第六話 霧の中の死闘

異質な紅い閃光を視認。ヤツは暴走機関で襲ってくる。

強固で重々しい大剣を俺目掛けて振りかざした。

「この蒸気、お前が……?」紙一重で避ける。一般人なら避けられないし、致命の一撃となっただろう。

「死ぬ気の戦い、良い経験値になるかもな……。」焦る。突破口を考えなければならない。しかし、俺のポリシーとしては殺しは反対だ。敵を観察する。

鉄の脚は地面を蹴り付ける。恐ろしい速さで迫る細身の甲冑が西洋のチェスというゲームにでてくる精鋭ポーンにそっくりだった。

空かさず、ホルスターから拳銃を引き抜き弾を脚足目掛けて発射、応戦する。動く殺戮機械キラーマシンの走行速度は速い。高速だ。助走からのドロップキック。それを瞬時に身を屈め躱す。とっさの機転で前転。間合いに余白をつくり、その隙に弾をリロードした。

反撃。蒸気による戦闘のヒートアップ。蒸し暑く気が狂いそうだ。

「そこだっ!」鉛玉を走り続ける殺戮機械に打ち込む。高速の速さに目が慣れてきた。

必中。装甲が割れる。

だが、鉄の脚は大地を蹴り続けた。鉄の頑なな魂は貫けない。

一気に詰め寄られる。大剣に対し、鞘に入れたままの刀を使って自分を守る。

ただ、先ほどから、甲冑の中、疲労困憊(ひろうこんぱい)といった類の息遣いが聞こえる。どうやら、本体は人を模したものらしい。

蒸気が咆哮を挙げる。二回目の攻撃が来る

「わたしは虐殺の道具じゃないっ…!」訴え。懸命に訴える女の声だ。ヤツは大剣をぶん回す。細身の体型とはかけ離れた。化物火力だ。

重い鈍器は刀で受け流す。突進はひらりと身を持って躱す。しかし、それにも限りがある。

「来るなぁ!」女は何かを恐れている。異常なまでに。

コイツ何かに追われている…?だとしたらマズいな、見れば分かる『科学の結晶』だ。蒸気で動く最凶の殺戮機械キラーマシンだ。

大方なにか帝都や他国のヤバイ道具だろ。そんな危険物見て俺は生きて帰れるのだろうか?

というか今が肝心なんだ、この状況どう乗り切ればいい!?

鉄の怪物を見る。蒸気が溢れ出す、蒸し暑さのあまり吐き気がこみ上げる。

突破口。まず圧倒的エネルギーの押し合いに勝てるのか?

俺の射撃や剣術はさっきから精度が落ちてる。しかしあの怪物も手負いである以上変わりはない。

二択。

逃げるか。蒸気の源を絶つか。

逃げる隙があればいいものだ。視認する紅い閃光を放つものを。おそらくあれが動力源だろう。動きが鈍い。あれはどうやら相当ガタが来てるらしい。

「消えろッ!」殺意の篭った凶悪な突進

あー覚悟決めるか。一太刀に全身全霊を込めるんだ。まずはそのための用意だ。

拳銃で気休めの弾を満遍なく打ち込む。ヤツを限りなく最高の舞台で仕留める。目紛しく動くキラーマシンの行動を予測する。ヤツは回転斬りをした後は必ず後ろに下がる。

さっき、跳躍運動は全て観察していた。死ぬ気で挑む。タイミングが来たら、即座に抜刀して打ち込む。

瞬速で踏み込み抜刀。

重々しい一撃を躱しながら、敵の背後に回り込む。

重々しく刀で斬り付けた。轟々と燃える動力炉を砕く。山吹の火花が散る。赤にも、白にもなり得る。

威力を上げる。熱気を帯びた蒸気は山のマイナスイオンも掻き消した。

「止まれぇえ!」全身全霊の一撃。動力炉を砕き霧はうっすらと散会して行った。



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