二期生、温泉ランドに行く

いきなりトラブルだぞ、二期生!

「いや~、みんなで温泉なんて楽しみだね~! お姉さん、ウキウキが止まらないよ~!」


「大きいお風呂! しかも屋内の! たげ楽すみだ!」


「コラ! はしゃぐ気持ちはわかるけど、そんなに慌てないの! まったく、なりはあれなのに振る舞いは完全に子供なんだから……」


 夜十時、とある会員限定の温泉施設の女子更衣室にて、そんな会話を繰り広げる女性が四人。

 彼女たち以外には誰もいないロッカールームの中で服を脱いでいるのは、おなじみ【CRE8】二期生の女性陣だ。


 楽しそうに話す沙織と都会の豪華な温泉施設を前にはしゃぎ続けるスイ、そしてそんな彼女を窘める天の話を聞きながら、有栖は若干の緊張を抱いていた。

 もたもたとした動きで服を脱ぎつつ、同期たちの方をちらちらと見やる彼女の前で、誰よりもはしゃいでいるスイが勢いよく服を脱ぎ散らかしていく。


「わ~い! 温泉、温泉!!」


 子供のように騒ぎながら裸になった彼女は、ぴょこぴょことその場で飛び跳ねて興奮を露わにし続けている。

 雪のように真っ白な肌と長い銀色の髪は更衣室の照明の光を浴びてキラキラと輝いており、無邪気なその姿はまるで妖精のようだと有栖は思う。


 ただ、そうやってはしゃぐスイの楽し気な笑顔よりも動きに合わせて上下に揺れる大きな胸に目を奪われてしまった有栖は、そっと自分の胸を撫でると同期たちにバレないように小さくため息を吐いた。

 自分の方が年上なのに、この発育の差はどういうことなのか……と、人知れず凹む彼女であったが、その隣で更に凹む人物が盛大に愚痴をこぼす。


「は、腹立つ~っ!! どうしてそんなたゆんたゆん揺れるのよ!? ってか、肌白っ!? 完璧過ぎて頭にくるんだけど……!!」


 スイに続いて裸になった天は、真っ白な彼女の肌と揺れる二つの雪玉を見つめながら、真っ平な自分の胸を触って歯軋りした。

 四人の中では沙織と並んで最年長であるはずなのに、胸のサイズは最小であるという事実に大人気なく悔しさを露わにしていた彼女に強く同意する有栖であったが――


「よ~し、準備完了! これでいつでも温泉にGOできるさ~!」


「ぴえっ……!?」


「おうっ……!?」


「だべぇ……!?」


 ――直後、圧倒的な破壊力を持つ二つのパイナップル砲弾を目の当たりにした瞬間、頭の中が真っ白になってしまった。


 日に焼けた健康的な小麦色の肌と、引き締まったウエスト。

 そこに加えてドカンっ、と音を立てそうなサイズの胸と尻を目にした有栖は、スイや天と同じく凄まじい衝撃を覚えて唖然とする。


 大きいことは知っていたが、こうして改めて見てみると本当に規格外だなと、二期生随一のサイズを誇るたらばのたわわなたらばを目の当たりにした三人は同じことを考えていた。

 そのサイズたるや、大きいと思っていたスイのそれが霞んで見えてしまうレベルで、しかも形も抜群となれば恐ろしいとしか言いようがない。


 揺れ方に関してもたゆんたゆんだなんてかわいいものではなく、ばるんっ! か、どたぷんっ! という重々しい擬音が似合う始末だ。

 そんな擬音どころか揺れる胸すら持っていない有栖がに深いため息を吐きながら視線を下に落とせば、これまた見事な桃がその目に映る。


(大きいなあ……! おっぱいもお尻も貧相な私とは大違いだよ……)


 ウエストも太腿もしっかり引き締まっており、お尻もまただらしなさを感じさせないツンとした上向きをしているのだが、その上で目を見張るくらいに大きい。

 水着になったらこちらも映えるのだろうなと、形と張り、そして大きさまでもを兼ね備えた南国産の巨大桃の素晴らしさを目の当たりにした有栖が、この数分で何度目かわからないため息をこぼした途端、そのお尻に沙織が手を伸ばしてきた。


「ぴゃんっ!?」


「むふふふふ……! 有栖ちゃん、いいお尻してるね~! 小っちゃくてぷりっとしてる、かわいい小尻ちゃんさ~! お姉さんのお尻は大きいから、羨ましくってしょうがないよ!」


「そ、そんなことないですよ……! 喜屋武さんのお尻の方が魅力的ですって……!」


「え~? そうかな~? 有栖ちゃんのお尻も素敵だと思うけどな~! なんだったら零くんに見てもらって、判定してもらおうか? どっちのお尻が好みかってさ~!」


「だ、だめですって! 冗談でも言っていいことと悪いことがありますよぅ……」


 もじもじとしながら、沙織なら本当にやりかねないその行為に対してツッコミを入れる有栖。

 同時に若干ムッツリの気がある彼女は、頭の中で零に対してお尻を見せる自分たちの姿を想像し、顔を真っ赤に染める。


 壁に手を突き、首を捻って背後へと振り向きながら、お尻を突き出す格好を取る自分自身とそれを見つめる零の姿を思い浮かべてしまった有栖は、ぶんぶんと頭を振ってその妄想を叩き出しながらも少しだけ期待のような感情を抱いてもいた。


 考えてみれば、胸に関しては幾度となく話をしてきたような気がするが……お尻に関してはそうでもなかったような気がしなくもない。

 零は胸に関しては巨乳が好きだということは知っているが、お尻に関する好みは知らないなと思いつつ、おそらくは沙織の大きめのヒップが理想的なんだろうなとは考えつつも、同時に自分のような小さなお尻が好みである可能性も捨てきれはしないんじゃないかと淡い期待のような感情を抱きながら、同期たちと共に裸になった彼女は、更衣室から大浴場へと向かって歩いていった。


「温泉っ! お風呂っ! 楽しみだ!」


「スイちゃんってばはしゃいじゃって~! 大浴場に入っても走っちゃだめだよ? 滑って危ないからね~!」


「……なんで歩いただけで揺れんのよ? なに? どういう仕組みなの?」


「あ、あははははは……」


 沙織はスイと、天は有栖と、それぞれ会話しながら歩いていく。

 あまり前を気にせずに扉を開いた彼女たちは、そのまま更衣室から出ると湯船が立ち込める大浴場へと足を踏み入れ――


「……はい?」


「あ、れ……?」


 ――と、思ったのだが、そうはならなかった。

 扉の先には予想していた光景は広がっておらず、長い廊下とラウンジのような広間がある。

 どう考えてもここは風呂場ではない。浸かるべき温泉も体を洗うためのシャワーも、何もないのだから。


 だがまあ、そんな問題は些末な話だろう。今現在の彼女たちにとってはどうでもいいことだ。

 目の前に立つ、浴衣を着た一人の青年と目を合わせていることを考えれば、そんなことはどうだっていい。


 改めて言っておくが、今の四人は一糸纏わぬ裸の状態だ。バスタオルのような体を隠すための物も何も持っていない。

 無防備に、無警戒に、前もろくに見ずに女子更衣室から明るい廊下のような場所に出てしまった彼女たちは、そこでばったりと青年……零に出くわしてしまった。


 その状態のまま、五秒、十秒と呆然とした表情を浮かべて彼と見つめ合っていた一同であったが……不意に込み上げてきた羞恥に顔を真っ赤にした有栖が、声にならない悲鳴を上げてその場に蹲ったことで遂に時が動き始める。


「~~~~~っ!?」


「あ、阿久津さん!? なんで!? わーたち、反対側の扉がら出でまったの!?」


「な、なんではこっちの台詞ですよ! なんであんたたち、裸なんですか!?」


「はぁ? 温泉なんだから裸になるに決まってるでしょ!?」


「ここはまだ温泉エリアじゃないですって! 更衣室では浴衣に着替えるだけだって注意書きがしてあったの見てなかったんですか!?」


「そっ、そそそ、そうなの!?」


「そうだよ! タオルの貸し出しもドライヤーの設置台も無い時点でなにかおかしいって気づくでしょ!? っていうか喜屋武さん、黄瀬さんから話を聞いてなかったんですか!?」


「うん? う~ん……ああ、言われてみればそんなことを言われたような気がするさ~! いや~、お姉さんうっかりしちゃったよ~! あっはっはっはっは!」


 零からの言葉を受け、少し考え込んだ沙織がぽんと手を打ってから能天気に笑う。

 彼女の言葉に合わせてゆさゆさと揺れるたわわな胸と、他の三人と違って一切体を隠すつもりのないその羞恥心皆無な態度を目の当たりにした零はその場に崩れ落ちるようにして土下座すると、時間帯や他の利用者を考えた小さな、されど必死の感情を込めた声で彼女たちへと懇願した。


「もうなんでもいいから、服を着てください! マジでお願いします!!」




―――――――――――

いつも『Vtuberってめんどくせえ!』を読んでくださり、本当にありがとうございます。

お話を楽しんでいる最中に申し訳ないのですが、今回は皆さんに大事なお願いがあって、こうして筆を執らせていただいております。


ありがたいことに、この小説は書籍化していただき、現在一巻が発売されているのですが、その売り上げが死ぬほど良くないです!

ライトノベルの売上自体が落ちているこのご時世、それは当然のことなのですが、売れないと次が出ないのもまたこの世の摂理、悲しいですね!


このままでは三巻はおろか二巻すら出せねえや!という状況で、実に厳しい状況に晒されております。

わがままな自分としてはたら姉も愛鈴もリア様もイラストにしてほしいな~、という欲がありますし、ここから先も本を出し続けたいという分不相応な願いも抱いています。

なので本当に意地汚いのですが、できる限りのことをしようと思い、こうして宣伝と購入のお願いをさせていただいております。


もし、よろしければの話なのですが、現在発売中の一巻を書店でお買い求めていただけると幸いです。

もう発売から数か月経っているので重版という形にはならないとは思いますが、初版が全て掃ければ二巻三巻にも希望が見えてくるかなと……。


自分が無料で読めるお話に金を払ってくれと言えるほどの価値がある小説を書いているとは思えないのですが、どうしても諦められないのでみっともなく足掻いてみることにしました。

本当に申し訳ないのですが、こんな自分のお願いを聞き入れてくださる方がいらっしゃれば、書店や通販サイトで『Vtuberってめんどくせえ!』第一巻をご購入いただけないでしょうか?

もう既に一冊買ったよ!という方よりもまだ買ってないな、という方にご購入していただけると本当に助かります。


ライトノベル界にVtuber小説というジャンルを浸透させ、その数を増やしたいという自分の夢を応援していただけると幸いです。

お話を楽しんでいるところに水を差してしまい、本当に申し訳ないのですが、ガチのマジでお願いします!!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る