第68話 やべぇ奴と女神の過去(面倒になってきたので省略) その三

《side東堂歩》



「あはは。確かにここまでの説明だと、そういう感想にもなるよね。大丈夫。これから登場するから」

「そろそろ飽きてきたから巻きで頼むわ」

「あ、はーい」


 いやマジで。全然怨敵出てこねぇなぁと思いながら聞いてたから、興味がかなり薄れてんだわ。


「まあ結論から言うと、インノケンティウスは、というかローマ・カトリックは、お母様に勝つことはできなかった。人の身じゃ神には勝てるわけがないんだ」

「お、そうだな」


 遠回しにお前は人間じゃねぇって言われた気がするけど、俺は大人なのでちゃんとスルーしてやろう。


「ただお母様を襲撃するのと並行して、どんな相手なのかを研究したみたいでね。で、唯一の女神ってことがローマ・カトリックにバレた」

「バレちゃったか」


 そっかー。


「当時の教皇であるインノケンティウスは、堕落した教皇の代表例みたいは奴でね。教皇にあるまじき強欲さで、お母様の力を欲した」

「ほー」

「でも勝てない。どうしても勝てない。──だから奴は禁術、忌むべき儀式に手を出した。それが【魂喰い】。またの名はソウルイーター」

「アポ?」

「何て?」


 いやスマン。何か突然聞いたことあるような単語が聞こえてきたから。


「悪い悪い。半分聞き流してたから、ちょっと勘違いした」

「そう? じゃあ説明にもど……ちょっと待って。え、聞き流してたの?」

「だって長いし」

「なーんーでーよー! 結構シリアスなところなんだけどこれ!!」

「だから長いんだよ!! 興味あるとは言ったけど、ここまで長いと興味が薄れてくるんだよ! 敵、インノケンティウス! 正体、怨霊! もうコレでよくね!?」


 よくよく考えたら、インノケンティウスがどんな相手か最初に言ってるし! 他の部分は普通に蛇足じゃねぇか!


「そうなんだけど! そうなんだけどさぁ!? 相手の来歴とか知っておかないと、色々と大変かもでしょう!?」

「いやもう、これまでの説明と、今のソウルイーターって名前、儀式って言葉で大体想像つくよ。他人の魂を食べて強くなるんだろ? その代わりに人間じゃなくなったとかだろどうせ」

「……うん」

「で、教皇の立場か何かを利用して、いっぱい魂取り込みまくった。最終的にマイフレンドに届くレベルにまで成長し、晴れてストーカー開始。チガイマスカ?」

「……ぅぅ、正解正解、大正解! なーんーでーよー!!」


 叫ぶな鬱陶しい。てか数行で終わる程度の内容をもったいぶろうとするんじゃねぇ。簡潔に説明する能力は社会に出て必須だぞ。


「何でそんなあっさりまとめちゃうの!? 大事な話なんだから、予想できてもちゃんと最後まで聞いてよ!」

「設定がありきたり。オタクを満足させるには淡白すぎ。もっと捻って」

「史実をどうやって捻れって言うのさぁ!?」


 歴史改変の事例なんてそこら中に転がってるだろうよ。歴史を語るのなら歴史を学べ。


「てか、今の時代ならSNSとかで現在進行形で生産されてるぞ。手本は沢山だ。政治、陰謀論、ジェンダー、あとは差別とかで検索してみ? 手のひらクルックルのアカウントばっかりだから」


 鶏に劣るレベルのダブスタ、ブーメラン製造機、支離滅裂なリアル宇宙人がいっぱいいるぞ✩


「そんな社会の闇を煮詰めたような代物は見たくないよ……」

「言うてお前もダークサイドじゃろがい」


 真性のテロリストが何言ってんだコイツ。どの面下げて言ってんだマジで。


「それにアレ、意外と見てて楽しいぞ」

「どこら辺が……?」

「頑張って人の皮を被ろうとしているところが滑稽で仕方ない」

「怪物の意見じゃん」


 お゛ぉ゛ん!?


「ま、ともかく。そっちの説明がつまらないのが悪いってことで」

「うぅ、酷い……」

「で、結局俺は何をすればええの? 塩持ってバチカンにでも殴り込みにいけばええの?」

「もっと酷い!? ナチュラルに宗教戦争をしかけに行こうとしないで!?」


 え。怨霊が相手ならソルト〇プラッシュじゃないの? 俺の伯方〇塩なら教皇庁ごと削り飛ばせるけど。


「元教皇の化け物を倒してってことはそういうことだろ? それともバチカンにいない系?」

「いや、一応アイツはサン・ピエトロ大聖堂の地下に封印されてるけど……」

「え、なに封印されてんの?」


 じゃあ別に喧嘩吹っ掛ける必要ないじゃねぇか。


「その辺も説明する予定だったの!! それを歩君がぶった切ったんでしょう!?」

「長いのが悪い」

「悪びれないねぇ!? ……んんっ。簡単に言うとね、本体は封印されてるんだけど、世界中にアイツの端末みたいなのが存在しているの。怨霊の集合体みたいな奴だから、そういうことができるんだよ」

「へー」


 群体生物みたいな生体してんのね。中々に面倒そうなやっちゃっな。


「じゃあ何か? その端末とやらをチマチマ潰していけと?」

「ううん。そんなことをしてもキリがないから。めっちゃいるし」

「めっちゃいるのか」

「うん。だからお膳立ては私たちの方でする。アイツは自身の端末と、自らの配下を使って世界中でお母様のことを探しているの。それを逆手に取って誘き寄せる」


 あー、はいはい。そうしてノコノコやってきたところを、俺が叩けと。いわゆる罠猟って奴だな


「……やっぱりサン・ピエトロ大聖堂ごと粉砕した方が早くね?」

「あのね歩君。私たち、テロリストと呼ばれる類の犯罪者だけど、それでも世界平和には色々と気を遣ってるんだよ? 世界一位の宗教の本拠地を堂々と襲撃したら、下手しなくても第三次世界大戦なんだよ」

「あそこら辺一帯はデカい老人ホームみたいなもんだから大丈夫だって」

「そう思ってんのは間違いなくキミだけだからね!?」


 えー。一度取り壊して新築にした方が、あそこの爺様たちも喜ぶんでねぇの?


「てかそもそもさ、本体封印されてんだろ? ならどうやって誘き寄せるんだよ」

「封印なんて形だけだよ。アイツがその気になった何時でも出れるような代物だから」

「封印の意味」


 何時でも出れる封印とか、それは最早ただの家じゃねぇか。


「ともかく! その時が来たら、私たちの方からちゃんと連絡するから!! それまで大人しくしててね!?」

「絶対に手っ取り早いと思うんだけどなぁ……」


 やっぱり駄目? そっかぁー……。




 ーーー


 あとがき

 作中の過激な発言の数々は、作者の思想とは一切関係ないので悪しからず。

 全てはやべぇ奴が勝手に考え、喋っていることです。……つまり生みの親の教育が悪いという反論は聞きません。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る