第69話 やべぇ奴とスピリット
《side東堂歩》
結局、エターナルフレンドには何もしないでと念押しされ、話は終わってしまった。
それでメインの話題は終了。後は軽く雑談をして、そのまま解散となった。
そんなこんなで自宅なう。
「インノケンティウスねぇ……」
この世界に存在するという化け物。マイフレンドと並ぶラスボス枠。
今日教わった内容を踏まえて、スマホでいくつかのまとめサイトを検索し、怨霊系教皇の名を改めて調べてみたのだが……。
「やっぱりクソ野郎ってことしか分かんねぇか」
特に新しい発見は無し。ただただ碌でなしなクソジジイという感想しか浮かんでこない。……歴史の裏話を聞かされた今では、余計に『クソ』としか思えない。
「あとは、と……」
次に調べるのはキリスト教の総本山であり、件のラスボス系大怨霊が封印(仮)されているという教皇庁。
地図でびゃーっと眺めて、老害様の本体が存在するというサン・ピエトロ大聖堂を発見。
「……やっぱり諸共粉砕した方が早いと思うんだけどねぇ」
変に回りくどいことをするより、不意打ちで一気に仕留めに掛かった方が絶対良いだろうに。
いや、別にアレよ? 好き好んで大量破壊を推してるわけじゃないのよ? バチカンに喧嘩を売りたいとか、ましてや第三次世界大戦を引き起こしたいとか、全く思ってないよ?
これはぶっちゃけマジな意見だ。真面目に相手の戦力を分析した結果、全部を無視しての特攻粉砕が最善だと考えているだけだ。
だってそうだろう? 敵はマイフレンドに並ぶラスボス枠だ。これがどうしようもなくヤバい。
勘違いしてはいけない。マイフレンドは普通に対国家、いや対世界が成立する戦闘力の持ち主なのだ。
初見の被害は未だに憶えている。一瞬でキロ単位を石化させたあの力。発動はタメもないほぼノータイム。それでいて効果は問答無用の石化。ついでに射程は超広範囲。
どれだけの現代兵器を用意したって、アイギス一つで勝ち目がねぇんだ。ここにあの神出鬼没の転移魔法を組み合わせたら、軍隊どころか国すら一瞬だ。
適当な国の首都に転移し、アイギスを発動。また違う国の首都に転移。これを繰り返すだけで世界は終わる。現代社会が滅亡する。
それがマイフレンドだ。それが事実上の唯一神たるパンドラだ。
「少なく見積もって、マイフレンドと互角。いやマイフレンドが身を隠してることを考えると、力はもしかしたら上か?」
そんなマイフレンドと同等の化け物を、何で不意打ちで潰しにいかないんだって話だろ?
少なくともエターナルフレンドの証言では、頼れる警察サムおじさん、アメリカ合衆国でも返り討ち確定の戦力はあるという。……コレ、俺の見立てでは『羽虫を払うが如く』っていう修飾文がくっ付いてくるからな。
マイフレンドを基準に考えれば、冗談抜きでそのレベルだぞ。世界を滅ぼせるタイプのラスボス枠だぞ。
罠情報でおびき寄せるなんて言っていたが、罠に掛けるに相手が物騒すぎやしないかって。よしんば罠に掛けたとしても、倒すまでに相当な被害が出るのは明らかだし。
つまろ、どっちにしろ甚大な被害が出るんだよ。ラスボス枠が暴れる時点で、普通に世界の危機なんだって。
だったらバチカンに喧嘩、てか第三次世界大戦も覚悟で不意打ちかました方が良いだろって話よ。
「……やるか?」
色々と分析している内に、やっぱり独断専行してでも強襲かました方が良い気がしてきた。
てかアレでは? 第三次世界大戦云々って言っても、結局は裏の世界の話だし、案外なんとかなるのでは?
