第19話 幼馴染の違和感
違和感がある。朝、登校してきて教室に入った瞬間に俺が感じたことであった。一見すると普段と何も変わらないいつも通りの教室であった。だが、俺はなんとなく違和感を感じながらも自分の席に着く頃にはその違和感の正体もはっきりとしていた。その違和感の正体は彩花にあったのだ。
「珍しいな」
「え? あっ、おはよう悠くん」
「おはよう。宿題でもやり忘れていたのか?」
「え? あぁ、うん。うっかりしちゃってたよ」
そう言って彩花は机の上に広げていた教材とノートを両手で隠すようにしていた。俺が違和感を感じたのは端的に言うと朝から彩花が1人で勉強をしていたことだ。
彩花が勉強していることが違和感だったのは、別に彩花が勉強をしていることに対する悪口なんかではもちろんない。普段なら俺が朝教室に入ると彩花の周りにはいつも友人達がいて、仲良く話をしているのだ。けど、今日に限っては彩花は1人だった。俺はなぜだかそれがすごく違和感に感じていたのだ。
「彩花もそういったこともあるんだな」
「そりゃ私にだってあるよ。悠くんは私をなんだと思ってるの?」
「んー優等生?」
「ふーん。悠くんは私のことをそんな風に思ってたんだ」
そう言って彩花が俺の方をニヤニヤとしながら見てくるので何となく居心地が悪くなった俺は彩花から目を離して席に座る。俺が席に座ると同時くらいに桜庭先生が教室に入ってきて朝のホームルームが始まった。
それから、授業が始まってからは彩花も真面目に授業を受けており、授業と授業の間の休み時間も友人達と過ごしていたようなので本当に宿題をやり忘れていただけのようだ。
俺は先日見つけたベストプレイスで昼休みを過ごして、午後の授業も受けて今日1日の学校生活を終えた。
翌日
ん? 今日も彩花は宿題をやり忘れたのか? 俺が教室に入ると彩花は今日も1人で机に向かっていた。2日連続とは珍しいこともあるもんだ。けどまぁ、そんなこともあるだろう。
俺が自分の席に座ると彩花は勉強道具を片付け始めた。……俺に隠してるのか? 隠しているつもりなら変に触れない方がいいだろう。触らぬ神に祟りなしだ。
「おはよう悠くん」
「おはよう」
「やっと金曜日だね」
「だな。明日が土曜日ってだけで今日は頑張れる」
「ふふ。けど、もうすぐゴールデンウィークもあるよ?」
「あっ……忘れてた」
「ゴールデンウィークを忘れる学生なんて悠くんくらいだよ!」
そう言えばもうそんな時期なのか。けどまぁ、ゴールデンウィークと言っても俺からした普段の土日とすることは何も変わらない。毎日昼過ぎて起きて、そこからは本を読むかスマホを触るか、楓と一緒にゲームをして過ごす。
ゴールデンウィークだからどこかに出掛けようという考えは俺には全くなかった。というか、ゴールデンウィークだからこそ家から出たくない。理由は単純だ。人が多い。ゴールデンウィークはどこへ行くにしても人が多いのだ。学校生活でさえ人と関わる頻度の少ない俺は人が集まる場所は大の苦手なのだ。
「悠くんはゴールデンウィークの予定とかは何も無いの?」
「全くない」
「私も今のところは何も無いんだ」
「意外だな」
「そう?」
「あぁ。彩花って友達多そうだし」
「まぁ、悠くんよりはね?」
「間違いないな」
何だかはぐらかされた? 気の所為かもしれないが話題を逸らされたような気がする。それに、普段の彩花ならここで俺を遊びに誘う気がするというのは自惚れだろうか? そんなことを考えていると桜庭先生が教室に入ってきて朝のホームルームが始まる。
それからは、今日1日も何事もなく終わり念願の休日を迎えた。俺にとっては金曜日の放課後から休日としてカウントされているのだ。
平日と違って休日というのは呆気ないほどすぐに過ぎ去ってしまった。土日だけは1日24時間ではなくて12時間くらいしか無いのではないだろうか? と本気で考えてしまうくらいには2日間が瞬く間に過ぎ去っていく。そして、月曜日となったので憂鬱な気持ちになりながらも教室に入ると彩花は今日も1人で机に向かっていた。
それからも彩花はゴールデンウィークが始まるまでの間は欠かざす朝から机に向かっていたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます