第18話「戦いの後に」

 結論から言えば、ジェシカは生きていた。左腕をひどく骨折し、全身に打撲を負うという重傷ではあったが。なお、もと捕虜たちに助け起こされた彼女は「嫌ーッ!? 輪姦は嫌―ッ!?」と錯乱して暴れ回り、もと捕虜たちを数名野戦病院送りにしたのはご愛嬌である。


 ……そのもと捕虜たちであるが、ウォリアーを持ってきてくれた奴に「そういえば大尉、なんでメスガキみたいな真似してたんだい?」と聞かれてしまった。まあ、ウォリアーの聴音センサーなら聞き取れるよな!


「さ、錯乱したフリで時間を稼いでいたのさ」

「なるほどねぇ。確かに錯乱したのかと思ったよ」

「名演技だったろ?」

「そりゃあもう」


 ……と、なんとか切り抜けられた。しかし機械義体兵にも言われたが、やっぱりメスガキロールプレイは錯乱したかヤク中かと疑われるよな! 今後とも、味方には聴かれないよう注意を払わねばなるまい。


 捕虜となったアマイ少将であるが、彼は民間人を人質にとるような戦術を実行したことはもちろん知れ渡っているが、尋問の結果それ以外にも部下たちに市民の財産を略奪することを許可したりと、様々な戦争犯罪が明るみに出てきた。良くて終身刑、悪ければ銃殺刑は免れないだろう――全ては戦後の裁判次第であるが。


 そして俺たち表現の自由戦士隊は、「補給と再編成」を命じられシャイロー星系を離れる途上にある。保有するウォリアーの4割近くを失ったうえ、各艦艇もそれなりに傷ついたため仕方のないことだろう。


 まだどこかの前線では、帝国軍に苦しめられている市民がいるはずだ。「誰かを守るために戦う」――そう決めた俺にとしては、まだ戦い続けたい気持ちが勝っている。しかしフォカヌポウ提督から、嬉しい知らせも受けた。


「和唐瀬大尉、今回の補給でござるが……貴官の活躍を賞して、新型機を与えようと考えているでござる」

「本当に? それは名誉な話です」

「デュフフ、本当でござるよ。しかも機種の選定は貴官に一任するでござる……実は貴官の活躍を知ったウォリアーメーカー各社が、自社のハイエンド機を売りたいとかけあって来ているんでござるよ」


 俺たちが乗っているウォリアーは、「SW-01A4」という制式名称を与えられたものだ。宇宙海賊を退治するために導入された機体で、「全ての面で民間改造機を上回る」をコンセプトに設計されたバランスの良い機体だ。帝国軍も(連邦から分離独立したからなのだが)この機体を小改修し「CW-20A1」という制式名称で採用している。いずれも製造メーカーはギャラティック・ダイナミクス社だ。


「それはそれは。カタログはありますか?」

「勿論。いまそちらの端末に送るでござるよ。……いやあ、拙者も下見したでござるが、良いですなぁ。やっぱりメカのカタログは見ているだけでワクワクするでござる」

「それは……反論出来ないですね」


 非オタの俺であるが、フォカヌポウ提督から送られてきたカタログをサッと眺めただけでもニヤついてしまう。仕方ないよな、こういうのは男心をくすぐるんだ。


「チヨダ星系の母港に着き次第、機体コンペを行う予定でござる。気になるオプション装備があれば、予め連絡しておけば持ってきて貰えるはずでござるから、早めにカタログ検分を終えてメーカーに連絡するでござるよ」

「了解致しました」


 フォカヌポウ提督と別れ、俺は部屋に籠もってカタログ検分を始め――興味を持ったオプション装備を持ってくるよう、メーカー各社に連絡を入れた。


 そう、連絡。惑星コリンスのインターネット中継機が復旧したことで、俺たちは銀河インターネットへの接続が可能になっていた。


 そして俺は、忘れないうちにフォカヌポウ提督からもらったメスガキもの作品の作者たちを探し出し、その作品を購入しておいた。最低限の礼儀、というやつだ。


((ねぇねぇ、この作品も買ってよ))


 インナーメスガキが現れ、興味を持った作品を指差す。「メスガキ完全上位・幼女社長に年収でもベッドでもマウントされちゃう俺」とかいういかがわしいタイトルだ。


「……理解らせられ系じゃなくて良いのか?」

((うっさい、あれは油断してただけ!))

「はいはい……」


 顔を真っ赤にしているインナーメスガキをよそに、俺は幾つかのメスガキもの作品を購入した。メスガキ性を高めることで、インナーメスガキによる身体能力強化の効果が上がるとわかったからだ。まあ、ようは俺の認識の問題なのだろうがね。「これはメスガキ的だ」と俺が思うほど、力が引き出せるのだろう。


 これに関しては先達――メスガキもの作品を作るような奴ら――の知見を借りるのが一番だと思い始めていた。彼らは各々が思う「メスガキ」を作品にぶつけている。非オタで、メスガキに造詣に深くない俺にとっては、それらの作品を参考にするのが一番勉強になる。


「……いや待て、メスガキの勉強ってなんだ?」


 インナーメスガキはくつくつと笑うだけで答えず、俺の疑問は宙を切った。


 こうしている間にも艦隊は宇宙を進み、母港へと向かっている。勝利の余韻に浸りながら、思い思いの時間を過ごす戦士たちを乗せて。


【1章 宇宙のメスガキ 終了】――【2章 メスガキ対メスガキ に続く】

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