・喜屋武沙織の場合

「あ~、つっかれたぁ……! 事務所に来たはいいけど、薫子さんがいないってどういうことだよ。ったく……」


 それから暫くして、ゴミ屋敷と化した梨子の家の掃除を終え、そのことを薫子に報告するために【CRE8】本社へとやって来た零は、あいにくと報告相手である薫子が外出しているとの報告を受け、談話室で休んでいた。

 買ったお茶を飲み終え、三人掛けのソファーに腰かけた彼は、思ったよりも重労働であったそれの疲れを表すかのように首の骨をポキポキと鳴らす。

 そういえば今日は結構朝も早かったなと、疲れを自覚した瞬間から込み上げてきた眠気に大きなあくびを放った零は、段々と意識を遠のかせていった。


(少しくらい寝ても文句は言われねえだろ。このまま、ひと眠りといくか……)


 腕を組み、ソファーに深く腰掛けて、瞳を閉じた零が静かな呼吸を繰り返す。

 微睡に身を任せた彼はリズミカルに寝息を立て、夢の世界へと旅立っていった――


――――――――――

―――――――

―――――

―――


――むにゅっ!!


「ひゃあっ!? えっ? なに~っ?」


「んぶぅっ!?」


 ――静かだった談話室に響く、女性の悲鳴。

 それを耳にする直前から顔面に何か柔らかいものが押し付けられていることを感じた零がくぐもった呻きを上げる。


 顔面にはやや固いものの感触があるが、その硬さが表面だけであることがはっきりと感じ取れていた。

 薄皮一枚隔てたその奥には、大きく柔らかく張りがある何かが確かにその存在を主張しているのである。


 そこで自分がいつの間にかソファーに寝転んでいたことに気が付き、顔面の上に誰かが腰を下ろしたということを理解した零はその誰かを退かすために自由になる右腕を動かして存在をアピールしようとしたのだが……ここで第二のラッキースケベが彼を襲った。

 ぐっ、と上げた腕は思った以上の高度まで達し、同時にやや開いていた右手がセーターと思わしき材質の服とその下に包まれている大きくて柔らかい何かをがっしりと掴んでしまう。


「んあっ……!?」


「むっ、ぐぅ……!!」


 やっべえ、と呻きながら慌てて手を離した零であったが、右手に残る感触が消えそうにない。

 まさか、下着とシャツとセーターの上からでもここまで強く感触が伝わってくるのかと動揺しながらもそろそろ呼吸が怪しくなってきた彼は、自分の顔の上に座る人物の太腿の位置を予想すると、そこにパンパンとタップをしてみせた。


「むぐで、むあふぁい……!」


「あっ!? れ、零くん!? うわ~っ! ごめんね~っ!!」


「むぐおっっ!?」


 そこでようやく、顔面の上の人物も事態を把握できたようだ。

 大慌てで立ち上がる彼女であったが、その際に思い切り反動をつけたことで零の顔にむにゅっと桃のようなヒップが強く押し付けられ、一層強くその柔らかさやら張りやらを感じてしまった彼が声にならない呻きを上げる。


 げほごほと止まっていた呼吸を再開した零に対して、問題を引き起こした張本人が手を合わせて謝罪の言葉を口にする。


「ごめ~ん! お姉さん、零くんがそこで寝てるのに気づかなかったよ~!!」


「喜屋武さっ、マジで、びっくりしましたって!」


 白のセーターに黒のパンツというシンプルな出で立ちをした沙織へと、呼吸を荒げながらツッコミを入れる零。

 どうしてこんなことになったのかと視線で彼女へと問いかけてみれば、慌てた様子の沙織がこう答える。


「いや~、実はガチャを引きながら歩いててさ~……激アツ演出が来たからうおおっ! ってなっちゃって、ソファーに零くんが寝転がってるだなんて気が付かないまま、思いっきりお尻をずし~ん、ってしちゃって……」


「歩きスマホは危ないっすよ、マジで。ソファーで寝てた俺も悪いとは思いますけど、人にぶつかる可能性があるんだから気を付けてくださいね?」


「は~い。お姉さん、反省してま~す!!」


 仕方がないなとは思いつつも、自分にも非があるだろうと思い直した零が緩い注意をすれば、沙織もまた軽く反省した様子を見せる。

 またしても尻による災難(?)に見舞われた零が、まさかあの占いが的中しているのか? と先の雑誌の内容を思い返していると――?


