 俺はマイティー女王の事を思い出して、ミケも実は鍛えているのではないかと思い、別の場所を触ってみる。


 服の中に手を入れ、背中の方を触ってみると、やはり獣人なのか毛が生えているが、柔らかな毛並みで触り心地がよい。次に腹の方に手を回してみると、腹側は毛がはえてないのか、人と同じすべすべの肌があるし、柔らかい。


「えぇぇぇい!! まどろっこしぃ!! もう、全部脱がす!!!」


脱がして直に見ないと分からないので、俺はミケの服を次々と脱がしていく。


「あーれー」


 ミケは抵抗するわけでもなく、気の抜けた声をあげる。そして、俺は服を全部脱がしたところで驚愕する。


「お、おい…なんだよ…これ…」


服を全部脱がしたミケは鉄のブラと同じく鉄のパンツを付けている。


「ん? これ、貞操帯」


ミケはさらりと答える。


「くっそ! 多分、シュリだな! 俺にやらせないためにつけやがったな!!」


 俺は、そう言うと、ミケを小脇に抱えて、食堂にむかって猛ダッシュする。俺が食堂にはいると、学校の居残りで一人給食を食べるようにカローラがいた。


「おい、カローラ! シュリはどこだ!!」


「談話室にいる」


俺はその言葉を聞くと、となりの談話室に突撃する。


「おい!! シュリ!!!」


俺は扉を開け放つと中に叫ぶ。


「あ、主様ぁ!! 大変じゃ!!!」


シュリは俺の顔を見るや否や、赤面しながら、本を片手に泡食って俺の元へかけてくる。


「主様ぁ!!! ナカジマとカツオがぁ!!! お、男同士であ、ああああんな事を!! 主様とカズオもそんな事をするのか!?」


シュリは俺の袖を掴んでわたわたする。


「シュリ…お前、何読んでんだよ…」


気勢をそがれた俺が訊ねると、シュリははっと我に返り、本を後ろ手に隠す。


「そっ、そっそそんなここことより、なんで、主様が、ミケを抱えておるのじゃ!」


その言葉を受けて、俺の我に返る。


「お前だろ! ミケにこんな事をしたのは!!」


俺は小脇に抱えていたミケをどん!とシュリの前に突き出す。


「なんで、ミケを脱がしておるのじゃ! 主様! 駄目だといったろうに!」


「そそそれは、たまたま、お風呂場で会っただけで… それより、この貞操帯を何とかしろ!」


俺は怒鳴りながらミケの貞操帯を指差す。


「いや…わらわは知らんぞ? わらわもそこまではせん」


シュリはしらばっくれている風には見えない。


「じゃあ、誰がつけたんだよ」


「それは、私です」


話題の中心であったミケがぽつりと言った。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇



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