第52話 やべぇ奴が仲間になった！（裏）
《side東堂歩》
極めて高度な政治的判断を要する交渉の末、俺とマイフレンドなパンドラ率いる【異端の花園】は同盟を結ぶこととなった。
そんな訳で、花園の主要メンバー（負傷中の一名を除く）と簡単な自己紹介を交わすことになったのだが……。
「はい！ という訳で、今日から皆のお友達になった東堂歩君だよー。皆、よっろしくねー！」
「「「「「……」」」」」
コイツら全く友好的な雰囲気出さないんだけどなんなの？
「おいコラ同盟相手に歓迎の言葉も無しかテメェら」
「何で今ので歓迎されると思ったんだキミは……。幼児向け番組みたいな気色悪い自己紹介されたら反応に困るだろう」
挙句の果てには保護者兼ボスから文句が飛んできやがった。これだから悪の秘密結社は。
「……はぁぁぁ。挨拶のシチュエーションに文句付けるとか、お前らコミュ障か何か？ しょうがねぇな。俺は優しいから、転入生verでもう一回やり直してやるよ。黒板どこ？」
「ないよ。そしてそうじゃないんだよ。頼むから普通にしてくれ。娘たちが警戒を解けないだろう」
「普通にしてるぞ」
「度し難いなキミは!?」
「なんだとこの野郎」
普段通りの言動で何でそんな文句言われなきゃならないんだ。ただちょっと人より茶目っ気に溢れてるだけじゃねぇか。
「……あの、お母様。同盟と仰いましたが、本当にコイ、彼を信用してよろしいのですか？」
「言い直しても不信感丸出しの時点で台無しな自覚ある？」
「そろそろキミは一旦黙ってくれないか？ 端的に言って説明の邪魔だ」
「同盟結んだ途端に遠慮なくなったなぁオイ」
同盟結んだ以上はキレたりはしないけども。さっきまで下手に出てたのが嘘みたいじゃねぇか。
まあ良い。マイフレンドがそういうならココは黙ろう。結局のところカルト連中に一番効くのは教祖のお告げだ。
「皆の気持ちも分かる。確かに彼、東堂少年はついさっきまで私たちと敵対していた。そして全滅一歩手前まで追い詰めた。そんな相手と手を組むのは確かに不安に思うだろう」
「でもしょうがないんだ。何故なら手を組まなければ私たちは壊滅してしまうから」
「黙れと言ったのが聞こえなかったのかなキミは!? 茶々を入れなきゃ死んでしまう生態でもしてるのかい!?」
「ごめんちゃい」
そしてあながちそのツッコミを否定できない自分がいる。
「……はぁ。ともかくだ。私の台詞が若干取られた気もするが、東堂少年との同盟は信用とか以前の問題なんだ。信用するのではなく、信用されなければ私たちが狩られる。とても残念なことではあるけれど、それが現実なんだ」
「お母様……」
……人が見逃してやると、仲良くしようと言ってるのに、何でコイツらはこんなに悲壮な雰囲気なんだろう？ 失礼か？
「……事実上の隷属ですか」
「でもお母様の安全のためなら……」
「それも仕方ないのかもね……」
「私たちが弱いばかりに……」
「……ああ、クソッ！ これも全部オレたちがしくったからだ……！」
「お前らマジでナチュラルに無礼な」
俺も大概だけどさ、お前らも当たり前のように喧嘩売ってくるじゃん。隷属じゃねぇよ同盟だって言ってんだろうが。
「武力的な意味で上下関係できてるのは否定しねぇけども。何をお前らはそんなに後悔してるんだよ。俺と敵対しないよう注意するってだけで、お前らの活動内容はそんな変化ねぇんだぞ」
組織が存続できるどころか、活動内容にもほとんど変化がない超お得な同盟だかんな？ 全滅寸前からの大逆転ホームランだからな？
「……でも一度下手に出たら、扱いが段々エスカレートするかもだし」
それでも納得ができないのか、バカ娘の内の一人がボソリと呟いた。……よく見たらお茶出してたフロイラインだなコイツ。
「はいそこのバカ娘その一。たしかソフィアだっけ？ 俺がマイフレンドと手を組んだ理由は何だと思いますか？」
「……どうせお金とかでしょ？」
「希望するサブカル作品のメディアミックス」
「……また恒例の寒いギャグだったりする？」
