第11話 せんせい! ヴァンパイアは死姦にはいりますか?

 俺達はバーンと扉を開け放ち中へと進む。


 中は広く豪華な謁見の広間となっており、奥には檀上があり、その上に玉座が備え付けてある。そして、その玉座には… くっそ!またシナシナの干物の様な姿が腰を掛けている。


「くっそ!城の中がスケルトンだらけなので、期待はしていなかったが、やはり、ボスも肉付きが良くないアンデッドかぁ…」


「主様よ… ボスに肉付きを求めるのもどうかと思うが…」


シュリが突っ込みの言葉を入れる。


「あ、あっしは隠れてやすぜ… ただのオークですから…」


カズオはそう言って、広間に並ぶ支柱に身を隠す。


俺達がそんなやり取りをしているとボスの方から声がかかる。


「ここまで追いかけてくるとは流石だ… 私に止めを刺しに来たのであろう…」


しがれた声が、広間に響く。


「はぁ? なんのことだ?」


俺はボスの言葉に問い返す。


「忘れたとは言わせぬぞ… 勇者ロアンの一味…魔剣士イチロー・アシヤよ…」


「え? お前、俺と会った事あんの?」


しなしなのミイラみたいになったボスがそう言うが、俺は思い出せない。こんな奴にあったっけ?


「私は鮮血の夜の女王…ヴァンパイアのカローラ・コーラス・ブライマ…」


「あぁ! あの時のヴァンパイアか!」


 俺は通名を聞いて思い出した。確か俺が勇者パーティーにいたころに戦ったヴァンパイアだ。王国の街の住人を何人も襲っていた奴だ。俺達が追い詰めて対決をしたが、最後の止めと言う所で逃げられたのだ。


「でも…お前、なんでそんなシナシナの干物になっているんだよ! あの時のお前はもっとエロピッチピチだっただろ? 胸なんかこう… ボインボインって感じで… なのに今の姿はがっかりだよ がっかり!」


俺は親指を逆さに立てて、ぶーぶー言う。


「が、がっかりとか言うな! 私だって大変だったんだぞ… 私はお前との戦いで、力の殆どを使い果たし、身体を構成する存在マテリアルも浄化され失った… 見よ!この体を!」


確かにあちこち欠損している。恐らく今の姿を維持するだけでも苦しいのであろう。

って、多分俺がやった事だが…


「だから、ここまで逃げ延び、力を蓄えていたのだが… 私の前にお前が現れた… もはや、私に戦う力も、逃げ延びる場所も無い… さぁ、私に止めを刺すが良い…」


ヴァンパイアは抵抗を諦めて、さぁ胸を突き刺せと言わんばかりに身体を開く。


 そこで俺はヴァンパイア見ながらうーんと考え込む。こいつはサキュバスの時とは違い、元々はエロピッチピチだった。俺の瞳が乳頭から胸元…ではなく頭のてっぺんから足元まで覚えている。それほど、エロかった。

 だから、今回、力を与えてやれば、元のエロピッチピチに戻って…


『いや~ん☆ 私、イチロー様のお陰でエロピッチピチの姿に戻れましたわぁ~(ハート) このご恩を返すために、私のエロピッチピチの身体を使ってご奉仕いたしますぅ~(ラヴ)』


って事になるに違いない! うん!よし!力を与えて助けてやろう!


