第一章 一話 作戦決行前
田園風景のどかなあぜ道、青年は腰に刀を携え、私の先を歩む。
「なぜ装甲を置いてきた?」
記憶の補足として聞いておこう。
「疲れたから。鉄の塊は重いしな。」
それはどっちに対して言っている。聞いてもいいが、後でにしておこう。
「ここは涼しいな。」
実際、帝都の大地は冷たい。ひんやりとどこまでも広がり続けるような優しい感覚だ。
「寒い冬になるからな。凪いでる風も寒くなるもんだ。」ユヅキはこちらを見ようとはしなかった。
「寒さには耐えられないのか?」
冗談交じりのさりげない質問。ユーモアを混ぜたつもりだ。
「いや、冷たい風は好きだ。」ユヅキは歩みを止めずに声を発する。
「そうか。たしかに…」
わたしはその時、気づいた。敵の位置を。
「どうした?」怪訝そうに青年はこちらを見た。
「微量ながら生命反応を検知した。町外れだと言うのに人が山の方角にいる。5人。」
「検知……?索敵ができるのか?」
「まあな。装甲があれば、他にも色々とできる。戦闘による単純能力の強化以外に特殊能力の
「ここだ。ここから行くぞ。」彼は指を差す。雑木林が見えた。命がけの奪還戦になるであろう。
「勝算はあるのか?」
「確率なんて数字だよ。どうにかするのは自分さ。
それにお前は色々できるんだろ?100%の勝算にしてみろよ。」
いつも以上の力を発揮できる気がした。
「それに一人じゃないだろ。お前の援護をするさ。」
「期待してる。」ぽろんと言葉が出た。利害関係の一致により同行しているのだ。期待しているという言葉に偽りはないのかもしれない。
「俺もだ。」
「装甲の
「見てみないと分からない。」
霧を纏っていた山は遠くから見る悲しげに染まる青い景色とは違い、紅葉が威風堂々と凪いでいる。わたしたちは夕日色の絨毯を後にした。
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