【第9章:2階組の役割】
「嘘ついてる人!? そりゃまた怪しいわね…。」
まよるがことさらに驚く。
「とは言っても犯人と決まった訳じゃないけどね。まだ他にも怪しい言動の人がいるかもしれないから、まよるもよく注意して話聞いてね。真実を突き止めなきゃ。」
「りょーかい。」
そう言いながら、2人はそれぞれの部屋に入った。
2人が部屋でそれぞれの役割が書かれたハンドアウトを回収し、大ホールに戻るとすでに他の招待客が勢揃いしていた。
「探偵さんはずいぶんとのんびりであるな。」
「いやー…、遅れまして申し訳ないです。」
ハルマが肩をすくめながら声をかけ、まよるが謝罪する。
「で、探偵さんにこの紙を見せればいいのかな?」
愛州が手に持ったハンドアウトをぺらり、と振りあさひがそれを受け取る。
【役割:医師】
【君は医学に精通している。事件が起こるまでは誰かとチェスでも指しているといい。君は遺体を見てごく最近、つまり今日銃殺されたことを判別できる。だが君が正しい情報を言っていることを信じてもらえる保証はどこにもない。】
「あー…、なるほどこう書かれてた私と遊戯室でチェスを指したんですね。」
「そうだよ、他に指せる人いなかったからね。」
あさひと愛州がそうやりとりしながら愛州のハンドアウトを他の人にも見せる。
「そういえばなんだけど、遊戯室って2階にあったんだよね? 誰か銃声とか聞いてないの?」
しあんが問いかける。
「あ、おれちゃん聞いたよ! っていうかずっとパンパン鳴ってた…?」
「あぁ~、多分それ私の~!」
ヨルの発言にねこが自分の手の紙を見せながら答える。
【役割:射手】
【君は銃の名手だ。君は事件が起こるまで遊戯室で射的をしている。存分に腕を振るうといいだろう。銃のエキスパートである君は被害者を撃った銃が現場に残されていたものと同一であることがわかる。だが、その凶弾を君が放っていないことを誰が信じてくれるだろうか。】
「なるほど、2階でずっとパンパン言ってたの遊戯室だったんだ…!」
「へー、そんな音してたんだ!」
まよるが納得したように言うが、カリナはピンときていないようだ。
「こむぎもずっと一緒に撃ってたよ! これが役割!」
【役割:放蕩家】
【君は遊び人だ。君は事件が起こるまで遊技場で遊び呆ける。アリバイが欲しければ誰かと一緒に遊ぶのもいいだろう。君は被害者もまた遊び人で、なおかつ恨みを買ってる相手も多いことを知っている。それどころか君は被害者に借金すらしている。殺す動機が充分にある君は容疑を逃れるためにいつまで遊んでいられるだろうか。】
「めちゃくちゃ怪しい設定であるが、本当に借金してたのであるか?」
ハルマがこむぎに聞く。
「そんなワケないでしょ! あくまでそういう設定だよ!」
こむぎは憤慨した様子だ。
「さっき見せてくれた3人と私が遊戯室にいた面子ですね。」
あさひがそう言いながら、自分のハンドアウトを皆に見せる。
【役割:探偵】
【君は探偵だ。事件が起こるまでは好きに過ごしたまえ。君はこの状況に偶然放り込まれた存在であって、情報は何も知らない。だが君は事件が起きたら聞き込みを行い嘘を見抜き、犯人を見つけなくてはならない。もっとも、犯人が嘘をついているとも限らないが…。誰が犯人であろうとためらわずに告発することだ。次に殺されるのは君かもしれないのだから…。】
「探偵さんが本当に探偵なんてよくできた配役だね。」
愛州が少しほほえみながら言う。ありがとうございます、とあさひは少しはにかむ。
「あと2階にいたのは私だけかな?」
そう言いながらまよるがハンドアウトを見せる。
【役割:探検家】
【君は探検家だ。自分に未知の場所があることを許容できない。個人の部屋以外の全ての部屋を一度は訪問したまえ。運が良ければ探検の末、犯人をも見つけることができるかもしれない。】
「あれ、まよる本当に全部の部屋行ったの?」
あさひが問いかける。遊戯室でまよるを見た覚えがない。
「いや、それが2階のアトリエとか物置とかで何かいいものないか漁ってたら時間使いすぎて全然回れてないんだよね。」
てへへ、とまよるがちょっと照れくさそうに笑う。
「じゃあ、ほとんど回れてないってことであるか?」
「ギャラリー、アトリエ、物置、執務室は行ったけどそれ以外は全然…。1階も見れてないですね。」
ハルマの問いかけにまよるが答える。
「残るは1階にいた人たちだけかな~?」
ねこがそう言う。
「じゃあ、また1人ずつ紙を見せて―――。」
「―――いや、その前にちょっと聞きたいことがあります。」
まよるの言葉を遮りながら、あさひはセウの方を向く。
「―――セウさん、なんで嘘をついたのですか?」
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