「主様よ…淫らな思考が口から駄々洩れであるぞ…」


シュリがぼそりと言う。


「えっ? どのへんから?」


俺は横にいるシュリを見下ろす。


「『いや~ん☆』の辺りからじゃ…」


「ほぼ全部じゃねぇかぁ!」


俺は手で顔を覆い、シュリから顔を背ける。


「わらわも急に主様がその様な事を言うので、頭をどうかされたのではないかと心配したぞ… でも、まぁ… 内容がいつも主様が考えていそうな事だし…」


「えっ? 俺、そんな風に思われてるの?」


驚いて俺はシュリに向き直る。


「そんな風に思われてないと思う方が驚きじゃ!」


シュリは何言ってんだという顔をする。


「まぁいい… それよりも、ヴァンパイアの…カ、カ…」


えっと、こいつの名前なんだっけ…カから始まる名前だったはずだが…

そこへ、となりのシュリが小声で『カローラ、カローラですぞ主様』と告げてくる。


「そう!カローラよ! お前に慈悲を与えてやる!」


俺はカッコよく指を刺しながら、カローラにそう告げる。


「…な、なん…だと…?」


カローラは突然の事に驚愕した表情で驚きを口にする。


「更にお前に力も与えてやろう…そして、感謝しながらエロピッチピチに戻った身体を俺に差し出すのだぁ!」


ふっ、決まったな。これでむせび泣きつつ俺に感謝しながら土下座するに違いない。


「な、何を馬鹿な事を…」


あら?俺の想像とは異なり、カローラは吐き捨てる様に言う。


「おいおいおいおいぃぃ!! 俺に逆らっていいのか? お前、アンデッドだからと言って、死ぬより酷い事を知らないのか? なぁ? アンデッドだから簡単に死ねる人間より、かなりえぐい事になると思うんだが…」


 俺がそう脅してやると、元々青い顔を更に青くして、恐怖で身体を震わせる。ついでにとなりのシュリも顔を青くして身体を震わせドン引きしている。


「なんでお前までビビってんだよ!」


「いや、主様なら本当に誰も思いつかぬような、恐ろしい責め苦をやりそうで…」


 シュリがカタカタと奥歯を鳴らす。


 あぁ~こいつを屈服させる時、泣き叫んで懇願するまで、急所の逆鱗をガンガン遠慮なく殴り回した。その時の恐怖がしみついているのであろう… まぁ、途中から痛覚倍化の魔法も使っていたしな。


「カローラよ! おぬしも早う膝まづいて、慈悲を乞うのじゃ! 破壊の女神と呼ばれたわらわが言うのじゃ!」


シュリが俺を通り越して、カローラに告げる…


何だよ、それじゃあ、俺が悪者みたいじゃねぇか!


「な、なに! 其方があの名高き破壊の女神… それがこの男に!?」


そういうとカローラも奥歯をカタカタ鳴らし始める。

なんだ?お前ら奥歯で合奏でもやってんのか?


「わ、私にご慈悲をお願いします…」


カローラはそう言って、恭しく頭を下げて地にひれ伏した。


「お、おう…」


なんだか釈然としない結末だが、ケリは着いたようだ。


「まぁいい、それでは早速、力を取り戻してエロピッチピチの体に戻ってもらおうか」


「はっ、で、どのように力をお与え下さるのですか?イチロー様…」


カローラは地に付したまま、そう述べる。


「おい! カズオ!」


俺は振り返り、カズオが隠れている支柱に向かって声を飛ばす。


「へ、へい! 旦那!」


支柱の陰からカズオが顔を出す。


「ちょっと来い!」


「へ、へい…」


カズオは露骨に嫌そうな顔をしてこちらに来る。


「で、なんでしょう?旦那」


「お前、血吸われて来い」


「えぇ! 嫌ですよぉ! 旦那ぁ! また、サキュバスみたいになるのはいやですぜ!」


カズオは後ろに身動ぎながら、抗議の声を上げる。


「大丈夫だ、サキュバスの里みたいな事にはならねぇ、そもそも、お前、前の童貞も後ろの処女ももうねぇじゃねえか! 失うもんなんてもうねぇよ!」


「ありますよ! 旦那! 血! 血を失いやす!! あっしは血を見るのがいやなんですぅ!!」


「エアバインドォ! 血を見るのが嫌なら、吸ってもらえばいいだろう! 血がでなくなるぞ」


俺は拘束魔法でカズオの動きを止める。


「それじゃあ、あっしが死んでしまいやす!!」


「えぇぇ~っと、カローラ、死なない程度に出来るな?」


俺はひれ伏すカローラに訊ねる。


「はい、イチロー様。可能でございます」


「では、やれ」


「はい、イチロー様」


 カローラはむくりと立ち上がり、ゆっくりと拘束されたカズオに近寄り、その目を閉じてぐっと耐えているカズオの首筋に、顔を寄せる。だがしかし、眉をしかめて血を吸おうとはしない。


