第61話 やべぇ奴VSサードポン

《side東堂歩》



 Q.スーパー美少女転入生が、初っ端からクラスの目立たないオタク系男子と関係匂わせという自爆テロをやってくれやがりました。一体どうなると思いますか? ……なお、自爆テロの巻き添えをくらった男子生徒は、反射的にスーパー美少女転入生の頭を引っ叩いたとする。

 A.休み時間のたびに吊し上げを喰らう。主に女子から。


「本当に最低だよねぇ。ソフィアちゃん、こんな酷い奴の何がいいのー?」

「そーそー。ソフィアちゃん超可愛いんだからさー。もっとイケメンで優しい友だちできるって。てか彼氏だって余裕でしょ」

「それともダメ男が好きだったりするタイプ?」

「あははは……」


 ……はぁ。こんな感じの会話が真横で毎回繰り広げられる訳ですよ。マジで一日中針のむしろ。

 特に最初は酷かった。スパーンッという音がクラス中に響いた次の瞬間、隣の席に集っていた女子たちから非難轟々ですよ。

 やれ『こんな可愛い子を叩くとかありえない』とか、『男が女に手を上げるな』とか、『すぐに暴力に訴えるのは人として最低』だとか。

 単に顔見知りなだけなのに、テンパった末に意味深な爆弾発言で巻き添えを食らったからだと弁解しても、だからと言って殴って良い理由にはならないと一蹴され。

 男子は男子で、触らぬ神に祟りなしと傍観を選択した奴らが大半で孤立無援。

 そんで一部の奴ら、ウェーイ系の気がある奴らは嫉妬か正義感か知らんが便乗しやがったので、そいつらは心の報復ノートに名前を記入した。

 グループチャットでゴルベ〇ザ戦の動画を送りつけてきたオギハギに関しては、いつか必ず〆ると決意。


「──帰りのHR始めるよー。席につきなさーい」


 まあ、学校生活はこの際どうでもいいと考えよう。一気に平穏から転げ落ちはしたが、もうこっちの日常はそこまで重要ではない。

 何もなかったからこそ学校生活に重きを置いていただけであって、世界の裏側に拘わるようになった今では非日常の方が楽しいのだ。

 日常を完全にぶっちする気は今のところないとはいえ、多少の悪評が立つぐらいは目を瞑っても構わないだろうと思う今日この頃。


「それじゃあ気をつけて帰るように。日直」

「起立、気をつけ、礼」


 という訳で、平穏な学校生活が遠のくのも承知の上で動くとしよう。非日常にれっつごーだ。


「ソフィアちゃん、放課後ってフリー? もし時間あったら、暇してる子たちで歓迎会しようかなって思ってるんだけど」

「女子会しよ! いいでしょ!?」

「あー、でもアレじゃない? ソフィアちゃん可愛いし、女子だけだと面倒な奴に絡まれそう。男子もいた方が良いかも!」

「マジで!? なら俺ら今日オフだから参加したいんだけど!!」


 相変わらずというべきか、エターナルフレンドの周りには人集りができている。てか、休み時間もそうだったけど、他のクラスの奴らも外から顔を覗かせてんのな。

 げに恐ろしきは顔面偏差値というべきか。戦姫レベルの美貌とか、そりゃ一般人からすれば麻薬レベルの代物なんだろうけども。

 だが残念ながら、そのお誘いを叶える訳にはいかないのだよ。


「あー、悪いんだけどねキミたち。そいつ、先約あるんよ」

「は?」


 反応キツくない? 何でそんな睨まれなきゃいけないのですか?


「だーかーらー。ソフィアちゃんは放課後は僕と出掛ける予定なので、その誘いは今度にしてください」

「え、何? いきなり彼氏面ですか? それはもう擁護できないぐらいキモイわ」

「転入前から知り合いってだけで、別にそういう関係でもないんでしょ? なのにわざわざ割って入るとかおかしいでしょ。こっちはソフィアちゃんのために歓迎会しようって話してんだからさ。空気読めよ」

「てかさ、本当に予定なんかある訳? 単に知り合いの立場利用してソフィアちゃんに無理矢理近付こうとしてるんじゃないの?」

「モンペか何かですか……?」


 何でこの一瞬でエグい勢いで詰め寄ってくるんだよコイツら!? 転入してきたばっかだぞソイツ! 過保護とかってレベルじゃねえぞマジで!

