第43話 進化するカズオ

 んー なんだか、辺りに広がる匂いと、身体に圧し掛かる、軽い重みで意識が覚醒へと向かっていく。


 俺はパチリと目を開く。覚醒前の朦朧としていた時に感じていた、匂いが食事の匂いと分かり、自分が空腹である事も気付く。しかし、空腹なのに腹の上が重いな…


 俺はむくりと身体を起こして、腹の上を見てみると、寝返りをうって転がってきたであろうカローラが寝息を立てていた。骨メイドがちゃんと寝かしつけていたのじゃないのかと、視線を移すと骨メイドの姿がない。おそらく、何かの手伝いに駆り出されたのであろう。


俺は両手でカローラを抱き上げ、ブラブラと横に揺さぶる。


「おら、カローラ、起きろ。そろそろ飯だぞ」


すると、カローラが眠気眼を開き始める。


「ん…抱っこ…」


そういって、カローラが俺にしがみつく。


ほんと、こいつの幼女化は歯止めがかからんな…


俺は仕方なく、カローラを抱きかかえて、寝台から梯子を降りていく。


「おぉ、主様、目を覚まされたか。そろそろ、飯の時間なので、起こそうかと思っていたところじゃ」


 ソファーに腰を降ろして、何か手足に塗っているシュリが明るい表情で言ってくる。最近、シュリは蚊に刺されて、かゆくて顔をしかめている事が多かったが、何か塗っている所や、明るい表情から察するにかゆみ止めの薬でも手に入れたのであろう。


俺はシュリの対面に腰を降ろし、しがみつくカローラを引きはがして、隣に座らせる。しかし、カローラはコックリコックリと船を漕いでいる。


「なんだか、主様はややこの扱いに慣れてきたというか、父親のように所帯じみて来たな」


シュリは瓶の蓋を閉めながら言う。


「俺を子持ちの親父みたいに言うな」


「いや、主様は実際、子持ちであろう? この前のおなごどもが、子が生まれたといっておったではないか」


「あっ… そうだった… 俺、子持ちになったんだった…」


 やる事をやっての結果だから仕方ないが、なんだかいつの間にか青春時代が終わってしまったかのような物悲しさを感じる。


「まぁ、実際のややこの扱いは気を使うというから、今の内にカローラで練習しておけばよかろうに」


 俺はとなりのカローラを見る。初めて対峙した時のエロピッチピチの姿の面影は全くなく、プリプリの幼女姿だ。しかも、最近は中身の幼女化が加速している。6歳ぐらいの女の子はこんなものなのか?


 しかし、カローラで自分の子供を扱う練習って、俺はカローラが元のエロピッチピチの姿に戻ったら頂くつもりなのに、自分の娘にそんな感情抱いてしまったらどうすんだよ…さすがにそれはマズいだろ… しかも、逆にカローラを娘の様に思ってしまって、いざエロピッチピチの姿に戻った時に気後れしちまうかも知れん…


「いや、カローラはカローラだ。子供とは違う」


俺は未来の為にそう思い込む。


「主様がそれでいいというならそれでよいが、まぁ、カローラは最近、子供化が進んでおって、どうも甘えたになっておるからのう…子供扱いせんのはそれで良いかもしれぬ」


 シュリもそう言っているが、子供扱いの件を踏まえて見てみると、シュリ自体も良く出来た面倒見の良い長女っぽくなっているんだよな… クソ… こいつもクソ穴以外の穴さえあれば、かなり射程範囲に入ってきそうなんだがな…


「それより、お前も早く大きくなって、クソ穴以外の穴を作れるようにしろ」


「えぇ? いや、なんで怒りの矛先がわらわに向いてくるのじゃ? しかもまたその話か… そこまで主様がいうなら、最初の人里で、記憶に焼き付けられた老女の姿ならなれるぞ?」


「お前の口調で、姿もババアなら、まんまババアじゃねぇか! 俺にはそんな趣味はない!」


 俺は怒鳴り声をあげるが、ババアとやる所を想像して、折角、再生したマイSONが縮こまる。


「お前の価値はロリババアっぽい所にあるのを忘れるなよ…」


「ロリババアって… ロリというなら成長せんでもよいのか?主様」


 俺はシュリの言葉で少し考え込む。よくよく考えれば、今のシュリの見た目は、少し背徳感のあったネイシュより、少し小さい感じだな… 俺がもう少しロリ方面に趣味を広げればいけるか? いやいや、結局、こいつにはクソ穴しかねえな…


