第七話 反逆者達
日の光で目が覚めた。風が涼しく、陽光が暖かい。窓からだ。可愛らしい窓に赤いカーテンが印象的。
「暖かい」家の温もりを感じた。感じるはずないのに。
我にかえる。
状況把握。一夜乗り越えたらしい。今より以前のことを思い出す。迫りくる追手を乗り越えて、人知れぬ山道に身を隠した。そこであったことは把握してる。
そして今は埃の被った椅子に座っていた。今、索敵機は使えない。恐らくだが、あの男がわたしを匿ったのだろう。
「なぜ匿う…?」とっとと地下に突き出せばいいものを。なぜそれをしない?
考える。あの男は何も知らずわたしを匿った、知らなかったとして、それは帝都への反逆である。追われる立場となる。
「どうでもいい。」自分の心配を。
わたしは兵器であり、最大の機密情報だ。
「兵器……。」ふと思い出す。地下のイカれた科学者に言われたことを。
『貴方は他国への決定的、切り札になる。海を焼き。絶対障壁で国を守り、このトウキョウに革命をもたらす。そう
、私たちに革命をもたらす。殺戮を繰り返し我が国の英雄となり、死の天使となる。』
望んでなどいない。わたしは戦争の道具になんてなりたくない。
それが私の逃げる唯一の理由だった。人を殺すために生まれた化物そんなものは願ってなどない。
決意。ゆっくりと手を結んで広げる。上半身に異常はない。ただ、装甲を持っていない。私はそれを装着することで自己強化ができるという能力を持つ。しかし手元には今現在、存在しない。もともと、装甲は帝都から一つしか盗めなかった。残りの5つは全てやつらが持っている。
装甲が一つもないことは戦闘において致命的だ。
「探さなきゃ。」
手を握りしめる。皮肉だな。武力に対する抵抗手段が武力だけなんて、自分は非力だ。神にでも成れというのか。
立ち上がる脚が重かった。だが時間がない。
「まるで心は人間みたいだな」扉の側を見る。
そこには死闘を繰り広げた、敵だったものがいた。
「味方だ。」黒髪の青年は真剣な顔つきだった。軍人にこんなやつみたことがある。
「信用できない。わたしと生身で殺り合いができる人間なんて」装甲がないと言えど多少の回避技術はメモリーにインプットされてる。逃走の再開だ。
「違うな、殺し合いをしたつもりはない。蒸気エネルギーの動力炉へと繋ぐ供給回路を絶っただけだ。直後、一時的にオーバーヒートしたらしいが」
「壊した?」
どうやらコイツを倒した後、装甲の
「あと、お前を突き動かすエネルギーが石炭だけじゃないことは知ってる。実際お前は今、蒸気エネルギーの供給が切れても、思考し考察して、活動を継続している。器用だな、西洋の人形は。自我が芽生えるなんてすごいもんだ。」さぞ、興味深そうに顎を手で触る。
「別にエンジニア気取りの考察は構わないが、私を追ってるのは帝都の猛者だ。攻撃手段の乏しいわたしは決して相手にはなり得ないだろう。」
「そうか、お前の甲冑を壊した俺がその責任を取るか。」
なんだこいつ。
「簡潔に教えよう。私と組むということは無謀であり、トウキョウの反逆者とみなされお前も私もロクな死に方はしないだろう。」
青年は目を伏せる。意図など理解不能だ。
「お前を助ける。それはもう決めたことだ。」
理解不能。理由などないのではと思った。
そして呆れた。同時に人間の笑顔を初めて見た。
「ただ、憲兵との鬼ごっこはごめんだ。あまり目立つ行動はするなよ。」
男は手帳から名刺を取り出す。丁寧な渡し方だった。
だからわたしは初めて人間としてに扱われた気がした。
「そうだな。お前のことはなんて呼べばいい?」
「エル」
地下よりも退屈せず、散々な一日が始りそうだ。
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