「マジ。てか寒いって何だコラ」
人の言動を滑ってるみたいに言うんじゃねぇよ。ウケ狙いでやってんじゃねぇんだよタダの素だよ。
「……お母様。コイツのコレって本気だったりします？」
「ソフィア、信じ難い気持ちは分かる。……でも事実だ。前座のつもりで提示したこの条件で、東堂少年はあっさり頷いた」
「なんだったら協力も申し出たぞ☆」
キミたちの復讐対象に、上手く当てれば死ぬ正義のムエタイ式ア〇パンチだって使うのだって吝かではないぜ！
「……頭おかしい……もんね。そうだったね」
「疑問符付けろや。何途中で納得してんだお前」
「私たちの前でのキミの言動はどう考えても異常者のそれだろう」
「まあの」
「そこで否定もしないあたり本当に度し難いなキミは……」
好奇心で人類に厄災をばらまいた前科者が何か言ってる。
「……いやでも、お母様の御力を知った上でその条件って……。私も日本のアニメやコミックは好きな方だけど、全然理解できないや」
「え、マジで？ 海外系のオタクだったりする？ 好きな作品は何よ？」
「い、いきなり食いつきが凄い……！」
いやほら、オタクって磁石みたいな人種だから。同類って分かると途端にひっつこうとしたりするし。それと同じぐらいの確率で超反発したりもするけど。
「……好きな作品は〇リキュアとかだけど」
「ならキミも僕と永遠の友達だね！」
「お母様コイツ今までとは別の意味で怖いんですけど!?」
「キミは何でそんなにソフィアに当たりが強いんだ！」
「屈託のない笑顔の反応がコレとか泣いていいよな？」
確かにエターナルフレンドはギャグの標的になりがちだけども。少なくとも今のやり取りに関してはは遺憾の意を表明するぞこの野郎。薄気味悪いとか言われるならともかく、ガチで怖がられるのは違うじゃろがい。
「一応言っておくが、気に入ったのは本当やぞ。そこで躊躇なく女児アニメを挙げられる精神は素晴らしい。チョイスもナイスだ」
「ど、どうも……？」
あのシリーズは女児アニメの癖して戦闘描写が素晴らしいからな。特にオールスターズ系は最高だ。アクションが超ド派手で感動するし。
「まあ諸々の戯言はゴミ箱にポイして。エターナルフレンドよ。これで俺が同盟相手を搾取するような人間じゃないってことは分かったろ？」
「理解不能な狂人ってことしか分からなかったよ！」
「友達呼びまでの流れを戯言と言い切った挙句、塵芥扱いする相手を信用しろというのは無理だろう……」
何でだよ。少なくとも要求をどんどん釣り上げて、一方的にお前らから搾取しようとする輩ではないのは明らかじゃろがい。新作アニメとか定期的に与えとけば満足するんだぞ？
「ともかくだ。どっちにしろお前らに選択権なんてないんだ。存続したいというのなら、俺と仲良くし続けなくちゃいけないの。お分かり？」
「……よくその外道節で正義の味方とか堂々と名乗ったね」
「お前正義の味方なめてんの？ 『自分の掲げる正義』の味方なんだから、自分以外の都合なんてどうでもいいに決まってるじゃないか」
今回の場合は私怨八割、会社都合二割ぐらいの割合で正義の味方名乗ったけど。
でも現実にしろ物語にしろ、正義の味方ってのはソイツが所属するコミュニティ内のヒーローでしかないからね。コミュニティが違えば悪人扱いとか普通にあるから。
「……なんだろう。私の常識的な感性の部分では否定したいけど、立場的に否定ができない……」
だろうね。だってキミらカルト教団型の世界的なテロリストだもんね。自分たちの『復讐』という名の正義で世界に喧嘩売ってた輩が、否定なんかできる訳ないよね。
「ほらさっさと仲良くするんだよ。マイフレンドにエターナルフレンド。あと残りのその他諸々バカ娘たち。突っ立ってねぇで歓迎の舞でも踊ってみせろや」
「ねぇ本当に搾取とかしないんだよね!?」
「しねぇよ」
それとは別に上の立場ってことでくだらない無茶振りはするつもり満々だけど。
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