Love or Dream


「……えっとぉ?」


 真逆の言葉を発した奈々と羽衣へと首を傾げながら間抜けな声を漏らす零。

 自分とは反対の意見を発した相方と数秒見つめ合った彼女らは、それはそれとしてといった雰囲気で更に自分の意見を推し進める。


「いいでしょ、沙織さん! スタイル抜群で性格最高のお姉さんなんて、嫌いになる要素ゼロじゃない! 沙織さんも零くんのこと気に入ってるみたいだしさ~! 私的にも、零くんが沙織さんを支えてくれるなら安心っていうか、なんていうか……わかるでしょ!?」


「いや、その……俺と喜屋武さんはそんなんじゃあないっすし、向こうは完全に俺のことを弟みたいなもんだと思って可愛がってるだけなんで、気に入ってるっていっても男性として見られてるわけじゃあないと思うんですけど……?」


「そんなのこれからの努力次第でどうにでもなるって! 零くんならきっと沙織さんも落とせる落とせる!!」


「えぇ……?」


 なんて無茶なことを言うんだと視線で語る零が引き攣った笑みを浮かべながら奈々を見やる。

 奈々の方は割と真面目にこの意見を述べているのか、そんな零からの視線もまるで意に介していないようだ。


 彼女に対してどう反応したらいいのかがわからない零が視線を泳がせる中、奈々の意見に反対する羽衣が2人へと言い聞かせるようにしてこう言った。


「阿久津くん、その馬鹿の言うことに耳を貸しちゃ駄目よ。直接人前には出ないとはいえ、あなたと沙織さんもタレント業をしていることは間違いない。人気商売をしている人間に恋人がいるだなんてことがわかったら、それこそ引退レベルの炎上になっちゃうわ」


「そ、そうっすよね! いや、元々そんなつもりはないんですけど……」


「そもそも、沙織さんは私たちとの約束を実現するために今も一生懸命に努力してる。それをよく知るあなたが、その邪魔になるようなことをするわけないわよね?」


「あ、あの? 俺の話聞いてます? 俺は最初から別にそんなつもりはないって――」


 一見、冷静に見える羽衣ではあるが、彼女も自分の話を聞いていないように思える。

 2人とも未成年だし、お酒は飲んでいなかったはずなんだけどな……と、妙にヒートアップしている2人に翻弄される零であったが、彼女たちはそんな零のことを放置しておいて、お互いの意見をぶつけ合い始めてしまった。


「甘い、甘い! 要はバレなきゃいいんでしょ? Vtuberなら隠すことくらい簡単だし、証拠もないんだから開き直っていれば大丈夫でしょ!」


「万が一バレた時にどうするかって話よ。恋人を作るだなんて、アイドルにとって百害あって一利なし! スキャンダルを避けるのは当然の話でしょう!?」


「自分の夢を応援してくれる人が傍にいることで勇気付けられることだってあるじゃん! 零くんならその役目にうってつけだし、相手としても悪くないでしょう!?」


「それはそうかもしれないけど、恋人になるかどうかは別問題よ! 不要なリスクを抱える必要はないでしょ!?」


「アイドルもVtuberも人間なんだから、恋愛くらいしたっていいじゃん! プライベートが充実してこそ、仕事でもいいパフォーマンスが出来るようになるってのも間違いないでしょう!?」


「あ、あの~……お、落ちついてくれませんか? ここ、俺たち以外にも人がいますし……ね?」


 段々と大声で言い争いをするようになった奈々と羽衣をやんわりと窘める零であったが、既に2人には彼の声は届かなくなっているようだ。

 ああだこうだとお互いの意見をぶつけ合う2人の様子に大きく溜息を吐いた零は、半泣きの表情を浮かべながらこう呟く。


「アイドルも大概、めんどくせぇ……!!」



――――――――――


すいません!ちょっと仕事が忙しくなってしまって、短編の途中なのですが少し更新が止まると思います!

7月に入るまでは多分、更新出来なくなってしまうので、皆さんをお待たせしてしまうと思うのですが……ちょっとだけ、お待ちください!



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