第1話 犯人は迷探偵? (1)

春、私、葉月梓はづきあずさは今年から高校1年生になった。教室の外を桜が舞う。中学の生活はあまりにも刺激的すぎてなんとも平和に感じてしまう。そう。中学までは常に事件を追いかけていた。そう、中学までは。

探偵は···探偵は私の前から姿を消した。すごくスッキリした。いつも助手助手言っては私を振り回して勝手に失敗する。最後はあっけなかった。君を危険には晒せない。···遅いわ、十分危険を体験してきたわ。···でももうこれでいいんだ。なにも後悔はない。後悔は···ない。


「ちょっと梓~!また猫見つけたの!?」

「え?あぁ、まぁ、うん」

前の席から振り向いて身をのりだしてくる。彼女は齊藤明さいとうあかり。高校からの付き合いだが···長い期間仲良くしていたかのように思える。

「またLIFEニュース載ってたよ~!」

「いや、なんでよ···てか猫見つけただけでLIFEニュース載るとか世も末か···」

思わず頭を抱える。

「いいじゃぁん!有名人~!」

「つつくな」

明はニヒヒと笑ってスマホに目を戻す。そして、あ。と声をあげた。

「ここら辺に新しく探偵事務所?みたいなのができたって話知ってる?」

思わずお弁当を食べていた箸が止まる。

「え」

「その顔知らないなぁ?ほら、駅前の居酒屋さんあるでしょ?その2階よ、2階」

「そう···なんだ。」

彼だろうか。彼が帰ってきた。いや、そんなことはあり得ないだろう。私を危険に晒したくないと言った男だ。それはあり得ない。だが···可能性がない訳ではないだろう。気付かれないようにひっそりとまた事件を解決しているのかもしれない。もしかしたら。もしかしたらの話だ。

明は私が考え事をしているのを気にせず話を進めた。

「なんか最近不審火事件が相次いでるらしいし、その事件も解決してくれるかもね!」

「あぁ···ニュースで見たなぁそれ···確か3件ともごみ捨て場から出火したんだっけ?」

「怖いよねぇ、燃える原料になるものなんも入ってないのに燃えるんだもんなぁ」

そう言って明はスマホに目を落とした。

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