「……で、どうだった? お姉さんのお尻の感触は?」


「は、はい?」


 不意に耳打ちされた零が真っ赤に染まった顔を上げれば、意味深な笑みを浮かべた沙織が楽しそうな雰囲気を醸しながらこちらを見つめている様子が目に映った。

 改めて、物理的に彼女の尻に敷かれたことを認識した零が言葉に詰まる中、沙織は更に彼を困らせるための言葉を口にする。


「気にしないでいいよ~! これは事故だし、確認してなかった私が悪いからさ~! でも、どうせなら感想を聞いておきたいでしょ~? なにせ零くん、お姉さんに顔面ヒップドロップされながらおっぱい揉んだんだもんね~! どうだったか、気になるよ~!」


「ど、どうって聞かれましても……!」


 返答に困る質問ではあるが、正直に答えるならば……すごかったの一言だ。

 胸に関しては冬の厚着の上から揉んだとしてもあの柔らかさと感触だというのだから、たらばのたわわでHなたらばは伊達ではないと言わざるを得ない。

 しかし、今回の場合はより強く印象に残っているのは顔面に乗っかっていたお尻の方で、女性に跨られる経験などあるはずがない零にとっては、かなりの衝撃であった。


 柔らかさならば梨子の方が上だったとは思うが、沙織の場合は彼女と違って張りがあったというか、擬音で表すならば梨子がだるっ、というのに対して沙織はぷりっ! という感じだ。

 パンツ越しからでも感じる発育の暴力が、よくもまあこの服の下に大きな桃が収まりきっているなという印象を与えてきた。


 大きい。柔らかい。形もいい。張りもある。

 流石は元アイドルであり、プロポーション維持の努力を欠かさない沙織のお尻であると思わざるを得ないその魅惑のヒップに対する感想に困る零に向け、いたずらっぽい笑みを浮かべた彼女が言う。


「あれ~? もしかしてよくわからなかった? まあ、零くんも慌ててただろうしね~……じゃあ、もう一回同じことしてみる? それで感想を教えてほしいさ~! お願いを何でも聞く権利は山ほど残ってるし、ここで一回くらい使った方がいいって零くんも思うでしょ~?」


「んぐふっ!?」


 かなり過激なことを言いながら、胸と尻を強調するように揺らした沙織の姿につい咳き込んでしまう零。

 げほっ、ごほっ、と先ほどとは別の理由で呼吸を荒げた彼は、平常心を取り戻すと今度は強めに沙織を叱責する。


「喜屋武さん! 冗談でも言っていいことと悪いことがあるでしょうに! 本気で止めてくださいよ、そういうの!」


「あはははは、ごめんごめん! 零くんがかわいいから、ついついからかっちゃったよ~!」


「本当に、もう……! あと、このことは絶対に秘密にしてくださいよ! 配信でうっかりしゃべったりなんかしたら、炎上間違いなしなんですから!」


「わかってるって~! 大丈夫、大丈夫! お姉さんもその辺はわかってるさ~! あははのは~!!」


 不安だ、ものすごく不安だ……と、能天気な沙織の反応を目にして肩を落とす零。

 それでも彼女を信じるしかない彼が、おそらくは襲ってくるであろう火の手に対してどう対処するか悩んでいると……?




※喜屋武沙織の特徴


梨子より小さめではあるが十分に大きい

梨子と違ってストレッチをしているため、形も抜群

というより全般的に理想的な桃尻に近い

うっすら日焼け跡あり

普通にエロスの塊


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