「なんだ? 吸わんのか?」


「あのう…イチロー様…」


カローラはしかめっ面で俺を見る。


「なんだ?」


「オークを直で噛むのは…ストローとかないですか?」


「お前は蚊かよ!! 我慢して直接吸え!!」


カローラは諦めてカズオの首筋にかぶりつく。


「ひぃ!」


 カズオは小さな悲鳴をあげるが、カローラは血を吸い続ける。そして、暫くしてから口を放す。カズオは指示通り、死んではいないが朦朧としている様だ。


「どうだ?」


「不味いです」


「味の事じゃねぇよ! 力の事だよ!!」


俺はカローラに突っ込みを入れる。


「足りませぬ…」


カローラはぽつりと言う。


「そうか…シュリ」


「やはり、わらわもか…」


シュリは諦めたように言う。


「すまぬ…破壊の女神よ…」


「良いのじゃ…鮮血の夜の女王よ… お互い苦労するのう…」


だから、俺が悪者みたいな会話はやめろ。


カローラはシュリの幼い首筋に牙を刺し込み、血をすすり始める。なんか、ちょっとエロいな…そして、暫く沈黙の時が流れる。


「どうだ?」


俺がカローラに問いかけるが、顔を伏せたままで表情がよく見えない。


「クックック……」


呟くような微かな笑い声がする。


「フハハハハ」


堪えきれずに笑い出した声がする。


「ハーッハッハッハ!!」


狂ったような高笑いをカローラがあげる。


なんだ?このパターン何処かで見たぞ?


「愚かにも私に力を与えるとは…迂闊な奴だ…」


顎を引いて、目を妖しく輝かせながらカローラが述べる。


「お前…ちょっと力を取り戻したぐらいで、何イキがってんの?」


俺は余裕な表情で返す。


「クククッ…闇の眷属の力を得たあっしに…どこまで余裕を言ってられますかね…」


カズオが俺に身構えながら、ニタリと笑う。


「すまぬのう…すまぬのう… 主様よ…」


シュリも俺に身構えて、ニヤリと笑う。


「お、お前ら…裏切ったのか!?」


俺は皆から距離をとって、身構える。


「クックック…ヴァンパイアは血を吸った相手を自分の眷属に出来る…私一人ではお前にはかなわぬが、三人であればどうかな…」


カローラが悠然と構えて、そう述べる。


「数々の悪辣な仕打ち…この積年の恨み晴らしてやるわ!」


そうほざくカズオ。


「すまぬのう~すまぬのう~」


シュリ、何がいいたんだよ…


「私を侮った事を後悔するがいい!! しねぇぇいぃぃぃ!!!」


カローラの怒声と共に三人が俺に飛掛って来た…



◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「で、何か言う事はあるか?」


俺は二人と一匹と一体を見下ろして言う。


「ま、待ってくれ!主様よ!! わららはちゃんと謝っておったであろう!」


シュリが地べたに正座しながら言ってくる。


 俺はその言葉に黙ったまま、足をリズムよくターンターンターンと鳴らす。向こうで、俺の聖属性化させた短剣で両手両足を床に打ち付けられたカローラが、苦しそうに上げるひぃ~ひぃ~ひぃ~と言う声が妙に俺の足のリズムと合う。


「それに血を吸わせろと言ったのは、主様であろう…わらわは仕方なかったのじゃ…」


まぁ~確かに謝ってはいたし、言い出しっぺは俺だから、仕方無いな…


「分かった…許してやろう」


俺の言葉にシュリの顔が明るくなる。


「でも、正座はそのままだ」


俺の言葉にシュリはシュンと俯く。


「で、次は…ポチ」


「わう!」


正座…と言うか座ったままのポチが吠え声で答える。


「お前、どこ行ってたんだよ!?」


「わう!わう!」


「ん?なんだ?お前、腹がすっきりしてるな… そうか、お前、トイレに行っていたんだな、賢い奴だぁ! よーしよしよし! いい子だいい子だ! よしよし! って、だから、ケツは向けなくていいって…」


