第24話 中間テスト終了
桜庭先生に彩花のことを頼まれてから3日が経過した。いよいよ今日から中間テストが始まる。中間テストは5日間あり、各曜日毎に2.3科目のテストがある。テスト初日の今日は現代文と生物のテストであった。
俺は特別なアクションを起こすことなく彩花の様子をそれとなく見ていたが、今日までのところは何も問題がないように思えた。現時点では桜庭先生の気にしすぎなだけだと言えるだろう。
「今日から中間テストだね」
「だな」
「悠くんは大丈夫そう?」
「まぁ、赤点を取らないくらいには勉強してきたよ」
「悠くんって勉強が苦手なの?」
「いや、苦手でも得意でもないから普通だな」
「そうなんだ」
「そういう彩花は大丈夫なのか?」
「うん。大丈夫だよ。私は大丈夫……」
最後の大丈夫はまるで自分に言い聞かせるかのような大丈夫のような気がした。というか、彩花はどうして中間テストにここまで本気なのだろうか? テストを頑張るというのは至極当たり前の事なのだが、彩花の力の入れ方はどう考えても異常な気がする。良い成績を取りたいにしてもここまでする必要はあるのかとさえ思えるほどだ。
今日の現代文と生物のテストが終わると彩花はすぐに帰っていった。明日のテストでは数学があるので智也が一緒に勉強をしてくれとせがんできたので、彩花も一緒にと声を掛けたのだが、用事があると帰って行ってしまったのだ。
「なんか、最近の柏村の様子おかしくね?」
「そうか?」
「うん。いつの間にか毎朝勉強するようになってたし、最近だと休み時間もずっと勉強してただろ?」
「テスト前だからじゃないのか?」
「う~ん……そうなんだろうけど、なんか苦しそうに見えるんだよな」
苦しそうに見えるっか……。確かにあの鬼気迫る感じを見ると苦しそうに見えるかもしれない。恐らく今の彩花をそう見ることができるのはクラスの中でも智也くらいだろう。他のクラスメイトからは勉強を頑張ってるようにしか見えないはずだ。勉強ばっかで付き合いが悪くなったとコソコソと話していたやつもいるくらいだし。
智也は彩花という1人の人間を見ようとしているからこそ、そういう見方ができるのだろう。柄にもなく、こいつが友達になってくれて良かったと思える。
「けど、智也。人の心配してる余裕はあるのか?」
「ない! 助けてくれ!」
「素直なやつだな」
「それが俺の魅力だろ?」
「自分で言うな……」
智也の数学で分からないところ。今回のテスト範囲のほぼ全てを智也に教えた頃には辺りはすっかりと暗くなっていた。智也に教えてるうちに自分の理解も深まったので数学のテストは帰ってから何もしなくてもそこそこいい点が取れる気がする。それくらい智也に数学を教えるのは大変だった……。小テストの返却された日に教えたことは覚えてくれていたが、それ以外のところがまるっきり分かっていなかったのだ。
それからは、テスト週間の日々も何事もなく過ぎ去っていった。テストが終わってからは彩花も朝から学校に来て勉強をしているなんてことも無く、テスト前の元通りの日常を送っているようであった。桜庭先生の心配も気にしすぎなだけであったとそう思っていたのだが……。
「……悠くん」
そう言って彩花は駆け出して行ってしまった。俺が声を掛けた時の彩花は泣いているような……絶望しているようにさえ見える表情であった。桜庭先生の心配は正しかったらしい。それも、今の彩花の表情を見る限りだと桜庭先生の心配以上に最悪な形で。
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