第1話 犯人は迷探偵?(4)

「とりあえず中に入ってもらっても大丈夫ですか」

探偵は警察官を事務所の中にいれた。

「ん?そちらの方は?」

「ちょうどお話に来てくださっていた方ですよ、それで、なんでしたっけ」

探偵の顔を見ながら警察官が話を進める。

「あなた朝6時頃なにをしていましたか?」

「ランニングがてら自分の名刺配ってましたよ」

警察官は頭を下に向け、なにやらふところから写真を取り出す。私の視界にもチラッと写真が映った。火事だろうか?壁が黒ずんでいるのがわかる。

「朝6時半頃あすかアパートのごみ捨て場で不審火が発生したんですよ。目撃者によれば朝6時頃に灰色のパーカー着た見かけない方がいたとのことでして。近隣の住民の方に聞き込みを行ったところ、あなたの名前が浮上しましてね」

そういいながら警察官は探偵の目の前に睦月涼太と書かれた名刺を差し出した。そして、デスクの横にかけられていた灰色のパーカーを指さす。

「あなたが時限発火装置を仕掛け、アパートを燃やそうとしたのなら話の筋は通る」

「ちょっと待ってくださいよ、俺はそんなことしてない」

時限発火装置を仕掛けたとなれば、ペットボトル、導線は少なくとも見つかっているはずだ。アパートのごみ捨て場にそれがあれば探偵が疑われるのも飲み込める。だけれど、警察官がその情報を出してこないと言うことは見つかっていないのだろうか?···考えるより行動に移すのが最善策か。

「ちなみに、発火した現場から火元は見つかってるんですか?例えばペットボトルと導線があれば簡単に時限発火装置なんて作れますよね?」

私が急に口を突っ込んだことにより警察官が口を開け、しばらくした後我にかえり見つかっていない。と、いう返事が返ってきた。

「君まで俺を疑っているのかい?」

私に問いかけた探偵を前に私は最高の笑顔で「ど~でしょ~?」

と返事をする。

だが、確かにこの事件なにかがおかしい。火元がない状態で発火するなんてことはあり得ない。···そう、あり得ないのだ。彼もよく言っていた。推理はあり得ないを形にするのだと。私が考えている横で警察官はもう1枚写真を取り出し

「これは?」

と、写真を机にそっと置いた。

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