第40話 空を見ろ! 鳥か!? 飛行機か!? いややべぇ奴だ

《side東堂歩》


 地獄(物理)の繁忙期が今日も続く。依然として収まる気配のないイクリプスの大量発生。対策局の面々でもぶっ倒れる者が出る中、疲労が見えないという理由から容赦なく東奔西走させられてる高校生が一名。そうわたくしでございます。労基って対策局にも通用するのかしら?

 いや、冗談抜きでヤバいよ今。ここ一ヶ月近く学校にも行ってないし、家にすら帰ってない。学校の方は兎も角、マイマザーからのツッコミが怖いところ。一応こっちの仕事がどんなのか察してるから、説教食らうことはないんだろうけど。


「それでも僕も子供ですし、そろそろ実家でゆっくりした方が良いかなと思うのですよ。ちょうど東北から帰ってきて、少なくとも午後はオフの予定でしたし。……それを踏まえてもう一度訊きますが、今何て言いました?」

「帰ってきて早々で悪いけど、御岳山にいる時音ちゃんと夏鈴ちゃんのフォローに行ってくれる?」

「一切の躊躇いなくもう一度言い切りましたね」


 せめて申し訳なさそうにするとかないの?


「てか、二人のフォローなんすか? 俺、基本的に新人のお守りの筈じゃ」

「それがねぇ……。御岳山の規模が結構大きめなのよ。二人とも疲労も溜まっているし、安全マージンを取っておきたいのよね。だから悪いけど行ってきてくれない?」

「他の三人は?」

「奏が昨日戦闘を終えて今日はお休み。環とノアは築地市場の方で待機中」

「はいはい! 僕も昨日ナマモノいっぱい狩りました! というかまたあの人型のナマモノ出てきてシバキ倒したのですが!!」


 今回は中一の見習い戦姫を守ったよ! 猫型から変身して喰われそうになってたから、横からドロップキックかました後に踏み潰して、震えて呆然としてる見習いの子にトドメを刺して貰いました。


「それについては東北支部から感謝状が届いてるわよ。褒賞もあるから確認しておいてね」

「わーい! ……じゃねぇんですよ」


 そういうことじゃねぇんだよ。俺も昨日戦ってるし、ついさっき新幹線で帰ってきたばっかなんだよ。


「姐さんは休めて、俺は連勤って酷くないすか? 見習い守った上で強敵倒してるんですが」

「疲れてる?」

「いや全然」


 少なくとも肉体的には疲労ゼロっす。


「でもそろそろ休憩したいというか。端的に言うと溜まってるアニメを消化したいんですよね」

「あらそうなの? 出動してくれるなら、これくらいのボーナスを出そうと思っていたのだけど」

「準備してきまーす」


 沢山のゼロには勝てなかったよ。


「車用意してあるから、準備できたら上の駐車場に行ってね」

「いや都内だったら多分走った方が早いんで、通信機でナビだけお願いしまーす」

「……あ、そう」


 何かドン引きされたけど、面倒だからスルー。という訳で、いざ御岳山。

 対策局から警視庁の屋上まで移動して、思いっきりジャンプしてドン。


「──はい到着」

『……本当に直ぐに着いたわね……』

「音速で空駆けすれば余裕ですわ」


 アホみたいに発生している仕事の気分転換をしたいということで、何故か神崎さん直々にナビをして貰ったのだけど。結果としてさっき以上にドン引きされてしまった模様。

 でもねぇ? 大気を踏み締め、障害物の無い空中を音速で駆けりゃ、そりゃあこれぐらいで着きますよ。途中で小休憩を挟んだり、ちょっと道に迷ったりもしたけど、それでも十分ちょいで到着しました。


『……もしかして東堂君、日本国内なら下手な交通機関使うより、自力で移動した方が早かったりする?』

「気付いてしまわれましたか」


 多分早いですね。


『いや、そうよね。自力で空飛べてマッハ出せるのなら、最早それ戦闘機だものね……』

「人間なんですが」


 戦闘機と比較されるってどういうこっちゃねん。サー〇ァントじゃねぇんだから。


『提案なんだけど、今度から移動は自力でしてみる?』

「ナビ無しだと多分迷うのですがそれは。あと私にもスタミナというものがございましてね?」


 自分確かにちょっと人間辞めてますがメカじゃないので。生身での長距離移動は色々と不都合があるんですよ。列島横断とかさせられたら、流石にちょっとは疲れるんですよ。


「というか、移動ぐらい面倒見てくださいよ。なに自腹切らせて経費削減しようとしてるんすか」

『そういう意味で言った訳じゃないのだけど……。というか、東堂君が消費するのお金じゃなくてスタミナじゃないの』


 脂肪燃焼という意味では自腹切ってるんだよなぁ。いや体脂肪率一桁パーセントのぱーふぇくとぼでぇですけどね?


「まあ、それはさておき。とりま二人と合流ですかね?」

『そうね。東堂君の地点から南西に二百メートルぐらい進んだところに、ウチのキャンプ地があるから。到着したら現地のスタッフに訊いてちょうだい。じゃあ、私も仕事に戻るから。良い刺激になったわ』

「あ、はーい。お疲れ様でーす」


 そう言って神崎さんとの通信は切れた。ナビついでに雑談してたし、掛かった時間も十分ちょい。本当にちょっとした息抜きだったなぁ。


「うし。そんじゃあ二人と合流しますかぁ」


 キャンプ地に向けてレッツゴー。そしてさっさと終わらせてボーナス稼いで、溜まってたアニメを消化するんじゃい。……あれこれフラグか?




 ーーーー

 あとがき

 今回短めです。

 そしてお知らせなのですが、この作品を現在開催中のカクヨムコンに出してみました。商業化には向かない作品だという自覚はあります。なのでぶっちゃけると、お試しというか気まぐれというか。

 ただまあ、そうなったら良いなぁとは思ってはいます。なので端的に言って応援してください。応援されたらテンション上がって、更新頻度が上がったりすることはありません。

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