第71話 やべぇ奴の人探し
《side東堂歩》
登校したことで嫌がらせ発覚、からのソフィアの唇を見せつけるように奪ったことで、喧嘩を売ってきた馬鹿に関節的な宣戦布告をかましたのが朝のイベント。
代償として一般ぴーぽーのイメージが消滅し、クラスのほとんどからドン引きの視線を向けられたが、特に支障はない。
「よう裏切り者。朝からいい身分だなこの野郎……!」
「いやー、アレは真似できないよ。一周回って尊敬する。いやマジで」
特に仲の良い友人コンビの片割れが、嫉妬で血涙(幻想)を流しいるだけなので、本当に支障はない。
「さっさと吐け……!! 何故お前みたいな奴に、花園さんみたいなスーパー美少女な彼女ができる!?」
前言撤回。やっぱり支障はあったわ。モテない奴の嫉妬が耳障りだ(笑)。
「安心しろ親友。ソフィアは別に彼女じゃねぇよ」
「ふざんけな!! 二日連続でクラス内でキスを、それも見せつけるようにしやがったろうが!! それで彼女じゃねぇなんていいわけが通るか!!」
「キスぐらいでピーピー言うなよ。ありゃ恋愛云々とは別だ。ただ必要だったからだ」
「じゃあ俺も必要なら花園さんにキスしてもいいってのか!?」
「本人の同意があればいいんでね?」
「えぇ……」
多分、いや間違いなく許可しないだろうけど。だってアイツの美貌、マイフレンドの恩寵だし。そこらの男に触れることを許すような、安い代物じゃねぇよ。
だからクラスの男子諸君。ワンチャンあるかもとザワついてるところ悪いが、叶わぬ夢だから変な希望を持つなよ?
ましてや俺の台詞を聞いて、アイツを尻軽だとか勘違いするなよ。下手に実力行使をしようとしても、正体は真性の狂信者兼テロリストだから返り討ちだぞ。最悪マジで殺されるからな。
「てかさ、キスが必要になる場面って何? 目的が全く想像できないんだけど」
「こそこそ隠れてる馬鹿を挑発した」
「どゆこと?」
「昨日のソフィアがやからしが気に入らなかったのかねぇ。登校したらさ、上履きに中身入りの缶コーヒーがぶち込まれてたんだよ。だから腹いせでもう一回キスしてやった」
「だから朝スリッパだったのね……」
「おう」
ちなみに現在は、生徒指導室に置いてあった予備の上履きを履いてます。
いや助かった。このあと体育館でバスケなんだけど、この学校って運動用の屋内シューズと上履きが兼用だからさ。
靴無しでワンチャン見学の可能性もあったし、本当に良かった。授業に参加したいとかじゃなくて、見学すると代わりにA 4のレポート書かされるから面倒なんだわ。
「……かなり花園さんがとばっちりな気がするんだが」
「むしろ元凶だろう。尻拭いに付き合わなきゃ張り倒してるわ」
「……お前、何か昨日の今日で随分とキャラ違くね?」
「あ、それは思ってた。猫かぶるのは止めたんだね、歩」
「まーなー」
流石にこうも舐められてると、特に実害が出てるとなるとな──ステイ。コイツら、今何て言った?
「……え、俺が猫被ってるの知ってたのキミたち?」
「お前と長く付き合ってりゃ、なんとなく察する」
「歩はそれぐらい言動と思想がヤバい。そもそも嫌がらせを受けたからって、挑発としてクラス内で堂々と女子の唇を奪うのがヤバい」
「なんてこった」
あながち否定ができないのがまた。確かにキスでの挑発は、改めて考えるとどうなのって気はする。効果はバツグンだろうけど。
にしても、そんなに俺ってヤバいのかぁ。どんなに頑張って擬態しても滲み出てくるのかぁ……。
「ま、いっか別に。それよかさっさと移動しようや。体育の小林は面倒だ」
「それについては同感だが……。今のを『ま、いっか別に』で済ますあたり、やっぱりお前はおかしいわ」
「マイペースというか、フリーダムというか……」
なんか呆れられたが気にしない。ぶっちゃけもう、俺個人の印象なんて極めてどうでもいいし。
学校でどう思われようが、裏の世界じゃ関係ねぇ。好きに嗤って、好きに距離を置けばいいさ。──ただ喧嘩売ってくるのは許さん。敵意には敵意を。害には害を返す。
「でさ、こりゃ移動中の雑談なんだけども。なんかこう、キミらの交流関係の中で、こういう馬鹿なことしそうな奴はいない?」
「移動中の雑談でする内容ではないんだよなぁ」
「しかも見つけ出して反撃する気満々だし」
当たり前なんだよなぁ。
「馬鹿は反撃を受けないと学ばないんだぞ? 馬鹿だから」
「そりゃ、な。嫌がらせを実行している時点で、理屈なんて通じないんだろうけども」
「ちなみに大抵の馬鹿は、反撃を受けたことに驚いて被害者面で騒ぎ立てるまでがセットな」
「SNSに沢山いるよね、そういう人間……」
基本的には少数派のはずなんだけどな。ネットだと同類を見つけやすいから、自然と群れて大群のように見えるだけで。
あとは単純にネット匿名性を信仰しすぎてて、リアルの口を塞いで脊髄で喋ってる奴がいるぐらいか。
どちらにせよ、本性と言われればそれまでだが。
「『撃っていいのは、撃たれる覚悟のあるヤツだけだ』って、有名な名言だよなぁ。ネットとか見てると特にそう思う」
「んー。その台詞、個人的には好きじゃねぇんだよなぁ」
「ありゃ意外。アニメの名言なのに」
「アニメ自体は名作だと思うぞ」
ぶっちゃけ未履修だけど。……あの年代の作品、名作がありすぎて中々追い切れないんだわ。
ただシリーズがいくつも出ていて、高評価の声も多いのだから、客観的な視点から名作なのは間違いない。
「それでも台詞は好きじゃないのか」
「単純な文字だけな? ストーリーがセットなら、普通に胸アツになるとは思う」
「そうかな? 字面的にも変なことは言ってなくない?」
「個人的には、撃たれる覚悟なんて必要ないなと。必要なのは反撃の隙も与えず、遺恨が残らないレベルで絶滅させる覚悟だろって」
反撃を想定する時点で手緩いんだよ。反撃された時点で負けだと思って、終始徹底的に攻撃しなきゃ。
「多分それ、作中の状況とは根本からしてそぐわない考え方だぞ?」
「だから文章だけだって言っとろうに」
作中の名言を否定しているわけじゃねぇんだって。個人的な趣味嗜好の話をしてんだよ。
「──で、話を戻すけども。馬鹿の候補者ってお前ら知らんの?」
「思い当たる節はない。そしてあったとしても、今の台詞を当然のように語る奴には、残念ながら教えられない」
「同じく。犯罪の片棒を担ぐことなりそうなので」
「オイコラ」
なんて友達甲斐のない奴らなんだ。
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