「わう!」


「ずるい… 贔屓じゃ!贔屓じゃ主様!」


となりのシュリが正座で足をプルプルさせながら抗議の声を上げる。


「あ?」


「なんでもありませぬ…」


シュリは涙ぐみながら俯く。


「分かればよろしい」


俺はポチから手を放して立ち上がる。


「さて…次は…」


「許して下せぃ! 旦那ぁ!! あっしも操られていただけなんで!」


同じく正座したカズオが、足どころか身体全体をプルプルさせて声を上げる。


「積年の恨みがなんだって?」


「い、いや…そ、それは…」


カズオは顔全体に脂汗を掻き、猛烈な勢いで目が泳ぐ。


「まぁいい、お前のお仕置きよりも、俺はエロピッチピチの方が重要だ。だから、お前の事は後回しだ」


俺の言葉にカズオの顔が明るくなる。


「まぁ、後日、サキュバスの里のババアを連れてくるがな」


「ひぃぃぃ~!!」


俺はカズオの悲鳴を無視して、床に大の字に磔になっているカローラの所へ行く。


 こいつは戦いが始まったとたんに、俺が組み伏せ、反撃する余裕を見せないまま、聖属性化した短剣で床に磔し、花に水やりするように、上から聖水を撒いてやったのである。その痛みで、シュリ達を隷属化させる集中力が切れてこうなっているのである。


「で、反省したか?」


俺はカローラの顔の所にしゃがみ込んで訊ねる。


「はひぃ… イチロー様…」


カローラは息苦しそうに答える。


「で、なんでエロピッチピチに戻ってねぇんだよ!!」


「ち、力が…ひぃ~ 足りませぬ… ひぃ~」


「二人じゃたりんのか?」


「私は…ひぃ~ 数百年かけて…ひぃ~ 何千人の血を… ひぃ~ 集めました…」


ひぃ~ひぃ~うるせぇなこいつ…


「まぁ、それなら二人じゃ足りんな…って言うか、お前、欠損している部分から力が漏れてるんじゃね? 何とかならんのか?」


「前の戦いで…ひぃ~ 浄化されたので、…ひぃ~ 身体の…ひぃ~ 存在マテリアルが…ひぃ~ 不足して…ひぃ~ おります…」


「それなら、身体を縮めるなりの方法があるだろ」


「私の…ひぃ~ 最後の…ひぃ~ 戦いに…ひぃ~ 本来の…ひぃ~ 姿で…ひぃ~ 戦い…ひぃ~ たかったので…」


ひぃ~ひぃ~ばっかしで、何言ってんのか本当にわからん!


「分かった、じゃあもういい、今の存在マテリアルで維持出来る体の大きさになれ、俺の血も少しくれてやるから」


「裏切ったひぃ~私にひぃ~ご慈悲とは…ひぃ~ありがとう…ひぃ~ ございます…ひぃ~ 今度こそ…ひぃ~ イチロー様に…ひぃ~ 従います」


 もう、なんか吹き出しそうだ。とりあえず、磔にしている短剣を抜き放ち、その一本で指先を切って血を出す。当然、こっそりと隷属魔法を血に込めながら、カローラの口元に垂らす。


 カローラは俺の血と残っている身体の存在マテリアルを使って身体を再構築し始める。

手足は縮まり、欠損して穴の開いた部分が塞がっていく。そこに俺の血で、肌の艶と張りが戻っていく。


「これはいけるんじゃね? おっ?おっ?おっ?おぉ?おっ… おふぅ…」


カローラははちりと目を覚ます。


「おぉ! これは素晴らしい! 私の艶と張り…そして若々しさが戻っている!!いや~ん☆ 私、イチロー様のお陰でピッチピチの姿に戻れましたわぁ~ このご恩を返すために、私のピッチピチの身体を使ってご奉仕いたしますぅ~」


カローラはキャピキャピの声をあげて、俺に感謝の言葉を述べる。


「お、おう…って、おまっ! 小さくなりすぎだろぉ!! どんだけ、存在失ってんだよ!! ピッチピチと言うか… お前、プリプリの幼女じゃねぇか!!」


「むむっ! わらわのライバルが…また一人」


シュリが何か言っているがどうでもいい!


 カローラの姿は少女を通り越して幼女になっていた… こいつ、シュリよりも小せぇじゃねぇか! 流石にこれでは起たんし、そもそも入らん…


「そう言われましてもイチロー様、私の存在を欠損させたのはイチロー様ですので…」


「クソォ!! 何やってんだよ! 昔の俺!! 返せよ! 俺のエロピッチピチを!!

返してくれよ…俺のボインを…」


俺はむせび泣きながら床を叩き続けた。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇



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