 周り見ろよ! あまりの勢いに便乗しようとしてた男子たちもドン引きしてんじゃねぇか!


「もう過激ファンや信者みたいに……」


 言葉の途中でふと気付いた。


「……」

「ひゅーひゅー」

「おいコッチ見ろやサードポン」


 スっと目を逸らすなこの野郎。あとその口笛吹けてねぇよ自分でひゅーひゅー言ってるだけじゃねえか。

 ……で、テメェもしかしなくともやったな? 故意かパッシブかは別として、マイフレンドと似た魅了的なサムシングが発動したな?


「予定、あるよな? てかなくても連行するが文句ねぇよな?」

「ハイ。ワーワー、アユムクントアソブノ、タノシミダナァ……」


 流石エターナルフレンド。笑顔で確認を取ったら凄い勢いで頷いてくれた。

 と言っても、拒否しようものならこめかみにセットされた俺のアイアンクローが収縮を開始してたのだが。

 いやー、穏便に済んで良かったよ本当に。


「んじゃ、本人もこう言ってるからさ。今日はコイツ、俺のものだからヨロシク」

「……はっ!? いや明らかに脅迫してるでしょうが!! ちょっと何やってんのアンタ!?」

「早くその手を離せ東堂! 今のお前かなり雰囲気がヤバいんだけど!?」

「おっと」


 何か女子たちが慌てて割って入ってきた。

 穏便に済まそうとするあまり、つい剣呑な気配を放ってしまってたっぽい。おかげで女子セ〇ムが悪化しやがったぞ畜生。


「……ねぇ。実は東堂君って隠れヤンキーだったりする? 何か変な迫力あったんだけど」

「ヤンキーは隠れないものでは?」

「隠れるのはヤンキーというより犯罪者……」

「口閉じろこのバカチンが」

「あぎゅっ!? ひ、ひたかんじゃぁ……」


 余計なこと言った馬鹿が悶絶してるが無視。軽く顎叩いて無理矢理黙らせただけだろうが。

 そしたら何故か女子セ〇ムが緩んだ。……てか、女子どころかクラスの連中微妙に怯えてない?


「犯罪、者……?」

「確かに暴力が手馴れてるような……」

「……つまり、ソフィアちゃんは何か弱味握られてる?」

「ねぇ、やっぱりコレ先生に言った方が。いやそれよりも警察?」

「猛スピードでクラスメートとしての信用が崩れていってる気がする」


 これも全てサードポンのせいである。コイツが来てから俺の学校生活は台無しとなってしまった。


「全ての元凶。……もう面倒だし処す?」

「大丈夫だよ皆!! ちょっとビックリしたかもしれないけど、私と歩君は大の仲良しだから! 過激っぽく見えるけど、これもずっとやってるコミュニケーションなんだ!」


 割と真面目に検討しようかなと思ったところで、エターナルフレンドが突然立ち上がった。なお、その顔には滝のような汗が流れている模様。


「……ソフィアちゃん。そんな必死になってるってことは、やっぱり何か弱味を……」


 はい順当な反応を頂きましたー! だって明らかに焦ってるもん。そんな状態で何を言っても説得力は皆無よ。


「いや違うよ!? 本当に歩君とは仲良しだよ!? もう親友って奴だよ!?」

「テンパってるところ悪いが、その反応がもう火に油って分からないキミ?」

「じゃあ仲良しって証明するから!」


 証明ね。この状況をひっくり返すような選択、サードポンにできるとは到底──


「んむっ!?」

「「「……は?」」」


 ……何故かエターナルフレンドの顔が近い。あと唇にすげぇ柔らかい感触が。


「──ぷはっ! ねっ、仲良し!!」

「……お前さ、一旦その頭カチ割って、約立たずな脳みその代わりに花束でも詰めてやろうか?」


 ねっ、じゃねえんだよ。何いきなりマウストゥーマウスしてくれてんだこの野郎。急展開なラブコメだってもうちょいムードやシチュエーションに拘るぞ。

 てか、予想外すぎてマトモに喰らっちまったじゃねえか。ファーストキスなんだけどコレ。しかもちょっと血の味がするんだけど。

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