そもそも昔のローマ・カトリックが悪いんだしよ。俺やマイフレンドは自然発生だけど、老害様はローマ・カトリックが産み出したようなもんだし。
当時の堕落した倫理観。教皇というなんでもありな立場。征服等で獲得した神秘系の財と知識。
そうした諸々が合わさった挙句、誕生したのが大怨霊インノケンティウス八世。
こんなのを生み出した挙句、現代まで飼っているとかどう考えても罪では? 完璧に封印されてるならともかく、それすらできてないとか言い逃れできねぇだろ。
自分の意思で飛び回る核ミサイルと同じだぞ。今は飛ぶ気がないから大人しくしているだけで、その気になったらいつでも飛び出すんだぞ。しかも搭載されている性格はクソ確定してるんだぞ。
この辺を全面的にアッピルすればなんとかなるだろ。バチカンはバチカンで、洒落にならない黒歴史が精算されてむしろwin-winだろ。
「……えっと、時音ちゃんは……」
理論武装はなんとかなりそう。なんとかならなくても、リアル武装も添えれば押し通せそう。
ということで、次にやるべきは確認だ。ちょっと気になる点がある。
『もしもし。どうしました歩さん? 歩さんから通話が来るなんて思いもしませんでしたよ』
「いやぁ、夜中に悪いね。ちょっと裏の世界関係で質問したいことがあってさ。一つだけいい?」
『どうぞどうぞ。一つだけなんて言わず、ドンドンしてください。いっぱい雑談しましょう!』
「いや明日も学校あるし。そもそも明日は局で会うだろうに」
『つれませんねぇ……』
そんな子犬みたいな反応しても駄目ですぅ。質問結果次第では、これから忙しくなる予定なんだから。
「で、質問なんだけど。幽霊、てか怨霊? ああいうスピリット系の存在って、俺の物理攻撃でどうこうできる?」
そう。コレがちょっと不明すぎるんだよ。もし敵がイクリプスみたいな特性を持ってたら、俺単体の力では何もできない。襲撃して攻撃効きませんは洒落にならないからな。
花園と足並み揃えるなら、アーティファクトでも融通してもらえばそれで事足りるんだが……。
『変なことして取り憑かれでもしましたか? なんなら祓いにいきますけど』
「いや単純な興味。ホラー映画見てて」
『あー……。結論から言いますと、微妙なところです。歩さんは多分、イクリプスみたいな完全無効かどうかが疑問なんですよね?』
「そーそー」
『一応、スピリット系はあのレベルではないです。無効ではなく耐性程度ですね。ただスピリットの状態にも結構左右されます。物質に憑いてたり、実体化してたら物理耐性低めです。ただ代わりに攻撃力が増加。逆に霊体のままだと、物理耐性高めの代わりに攻撃力低下。そんな感じでしょうか』
「なるほど」
んー、一応は想像通りな感じかねぇ。ただ微妙なところか?
耐性ならぶち抜ける自信はあるが、相手さんも化け物ではあるし……。
「やっぱりそういうのって、相手の格とかでも上下したりする?」
『そうですね。ゲームのレベルと考えていただければ。レベルが上ならHPも高いですし、耐性スキルのレベルも高くなりますよね?』
「ふむ……」
やっぱりそうなるかぁ……。相手は怨霊レベルMAXみたいなもんだし、流石にキツいか?
『ただ同時に、スピリット系は気魄に弱かったりします。根幹が不安定な精神体なので、それ以上の感情を叩き込まれると存在が揺らぐんですよね』
「そうなん?」
『はい。お経やお祈りとかも、その性質を利用しているんですよ。信仰心を減衰されない魔力に載せて大ダメージを狙う、って感じなんです。なので魔力を使えない歩さんでも、気合いで殴れば割とイけると思いますよ?』
「なーるーほーどー……」
それは……いいことを聞いたな。我の強さなら定評のある歩さんだ。割と可能性が見えてきた気がする。
……この辺を踏まえて、ちょっと検証してみたいな。
「うん。おーけーおーけー。参考になったよ。ありがとうね時音ちゃん」
『いえいえ。お役に立てたようでなによりですし、頼っていただいて嬉しかったです』
「いじらしいこと言ってくれるじゃなぁい?」
相変わらずのお犬系。こういうところは素直に可愛いと思うのよねぇ。
「あ、でさ。今の話を聞いて、もう一つ質問したいことができたんだけど。いいかね?」
『どうぞどうぞ。なんでも答えちゃいますよ』
「日本って有名な怨霊が何体かいらっしゃるでしょ? その中でリアルにいるのってどれ? いるとしたらどうやって会える?」
『おやすみなさい』
なんでや!?
ーーー
あとがき
コメントを見たのですが、名前を書くのはアカンかったらしいです。そんな逸話もあるっぽいですし。
実際、今日気付いたら指先に急に小さなホクロ?(濃淡まばら、形歪)が誕生してて震えてます。ネット検索だと、碌なもんじゃなさそうな気配が。
明後日に皮膚科いかなきゃ……
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