「とりあえず、お前は飯くって大きくなって、クソ穴以外をつくれ」


「いや、だから、飯の前にクソ穴とか言うでない。主様よ」


「お、お食事が… で、出来ました…」


 俺とシュリが言い争っていると、カズオの飯の準備が整った声が聞こえる。しかし、言い方がなんだか妙だな…


 俺はそれが気になって、カズオの声の方に顔を向ける。頬を赤らめながら、荒い息をして、もじもじしながら、ミトンで大きなグラタン皿を持っていた。


「き、今日の…んっ め、メニューんっはぁはぁ… あっ!んっ あっつあつあん…の…ら、らめぇ… らぇザニあっ です…」


正直、嬌声というか喘ぎ声が混じり過ぎて、何いっているかさっぱり分からない。


カズオはラザニアを置き、骨メイド達が飲み物や取り皿を置いていく。


「シュリ、一体、カズオはどうしたんだ?」


俺はシュリに向き直り訊ねる。


「…いや、そ、その… カズオは蚊に刺された…かゆみ…そう!かゆみを堪えておるのじゃ」


 シュリは俺から目を反らしながら答える。俺はシュリの言葉に違和感を感じながらコップを手に取る。


「ん? なら、さっきお前がかゆみ止めの薬を塗っていたんだろ? それ貸してやれよ。こんな状態のカズオを目の前にして飯食えねぇよ」


シュリは俺の言葉にはっとした顔をして、その後、目を伏せながら顔を背ける。


「じ、実は、カズオはもう…その薬を塗っておるのじゃ…」


「薬塗っててこれなのかよ…カズオには合ってないじゃねぇか?」


シュリの様子はすっきりしているからな。


「いや、場所が場所なんじゃよ…」


「場所ってどこだよ」


俺は寝起きで喉が渇いていたのでコップの飲み物を口に含む。


「… 主様が言っておったクソ穴じゃ…」


俺はシュリの言葉に盛大に吹き出す。


「な、なんじゃ! 主様! わらわに向かって吹き出すのではないぞ!」


「おまっ! カズオ! ケツオナに引き続き、薬使って変態じみた事やってんのかよ!」


「い、いや、旦那! ち、ちげいやす! そもそも、前の時 んっ! あっ! も 蚊にケツの穴を刺され… あん! て、かゆくてかゆくて… んっ」


「お前は喋るか喘ぐかどっちかにしろ!!」


 カズオは喋るのやめて、口を半開きにして頬を染めながら、目を閉じてプルプルとしている。


「最初の女騎士といい、キモイ行動といい、オカマ行為といい、女装といい…今度は薬使ったケツオナを一般公開かよ… カズオ、お前は一体何処まで行くつもりなんだ?」


「…兎に角…主様…今後、この様な事があるかもしれんので、クソ穴の発言は厳禁でよいな?」


シュリは骨メイドから受け取ったタオルで顔を拭きながら言う。顔が見えないので怒っているかもしれん…


「そ、そうだな…俺が悪かった…」


俺は素直に謝る。そこへ、となりのカローラが今更パチンと目を覚ます。


「わぁい! ラザニア! 私、ラザニアだぁい好き!」


「…とりあえず、飯にするか…」


俺はカローラの頭に手を乗せながら、ポツリと呟いた。




 なんだかんだ言いながら、皆、ぺろりとラザニアを平らげた。キモさも進化しているが料理の腕も進化してやがる。まぁ、食事の時は、あまりにもひどい状態なので、カズオはポチと並んで食べてもらったが…


「食った食った、で、今、どの辺りまで進んでいるんだ?」


俺は食後のコヒーを啜りながら、ソファーの背もたれに身をゆだねる。


「カズオの話では、首都のジュノーまであと半日といった所だそうな」


シュリがコヒーに砂糖を二杯入れてから飲む。


「じゃあ、あとちょっとだな。では、俺が頑張って御者して首都に乗り込むか」


こうして勇者認定がもう少しの所まで見えてきたのであった。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇



連絡先 ツイッター にわとりぶらま @silky_ukokkei

ブックマーク・評価・感想を頂けると作品作成のモチベーションにつながりますので

作品に興味を引かれた方はぜひともお願いします。

同一世界観の『世界転生100~私の領地は100人来ても大丈夫?~』も公開中です。

よろしければ、そちらもご愛読願います。

https://kakuyomu.jp/works/1177354054935913558

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る