11月30日(物理的に)尻に敷かれる零くん(+α)

・加峰梨子の場合

※時系列とかあんまり気にしないでください


――――――――――



「どうやったらここまでの汚部屋が完成するんですか!? っていうか、これもう全体的にひどいからゴミ屋敷ですよ!?」


「ひぃん……! 怒らないで、坊や。ママも色々あったの……家がこうなっていることにすら気付けなかった事情があったのよ……」


「ポケ〇ンの新作に夢中になってたことは陽彩さんから聞いてるんだよ! あんた、マジでまた縁切るぞ!?」


「げぇっ!? ひーちゃん、自分を売ったな!? 違うのよ! ニャ〇ハが立つのか立たないのかが気になってついついレベル上げし続けちゃっただけなんすよ!」


「ゲームよりも私生活を気にしろ! っていうか、どうせゲームやるなら配信でやれ! そんなんだからまた#配信しろしゃぼんが出回るんでしょうが!」


「ううう……! ごもっとも過ぎて何も言い返せない……ゆるちて、ゆるちて……」


 その日、零は薫子に頼まれて梨子の家に彼女の様子を見に行っていた。

 そこで目にしたあまりにもな自宅の状況に唖然とした彼は、腐海と化した梨子の家を掃除し始めたわけである。


 脱ぎ散らかした衣服や食べ終わったお菓子の袋が床に落ちているだなんて当たり前。

 食べかすや半分だけ食べて放置してあるコンビニ弁当や若干中身が残っているペットボトルなどが散乱している部屋は、到底人間が生きていける場所だとは思えないくらいだ。


 それら全てを洗濯機やらゴミ袋に放り込んでは少しずつ部屋を綺麗にしていった零は、泣きながら同じく掃除をしている梨子へとしかめっ面を見せて言う。


「……加峰さん、こういうこと言いたくないんですけど、ちゃんと風呂入ってます? なんか、臭いますよ?」


「うげっ!? ふふふ、風呂ぉ? あれ、最後に入ったのいつだったかな……? 三日? 五日? 一週間前、だっけ……?」


「……人間らしい生活を送ってないとどんどん自堕落になる一方なんで、せめて生活のルーティンだけは守ってください。お願いしますから」


「は、はい……ごめんね、坊や。本当にダメなママでごめん……」


 家から出ていなかったり、ゲームに熱中していたせいもあるのだろうが、長い間風呂に入っていないという梨子の言葉に女性としてどうなんだという表情を浮かべる零。

 まだ着替えているだけマシなのかもしれないが、それだって一日一着きちんと変えているわけではなさそうだし、そもそも不潔であることに変わりはない。


 頼むからもう少しまともな生活を送ってくれと、そう思いながらまた新たなごみを袋の中に叩き込んだ彼は、そこでふと床に落ちている雑誌を見つけると開いてあるページを何の気なしに読んでしまった。

 集中力が切れていたというか、少し休みたい気分だった零は、そのまま雑誌の占いコーナーへと目を向ける。

 小さなそこをじっと見つめた彼は、そこに書かれている文字を見て梨子に向けたのよりも複雑な表情を浮かべた。


【汚部屋の掃除中にこのページを見つけてしまったそこのあなた! これから暫く、あなたは異性の尻に敷かれる日々を送ることになるでしょう! 幸せかどうかはあなた次第ですが、ラッキースケベだと思うのが吉だと思いますよ! ラッキーパーソンは小柄な女性! あなたを災難から遠ざけてくれますよ! ただし――】


「はぁ……? なんだ、この占いは……?」


 血液型でも星座でもなく、かなり限定的な状況でこのページを見た人間という内容の占いに怪訝な表情を浮かべる零であったが、これも雑誌のジョークのようなものだろうと鼻を鳴らして笑うと途中で読むのをやめた。

 今はそんなことよりも掃除をさっさと終わらせてしまおうと、そう思いながら彼が前方にあったごみを取ろうと手を伸ばした、その瞬間だった。


「うおっとぉっ!? あっ、やばばばばっ! おんぎゃああっ!!」


「うぐえっ!?」


 突如、背中にズシンッ、という衝撃が走ると共に重い何かが体に圧し掛かってきたことでしゃがみ体勢を維持できなくなった零がそのまま前方へと倒れ込む。

 びたーん、と顔面をフローリングの床に叩きつけながらも受け身に成功した彼であったが、背中に乗った重い何かは動かないままだ。


 大きい……というより、やっぱり重い。

 柔らかいような気がするが、柔らか過ぎるような気もしなくもないそれがなんであるかと痛めた顔を擦りながら立ち上がろうとした彼の背後で、梨子の泣きそうな声が響く。


「おんぎゃああっ! 脚、攣った~っ!! 痛いよ~っ! 痛いよ~っ!!」


「う、ぐえ……っ! な、何が起きたのかと思えば、加峰さんがずっこけたのかよ……」


 ごろんごろんと脚を抱えながら床を転げまわる梨子の姿を目にした零は、己の身に起きた全てを理解した。

 おそらくはこちらへと近付いた彼女は何かの拍子に脚を攣ったか転がっているペットボトルを踏んだかして体勢を崩し、そのまま零の背中にヒップアタックをかましながらずっこけたということなのだろう。


 あの大きくて柔らかくてひたすらに重い何かは梨子の尻だったのかと、一切ドギマギもしないラッキースケベ展開にため息を吐く零。

 そうした後、痛みに喘ぐ梨子を引き起こした彼は、ぐずぐずと泣きじゃくる彼女へと声をかける。


「大丈夫っすか? 運動不足だからそんな簡単に脚を攣るんですよ」


「いだいぃ、いだぁい……!! ううぅ、運動ならパル〇ア地方を駆けまわってるっていうのに、どうして……?」


「冒険中はコラ〇ドンかミラ〇ドンに乗ってるでしょ。ってか、ゲームの話を持ち出さないでください」


 呆れ顔でツッコミを入れながら、再び掃除を再開した零が梨子の足を取ったであろうペットボトルをゴミ袋へと放り投げる。

 まさか、あの占いが的中することになるとはなと思いつつも、こんなのただの偶然だろうと、この時の彼はそう思っていたのだが……?




※加峰梨子の特徴


運動不足なので垂れ気味 

贅肉が付いているのでデカいし柔らかい

本人の体重がそこそこあるのでとにかく重い

不思議と全くエロくない

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る