第06話 違う、その穴じゃない

結果だけで言うと104発で、ドラゴンは服従した。意外と持たなかったな。



「おら! おら! おら!」


俺は切り殺さない様に鞘付きの剣でドラゴンを殴りつけていく。


「き、貴様… 動けぬ…わらわに… 卑怯…だぞ…」


ドラゴンは殴られる痛みに耐えながら、罵りの声をあげる。


「おいおい、人間如きといっておきながら、これぐらいのハンデに文句たれるのかぁ? ドラゴンも肝の小せい奴だなぁ~?」


「ぐぬぬ…」


ドラゴンは悔しがって歯をきしませる。


「旦那ぁ… マジでドラゴンを組み伏せたんですかい?」


安全になったので、ハイオークが木陰から顔をのぞかせる。


「あぁ、お前か」


俺は殴るのを一度止めて、ハイオークの方を見る。


「旦那は、スゲーとは思ってましたが、まさかドラゴンまでとは…」


図体のでかいハイオークのくせにビクビクしながら、こちらにやってくる。


「ところで、お前、逆鱗ってしってるか?」


 俺がドラゴンの顔に足をかけながら、ハイオークに言葉をかけると、ドラゴンは動けない身体をピクリとさせる。


「へ、へい、なんでも逆鱗を触るとドラゴンが激怒するとかで」


「なんで怒るか知ってるか?」


「いえ、あっしは無学なもので…」


ハイオークはいつもの愛想笑いを浮かべて答える。


「逆鱗はなぁ、ドラゴンの急所なんだよ」


「そうなんですか?」


「あぁ、触られると滅茶苦茶痛いそうで、だから逆鱗に触れると怒るんだよ」


俺は肩に剣を担ぎ、ドラゴンを見下ろしながら言う。


「そんなに痛いんですかねぇ~」


「まぁ~痛がりのお前は全身急所みたいなもんだが、人型でいうと金玉蹴り挙げられたぐらいの痛みらしい…」


 俺の言葉にハイオークはひぃ!と声をあげて、股間をかくす。俺は、はははと笑った後、足元のドラゴンに視線を戻す。


「おいおい、ドラゴンさんよぉ~ さっきから無言じゃないか ビビってんのか?」


「わらわは…ビビッてなど…おらん…」


 ドラゴンは強がってはいるが、その内心は怯えているのが丸わかりだ。しかも、先程までは反撃しようと頭を持ち上げようとしていたが、今は顎の裏の逆鱗を守る為、頭全体をガッチリ地に付したままだ。


「じゃあ、アースバインドを調節してと…」


 俺はそう言うと蔦で絡めとる魔法を調節して、頭を横に傾けて、顎の裏を見える様に調節する。


「や、やめろ! やめるのじゃ!」


「やっぱビビってんじゃねぇーか」


俺はドラゴンの逆鱗を剣で軽く小突く。


「うぐっ!」


軽く小突いただけでも、小さな悲鳴をあげる。


「じゃあ、いっちょ本気で行くかぁ!!!」


「や、やめろぉぉぉ!!!!」


俺は殺さない程度の加減をして、ガンガン逆鱗を殴っていく。


「ぎゃぁぁぁぁ! 痛い! 痛い! 痛いぃ!!」


「随分、可愛い声で悲鳴をあげるじゃねぇか! おら!おら!おらぁ!!!」


「やめて!! やめて!! やめてくださいぃぃ!!!」


先程の強がりは何処へ行ったものやら、ドラゴンは本気で悲鳴を挙げる。


「鬼だ…鬼がいる…あっしが言うのもなんですが… 旦那…あんたは鬼だ…」


ハイオークは俺の鬼気迫る凶行を目の当たりにして、肩をふるませながら声を漏らす。


そして、少し息が上がるまで殴り続けた後、ドラゴンは涙声で服従を申し出た。


「わ、わらわが…イキがっておりました…お許しください… どうか、貴方様の下僕となります故… どうか…どうか…痛めつけるのをおやめ下さい…」


ドラゴンは涙目になって、大きな体を小さな子猫のようにプルプルと震わせる。


「分かればいいんだよ、分かれば…で」


「はい…なんでございましょうか?」


ドラゴンは頭を地に付して、上目づかいで俺を見る。


「お前、人間に化けれるのか?」


「は、はい…あ、主様のお望みとあれば…」


 すると、ドラゴンの身体が光り出し、光の粒子が舞い始め、その姿がゆっくりと変化していく。


「おぉ! ホントに化けていくぞ! おっ!おっ!おっ? おぅ…」


 光が消え、変化が終わった後、三つ指をついて土下座したの女?になったドラゴンの姿があった。俺はその姿に少し違和感を感じる。


「お前、ちょっと立ち上がって見ろ」


「はい、主様…」


 ドラゴンの女は恭しく立ち上がる。輝く銀髪のウェーブの入った長髪に、澄んで奥行きのある赤い瞳、そして愛嬌のある顔立ち。ここまでは良いのだが、なんか小さい。少女と幼女の中間あたりの感じだ。

 声色やその言葉遣いから、なんか妖艶な二十歳ぐらいの女王のような姿を想像していたが、なんか違う。まぁ、これはこれで可愛いが、もうちょっと成長した姿にならんのか?


「まぁいい、そんな事より、重要な所を確認するか」


「はい?」


俺はおもむろにドラゴン幼少女?に近づき、その足首を掴んで逆さに持ち上げる。


「あ、あるじ様!?」


 ドラゴン女は困惑の声を挙げ、逆さに持ち上げられた事により、スカートがめくれ上がり、色白の下半身が露わになる。


「おまっ この恰好でヒモパンかよ…レベルたけぇーな」


「ちょ! ちょっと、主様!!」


ドラゴン幼少女は身体をくの字に捻るが、俺は無視してヒモパンの腰ひもを引っ張る。


総排出口


『総排出口とは、爬虫類、鳥類に見られる、直腸・排尿口・生殖口を兼ねた器官の体外への開口部の事をいい、卵等も排出するが、主に糞や尿を排出する場所である。排尿口と生殖口の両方を持つ哺乳類から見えれば、肛門にしか見えない器官である。』


「なっ何だよ… 穴が一つだけしかねぇじゃねーか!! しかも、不要な方!! 俺はそっちの趣味はねーんだよぉ!!!」


「見られてしもた… わらわの大事な所が見られてしもた…」


 ドラゴン幼少女は、真っ赤に赤面した顔を両手で覆う。俺はそんな事は構わず、ぺっと足から手を放す。ドラゴン幼少女は、きゃんと声をあげるが、元はドラゴンなので問題ない。


ドラゴン幼少女は顔を真っ赤に染めて、プルプル身体を震わせながら立ち上がる。


「わらわの大事な所が見られてしもた… 大事な所が…」


「うわぁ… 旦那ぁ ホントに節操ないですなぁ…」


ハイオークが俺達の様子を見て、そう言葉をもらした。


知らんがな。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇


同一世界観の『世界転生100~私の領地は100人来ても大丈夫?~』も公開中です。

よろしければ、そちらもご愛読願います。

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