#敵も動きを見せてるぞしゃぼん
「パカパカパカパカ! めいちゃん、そろそろ機嫌を直してくれた頃パカ? 絶対に幸せにするから、吾輩のお嫁さんになるパカ!」
「い、嫌です! 私、あんな乱暴なことをする人のお嫁さんになんかなりたくありません!」
しゃぼんの操作の下、くるるがアル・パカーノ伯爵の屋敷を目指している頃、その屋敷の中では連れ去られためいが伯爵からの求婚を受けていた。
当然ながら村を破壊した上に自分を連れ去った彼の告白に彼女がいい返事をするわけもなく、震えながらも拒絶の意を示すめいであったが、伯爵には諦めるつもりはこれっぽっちもないようだ。
「そんなこと言わないでほしいパカ~! 吾輩のお嫁さんになれば毎日美味しいものが食べられるし、綺麗な服もアクセサリーも手に入れ放題パカよ~!」
「そんなものに興味はありません。私をめーめー村に帰してください」
「う~ん、強情パカね~……でも、そんなことを言ってていいパカか~?」
懐柔を続けるアル・パカーノ伯爵が、頑ななめいの反応に対して悪い笑みを浮かべる。
くくく、と喉を鳴らして笑った彼は、その言葉の意味を問いかけるような視線を向けるめいへと非常に姑息な脅迫をし始めた。
「あんなちんけな村、吾輩がその気になれば簡単にぺちゃんこにできるパカ。それをまだ残しているのは、あの村を大切に想うめいちゃんのためなんパカよ?」
「ど、どういう意味ですか……?」
「めーめー村は、半分くらいは壊されてるけど、まだ頑張れば復興できるくらいの痛めつけで勘弁してやってるパカ。今頃、村人たちはなんとかして壊れた家屋や田畑を修復しようとしている頃だろうが……そこを再び吾輩の配下たちに襲撃させたら、どうなると思うパカ?」
「そ、そんなっ!? そんなひどいこと、止めてください!」
めーめー村を半壊程度の被害で抑えたのは、こうなることを見越しての策略であったと……めいが自分との結婚を拒むのなら、今度は徹底的に村を破壊してやると語るアル・パカーノ伯爵の言葉に、顔を真っ青にしためいがなんとかその襲撃を止めようとする。
一気に反応が変わった彼女の様子に満足気な笑みを浮かべた伯爵は、特徴的な笑い声を上げながら脅迫じみた取引を持ち掛けてきた。
「パ~ッカッカッカッカ! あの村を助けたいと思うのなら、めいちゃんが取るべき行動は1つパカ! すぐに返事をしろとは言わないけど、いい答えを期待しているパカよ! パ~ッカッカッカッカ! パ~ッカッカッカッカ!」
「うぅぅ……」
綺麗ながらも、脱出が困難な部屋にめいを1人残し、上機嫌な様子でその場から去っていくアル・パカーノ伯爵。
その背を見送るめいががっくりと肩を落とす中、彼女の陥落が間近であることを感じ取った伯爵は手下の毛玉たちに命じて結婚式の準備をし始める。
「さあ、お前たち! 吾輩のめいちゃんの結婚式の準備を始めるパカ! 大きなウェディングケーキと最高の婚約指輪を用意するパカよ!」
「モコ~ッ!!」
伯爵の命令を受け、式場となる大聖堂で慌ただしく動き回って結婚式の準備を行っていく毛玉たち。
待ち望んだ瞬間の到来が刻一刻と近付いていることを喜ぶ伯爵がほくほく顔を浮かべる中、大聖堂の扉を開いてボロボロになった毛玉が彼の下に飛び込んできた。
「た、大変モコ、伯爵様~っ!!」
「ええい! なんだやかましい! これから吾輩とめいちゃんの結婚式が行われるというのに、そんな恰好でどうした!?」
荘厳な式には相応しくない毛玉の格好に激怒するアル・パカーノ伯爵であったが、彼の報告を聞くつもりはあるようだ。
どっかりと椅子に座る彼へと、よろよろと近付いていった毛玉が力を振り絞って緊急事態の報告を行う。
「あ、あの旅人が、我々の警備を突破してこの屋敷に近付いているモコ! もう少しでここにやって来てしまうモコーッ!」
「な、なんだと!? めいちゃんとデートした、あの旅人パカ!? 森の中で始末しろと命令したのに、失敗したパカか!?」
「あ、あいつ、滅茶苦茶強くって……我々も蹴散らされっぱなしになってますモコ!」
「ええい、何たることパカ! 役に立たない手下どもパカ……!!」
結婚式を目前にして、思わぬ邪魔者が現れたことに頭を抱えるアル・パカーノ伯爵。
その様子にわたわたと慌て始めた毛玉たちが右往左往する中、不意に顔を上げた伯爵が苦渋の判断の末に下した命令を出す。
「こうなったら仕方がない……毛玉ドーベルを解放するパカ! あいつらに旅人を始末させるパカよ!」
「えっ!? け、毛玉ドーベルを出すんですモコ!? あいつらはあまりに危険で、旅人を始末した後に我々が再び確保できるかどうかわからないですがモコ……」
「後のことなんて知らんパカ! 今は結婚式の邪魔者を排除するのが優先パカ! さっさと言われた通りにするパカよ!!」
「りょ、了解しましたモコーッ!!」
アル・パカーノ伯爵からの命令を受けた毛玉たちが、何処かへと大急ぎで駆けていく。
その姿を見送った後、忌々しい旅人ことくるるの顔を思い浮かべた伯爵は、苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべながら怨嗟の言葉を呟いた。
「今に見てるパカよ、邪魔者……! 人の恋路を邪魔する奴は、アルパカ神からの罰が与えられるってことを教えてやるパカ……!」
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