第二話 機械装甲奪還戦


フェーズを実践へと移行しよう。

最終確認

 敵の思考を読む。透明な兵隊ののことだ。まあ、どうせ姿は帝国の組織を示す、制服で統一真っ黒なんだろうが。


 憶測に過ぎない。無駄話の構想。

 真っ黒の兵隊だとして、その裏の組織を想像する。帝都で何が起きているか。

 彼らは自らの科学力でエルの開発を成功させた。

 もし本当にそうだとして、その科学力でエルが逃げられないように捕縛するのは想像に容易くないのだ。

 あれは蒸気機関で戦闘力を遺憾なく発揮するものの。

 装甲さえ取り上げれば、簡単なのだ。エルを束縛をすることは。

 なぜアイツは逃げることができた?

 メモリーやプログラム、リペア機能と活動源は違う。蒸気よりエネルギー効率の高い原動力テクノロジーとして何か別のものが導入されているのだ。

あれは帝都では出来ない芸当。

 そして外国、つまり霧の都ですら、造れない芸術だ。つまり、やつらが造ったのは上部だけで、内部には人の理解できない範疇の芸術が取り込まれているのだろう。

 謎を胸に仕舞い込んだ。散策を続けろ。

 エルの索敵の結果。

 やつらは山の中枢に入る。ここ五合目に居るということは、装甲に気付いていること、と一緒に確信できる。

 明ける前にあれだけ派手に煙の中で舞ったんだ。目立たない筈なんてない。

 五つという数字を思い出す。精鋭の人数のことだ。

「俺は英雄になることなど可能なのか。」

 いや、考える暇なんてない。エルは今も自分の生命の存在に葛藤して苦しんでいる。

 ただそうなる前にエルの殺人癖など矯正する。

 さもなければ、いつかは俺にさえ殺戮の刃を向ける気がする。


 ただ俺は修羅に転生する勇気がまだ足りなかった。

 自分の全てが消えることが怖かったからだ。

……奪還戦に赴く。そうすれば、決意は固まる気がした。

 蒼天の中、頭は真っ白になる。これで終わるわけにはいかない。何者になるかは俺が決める。

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