第42話 新たな旅立ち?

とりあえず、一冊分ぐらいのプロットが出来たので

連載を再開いたしました。

引き続き、ご愛読の程、よろしくお願いいたします。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「ようやく、ウリクリの首都にむけての出発か… 急がなければならんが、途中でどこぞの町によってもらいたいのう~」


「どうして?シュリ?」


わらわがそう口にするとカローラが訊ねてくる。


「なんでって言っても、主様があのおなごたちを馬車の中に連れ込んでいる間、わらわ達は外で野宿であったであろう? その間に蚊に刺されてな… かゆくてたまらん」


「私は刺されてないよ?」


カローラはどうして刺されるのかと言う不思議な顔をする。


「カローラ、お主はヴァンパイアじゃから、血は吸う方であって、吸われる方ではないのかのう… かゆくてたまらんが、掻くと跡になって残るからな…」


「それで、カズオが私に感覚鈍化の魔法かけてくれって言ってたのね」


「あぁ、カズオは身体がデカい分、かなり蚊に食われておったからな…気の毒な話じゃ」


 わらわはカズオが蚊に刺された事を思い出す。カズオは表面積が大きい分、沢山蚊に刺されたが、どういう訳が一番蚊に刺されたのは、肛門付近であった。カズオはそのかゆさにたまらず、『らめぇ! かゆくてかゆくて、身体が疼いて堪らないのぅ!』といって、ケツを掻いておったが、それを飯を食べに来た主様に見つかって、『デカい声あげて、ケツオナするなぁ~!』と蹴り飛ばされておった。ほんに、気の毒な話じゃ…


 こうして、主様やおなごたちの興がそがれて、おなごたちは元の場所へ帰り、主様とわらわたちは、勇者認定を受ける為、ウリクリの首都であるジュノーへ、漸く行く事になった。


 今、主様は賢者時間状態になって眠っており、カズオがカローラに魔法をかけてもらって、御者をしている訳じゃ。


「しかし、勇者認定をしてもらうと言っても、手柄であるプリンクリンは取り逃しておるし、本当に認定してもらえるのであろうか?」


「どうなんだろう? プリンクリンの魅了は全て解けて、支配体制も崩壊しているし、ウマリホーの街も人類側に戻っているからなんとかなるんじゃない?」


カローラは楽観的に答える。


「いや、なんとかならんかったら、また手柄を上げにいかんとダメじゃぞ… わらわはもう二度と変装して潜入などしたくないのう…」


 わらわは潜入時に全く役に立たず、体よく追い返された事を思い出す。力で解決できない事に対して、自分がこんなに情けない状態だとは思いもしなかった。あんな惨めな思いはもう二度としたくない。


 そんな話をカローラとしながら進んでいると、前回、カードを購入する為に立ち寄ったタトヒルの街の近くに来る。


「ちょっと、わらわはポチと一緒に街にかゆみ止めの薬を買ってくる」


わらわはカローラにそう告げると、ポチと共に馬車の外へでる。


「カズオよ、わらわが街に行って、かゆみ止めの薬を仕入れてくるので、それまで我慢するのじゃぞ」


「シュリの姉さん、ありがてぇ… あっしはケツが疼いて疼いて…仕方ねぇんでやす… このままじゃ、変な癖を覚えてしまいそうで…」


いや、既に色々と変な癖を覚えておるが…まぁ、これ以上、覚えられてもたまらんな…


「分かった、急いで買ってくるぞ。よし、ポチ行くぞ!」


「わう!」


わらわはポチにまたがって、タトヒルの街に駆け出していった。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇



そして、わらわは街の中に辿り着き、薬を売ってそうな店を探す。


「ここじゃな」


わらわは看板と臭いから、薬を売ってそうな店の扉を潜る。


「たのもう~」


「なんじゃ、お嬢ちゃん」


わらわの声に、薬師の老女が姿を現す。


「蚊に刺されて、かゆくて仕方がない、かゆみ止めの薬が欲しいのじゃが」


「では、刺されたところを見せてみぃ」


わらわは老女の言葉に従い、蚊にいっぱい刺された腕を見せる。


「おぉ、これは痛ましい…いっぱい刺されて、さぞかしかゆい思いをしていたであろう…お嬢ちゃん、ちょっと待っとれ」


 老女はそう言って、薬品棚からいくつかの手のひら大の瓶を降ろし、その一つの蓋を開け、わらわの腕に塗る。


「どうじゃ?お嬢ちゃん」


「ん~あまり効果を感じんな」


わらわは素直な感想を述べる。


「では、これはどうじゃ?」


 老女は別の瓶の薬をわらわの腕に塗る。すると、薬を塗られた場所がすぅ~っと冷えて、かゆみが嘘のように消えていく。


「これじゃ!この薬じゃ! かゆみが嘘のように消えて行ったぞ!」


「ふふう、効いたようじゃな、その薬は一つ150じゃ、お嬢ちゃん支払えるか?」


老女の言葉にわらわはカローラから貰ったお金を出す。


「これで足りるか? 出来れば5つ欲しい。身体のデカい奴がおるのでのう」


「ほうほう、そうかいそうかい、5つもかい。お嬢ちゃんは可愛いから、一つおまけにして、全部で600でいいよ」


老女はそういって、おつりと薬瓶5つを渡してくれる。


わらわはおつりと薬を受け取って袋に入れる。


「ありがとう 助かったぞ おばばよ、達者でな!」


 わらわは自分より年下の老婆に手を振りながら、店を後にし、再び、ポチに跨って、皆のいる馬車へと向かった。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「帰って来たぞ!」


わらわは馬車の扉を開け、勢いよく中へ入る。


「シュリの姉さん! 待ってやしたぜ!」


停車中で、ソファーで休憩していたカズオが声を上げて喜ぶ。


「ほれ、これを塗るが良い。いっぱい買って来たので、その瓶はカズオが全部使って良いぞ」


わらわは袋から瓶を一つ取り出し、カズオに投げて渡す。


「ありがてぇ~ あっしは身体が大きいから、少しじゃ足りないでやす。いっぱいあるなら気兼ねなく使えやすね」


カズオはそう言って、瓶のふたを開け、中身の薬を先ず、腕に塗る。


「ふぉぉぉ! この薬、効きやすねぇ! すぅ~っと冷えてかゆみが飛んでいく様でやす!」


カズオは薬の効果に目を丸くして驚く。


「ちゃんとカズオにも効いたようじゃな、ではわらわも塗るか」


 カズオにも効果がある事を確認すると、わらわも自分の身体に薬を塗り始める。袖をまくって腕から先、スカートの裾を捲って膝から下と、比較的露出していた部分に塗っていく。


 全身にあったあちこちのかゆみが消えて行くとともに、薬の清涼感で、身体がすぅーっと冷えていく感じが心地よい。


「はぅっ!」


わらわがかゆみの消えた解放感と、薬の清涼感を味わっておると、突然、カズオが声を上げる。


「どうした!? カズオ!」


 わらわがカズオに向き直ると、カズオは赤面しながらプルプルと震え、何かに耐えるような顔をしている。


「んっ! そ、その… あん! お、おしりの… あそこに… あっ んっ! 塗ったんで… んんっ やすが… うぅっ なんだか… 新しい…感覚が…」


最初は耐える様な表情をしていたカズオが段々、恍惚とした表情へと変っていく。


「いや、カズオが肛門を刺されたと聞いておったので、掻いて変な癖を覚えない様に薬を買って来たのだが… まさか、薬で更に変な癖を覚えてしまうとは…」



こうして、カズオに新たな性癖が加わったのであった…



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