ある種の拷問としか言いようがない
「うっ……!?」
沙織とスイがこぼした悩ましい声に、ついつい反応してしまう零。
いや、それだけならまだどうにかなったのだが、彼の目の前で繰り広げられている光景が実に問題だ。
揺れている、すごい勢いで。
天変地異を思わせる揺れが、四つの山脈を襲っている。
肩を叩くためのマッサージチェアの運動がそのまま彼女たちの上半身に伝わった結果、上半身の飛び出している部分が最もその影響を受けていた。
グオングオンという駆動音が響く度に小刻みに振動する胸たちが織り成す光景に息を飲む零は、官能的な二人の声にドキドキと心臓の鼓動を早めていく。
「あっ、んんっ♡ やっぱり、肩をマッサージしてもらうのは、気持ちいいさ~……♡ いつも凝っちゃって、大変だし……はぁんっ♡」
「わーも、同ずでっ♡ ああっ♡ 気持ぢ、い……♡」
そりゃあ、そんなにデカいものが二つもくっついてれば肩も凝るでしょうよ……というセクハラ発言をぎりぎりのところで飲み込む零。
いや、おそらくはそんなことを言われてもこの二人は気にしないだろうが、今現在、すごいオーラを噴き出しながら自分を見つめる人物の存在を感知している彼は、恐る恐るその人物へと視線を向ける。
「……どうしたの、零くん? なんだか、目が吸い寄せられてるみたいだけど?」
「いや~……その、何かの勘違い、じゃないかなぁ……?」
「そう? 私の目には、零くんがたらばのたわわなたらばを凝視してたように見えたけどな~……?」
「うぐぅ……!?」
ニコニコと朗らかな笑みを浮かべているように見える有栖だが、どうしてだかその笑顔が怖い。
自分の中にある罪悪感がそう感じさせているのかはわからないが、今の彼女が不機嫌であることは間違いなかった。
黒羊芽衣の出現を感知した零が、これ以上彼女を刺激せぬよう気を払う中……そんな二人のやり取りに意識を割く余裕のない沙織&スイのコンビが、マッサージチェアの上で喘ぎ続ける。
「んんっ♡ はっ、ああっ♡ これ、きもちいいっ♡ あぁあっ♡ あっ、あ~っ……♡」
「頭、真っ白になるっ♡ んんっ♡ はぁぁ……っ♡」
「だめぇ♡ こえ、とまらないっ♡ あっ♡ あっ♡ あっ♡ あっ♡ んあぁぁ……っ♡」
「
目を半開きにした沙織が頬を赤らめながら官能的な喘ぎ声を漏らす。
びくんっ、びくんっと体を震わせるスイが甘く切ない声で喘ぐ。
揺れる胸と、卑猥な姿を晒す彼女たちと、理性を揺るがす嬌声に限界を迎えた零は、不意に大声で有栖へとわざとらしい形で声をかけた。
「よ、よ~し、喜屋武さんと三瓶さんも見つかったし、あっちにいる秤屋さんをからかいに行こう! そうしよう、ねっ!?」
「あっ、うん……別にいいけど……」
時に人には、からかったりツッコんではいけないラインというものがある。
零にとってはそれが今で、自分がこれ以上彼を責めるともう完全に零は崩壊すると直感した有栖は、黒羊モードを止めると素直に彼の言葉に頷いてあげた。
くるりと踵を返し、猛スピードでマッサージチェアから離れていく零の背後では、まだ沙織とスイが官能的な声を上げ続けている。
「んんっ♡ は~っ♡ は~っ♡ あっ、んっ♡ んふぅっ♡ いっ、くぅ……っ♡」
「んんんっっ♡ んん~~っ♡ だめ、だぁ♡ こえ、でちまっ♡ あああっ♡」
あれは確かに目に毒だなと、この場に自分たち以外の人間がいなくてよかったと二人の姿を目にした有栖が思う。
女性である自分も少しドキドキしてしまうんだから、異性である零はなおのことそうなんだろうなと思う一方、先の足つぼマッサージの時よりも彼が動揺していることにちょっと面白くなさを感じた有栖は、ぷくっと頬を膨らませながら零の背中を指で突くことでその不満を露わにした。
「あの、本当にすいません。謝るんで、それ以上は責めないでください……」
「……別に責めてるわけじゃあないもん。怒ってもないもん」
零が限界ギリギリなのはわかっているが、それでも自分にも意地というか、乙女心のようなものはあるのだと、そう主張すべく彼の背中をツンツンと突き続ける有栖は、沙織とスイとは打って変わった地獄の囚人のような絶叫を上げる天を放置して、愛らしいアピールを続けるのであった。
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